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ニースからの1デイツァーのこと

イタリアとの国境に接し、地中海に面した南仏のコート・ダジュールの中心都市ニースは、コート・ダジュールの海岸線上に並ぶモナコやマントン、カンヌなどを近距離列車でカンタンに行き来できる交通至便で、観光の中心になる立地だ。当初は現地ツアーなどに依らず、鉄道一本で行き来しようと考えていたのに、駅前の観光案内所で、1日で全部連れて行ってくれるツアーを予約した。前にも書いたが、列車やバスをうまく利用すれば、自分なりの楽しみ方で楽しめるエリアであるだけに、後悔の気持ち半分以上。

後悔しないために

お目当てだったエズに、モナコ、モンテ・カルロ、カンヌ、アンティーブ、サン・ポール・ド・ヴァンス(Saint Paul De Vence)という町や村を1日で訪ねる「フレンチ・リベエラ」コースを選んだ。85ユーロ(10,625円)。ちなみに片道40分のマントンを国鉄で往復すると11ユーロ。公共交通機関で一日でこのすべてに行くのは不可能なので一日で全部回っておきたい人には確かにメリットはある。だが、すべて中途半端になるので悔いは残る。どこで、初日にこの種のツアーに参加して、一通り有名どころは見ておき、じっくり見たかった・ゆったりと過ごしたかった場所を選んで、翌日以降、自分で行ってみるというのはどうだろうか。

同乗者たち

前日の昼に、駅前の観光案内所で予約したツアー。翌朝8時35分にホテルまで迎えに来てくれるということだ。ガイド兼ドライバーは、8人はゆったりと乗れるフォード車で、助手席にわたし、真ん中にアメリカ人の一家4人(両親と2人の娘)、後列にパキスタン人夫婦の計7人をそれぞれのホテルでピックアップした。駅に近いところに宿泊しているのはわたしだけで、他の人は海沿いのホテルだった。

アメリカ人の一家は、わたしと同世代のお父さんと奧さん、大学生の長女と中学生ぐらいの次女。ニューヨーク市在住で、長女はキャノンの一眼レフの高性能なカメラを型に掛けた美人。ご夫婦とも柔和な感じのよい人たちだった。パキスタン人夫婦のお父さんのほうは仕事で何度か日本に来たことがあるといい、東京と京都に行ったときの思い出を話してくれた。「わたしたちにとって日本は夢のような国」というので、どんなところがそう思うのかと尋ねると「安全で清潔なところ」と言っていた。今回の旅行は、パリとニースの2都市を訪れ7日間の予定で、「働きに働いて思い切って1週間の休みをとっての旅行」ということだった。わたしと参加したツアーは、わたしやアメリカ人一家が丸1日参加だったが、半日(50ユーロ)ということで午前中だけでクルマから降りた。とても素朴で控えめな性格で人柄がとても好感が持てた。あのような方とはあとで夕食を共にしたかった。

行程

このツアー、午前中は、ニースの東側であるエズと、モナコ、モンテ・カルロ。ここで西に戻り、ニースでパキスタン人夫婦が下車し、ニースより西のカンヌ、アンティーブ、サン・ポール・ド・ヴァンス(Saint Paul De Vence)に向かった。

鷲の巣村と言われているエズは地中海を見下ろす海抜420メートルの山の山頂に築かれたお城と城下の町。ニースに訪れた観光客のほとんどが訪れるであろうし、わたしも絶対に訪問する予定の筆頭に挙げていた。朝の一番空気の澄んだ時間に真っ先に訪問できたのは良かった。

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しかし、お目当ての海岸が一望できるガーデン(有料)はゲートの向こうであることを知らなかったため、どこに行けばガイドブックに紹介されている風景は見ることができるのかと探し回った。集合時間まで残り10分になった10時5分ごろ、入口に気づき、急いでお金を払い、階段を駆け上ってガーデンに到着することはできた。しかし、そこでゆったりと風景を楽しむゆとりはなく、写真を撮ると駆け下りた。

そのあと訪れたのが、城から数十メートル離れたところにある香水工場。工場見学をすると香水の実演販売。たっぷりと時間がとられてあったが、まったく興味はなかった。こんなに時間があるならわたしはエズの城の上でもう少しゆっくりしていたかった。アメリカ人とパキスタン人の奧さんそれぞれに香水を買っていた。


このあとはモナコと、モンテ・カルロ。ツアーに入っているから見聞のために行った。美しいところだが、自分からあえて行くかと言えばまた違う。

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午前の行程はここまで。お昼は適当にパンを買うなどして済ませてほしいということだった。ニースを通過する際、パキスタン人ご夫妻とは名残惜しくもお別れだ。

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エズ、モナコ、モンテ・カルロの方面はリアス式の地形となり、海のすぐ近くの低いところにレールが敷かれている鉄道に対し、クルマは断崖絶壁の山の道を走る。前日に鉄道に乗ってあるので少しは土地勘がはたらく。

下りのヘアピンカーブもきつい。ここをフランス人のドライバーは猛スピードで駆け下りていく。昔見た「007」の映画でジェームズ・ボンドのクルマがカーチェイスをするシーンにこんな場所はなかったかと思った。フランスの地方の道路は日本と同じくらい狭く見通しの悪い道路がけっこう多いことに、この日の午後、気づく。

ニースから平たんな海岸線を抜ける際には高速道路を使う。カンヌは小さいが都会だ。隠れた魅力はあるに違いないが、20~30分立ち寄っただけではわからない。カンヌ映画祭で映る白の建物に赤いカーペットは拍子抜けするくらい殺風景だった。イメージした豪華さとはほど遠い。お祭り会場でもまつりの華がない日はつまらないのと同じことだ。

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アンティーブは城壁の残る中世の街。ピカソで有名だが、庶民的な街の中心にある魚市場でシーフードを味わうほうがよさそうだ。旧市街は狭いので見るべきところは限られている。

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海岸線から離れ、山のほうへ日本の田舎道のような狭いカーブの多い道を向かったのが、この日最後の訪問地であるサン・ポール・ド・ヴァンス(Saint Paul De Vence)。小高い山の上に築かれた中世の村。『地球の歩き方』南仏編には、「コート・ダジュールに数ある中世の村のなかでも特に美しい村」とあるが、迷路のような路地がとても魅力的だった。近現代の画家でも、モディリアニやシャガールを引きつけ、シャガールはこの地に約20年も暮らしたのだという。

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村の端っこからは遠くの山々が見え、見晴らしがよいが、遠くからこの村の全景を撮ってみたかった。この村をおもな目的に1日かけて訪れてもよいかもしれない。カフェやレストランでゆっくり過ごすのにもよいだろう。公共交通としてニースからバス(所要時間約1時間)があるだけよい。

クリスマスシーズンなのに暖かった

ニースに来て3日間、お天気に恵まれ気温も暖かく快適(たぶん15℃前後)だった。真っ青な空に恵まれた。南仏では夏よりも11月~1月にかけて降雨量が多いということだったので天気のことは心配したが、ラッキーだった。実際、わたしが訪れる前の週は雨が降り続いたらしく、川によっては氾濫があったということだった。
観光シーズンの夏は混雑してたいへんだろう。道路も狭いので、この日訪れたようなコースも大渋滞だそうだ。おそらく観光案内所も、駅のチケット売り場も長い列になることだろう。
ニースはビーチで日光浴をしているだけがよいわけではなさそうだ。

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