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デザイン未経験者がランドスケープデザイナーになるまでの5つのステップ

こんにちは。ユウスケです。
自分が日本の大学に通っていた頃、何をどう勉強したらランドスケープアーキテクトになれるのか、分からず模索しました。7年勉強して少しずつ分かってきた、全くの初心者からランドスケープアーキテクトになるために必要な5つのステップを紹介したいと思います。

1. ものを作ることに慣れる

デザインを全く経験したことがない人は、まずはものを作ることに慣れるところから始めましょう。「この敷地に駅の入り口をデザインしてみて」「この小さな敷地の庭のデザインをしてみて」といった具合です。困惑しませんか?笑

デザインをやったことがない多くの人は論理的にそして、慎重に慎重に物事を決定しています。しかし、ものを作るというのはある種、物事を大枠で決定し、手を動かしてみることが求められます。マインドセットが大きく異なるのです。なので、このステップは初心者には中々苦しいステップだと思いますが、最初は大枠の論理を作り、とりあえず手を動かして何かを作ってみるということに慣れましょう。この段階で完璧なものを作らなくて大丈夫です。

先ほど、例に挙げた「この敷地に駅の入り口をデザインしてみて」という課題への私の最初の提案です。完全に駄作ですが笑。これくらいのクオリティでいいので頭を使い過ぎずに手を動かすことに慣れていくことを目指しましょう。

2. 事例から学ぶ

ステップ2は事例から学ぶです。
ランドスケープアーキテクチャを学ぶ上で、たくさんの事例に触れることはとても大事です。ミュージシャンがたくさんの音楽に触れ、それを糧に音楽を作るのと同じことです。(星野源さんが、YMOの細野さんからたくさん影響を受け、今では交流があると言う話がとても好きです。)たくさんの事例に触れ、自分がどういうデザインが好きなのか、どういう空間を素敵だと思うのか、なぜその空間は素敵なのかを自分なりに明確にしていきましょう。

私がランドスケープアーキテクチャに興味を持ち始めたばかりの頃、全くの無知で、正直、日本庭園を少し古臭いものだと思っていました。修学旅行以来行っていないのに、どうこう言うことも出来ないし、ランドスケープを学びたい者としてちゃんと見に行かないとなと思い、1週間、京都に泊まり、日本庭園を巡る旅をしました。最初はそれでもまだよく良さが分かりませんでしたが、5~6個巡るうちに、徐々に、この庭園好きだな、この縁側に座ってみる景色が素敵だな、あの木の手入れが行き届いていて綺麗だな、と庭を見る視点が劇的に変わっていくのを感じました。結果的に30個程回った庭園旅が私のランドスケープ人生を変えたと断言できます。

出来るだけ、カメラを持って、ランドスケープの作品を見にいきましょう。
Pinterest等で自分が好きなランドスケープデザインの作品を集めて、好きな作品の共通点が何なのかを考えていくのも良いと思います。

3. 表現方法を学ぶ

次のステップは表現方法を学ぶです。
まずはAdobeのIllustrator、Photoshop、そしてSketch Up、簡単なスケッチと模型製作ができるようになることを目指しましょう。少し慣れたらAuto Cadを使ってみましょう。まずはこれらだけで十分です。話を聞いてみると多くのランドスケープアーキテクトはこれらのソフトウェアだけで仕事をしています。(その時代に3D モデリングのソフトウェアがあまり無かったので、模型やスケッチの方が重視されてきたというのもあります。が、最初はこれらだけで十分です。)

もう少し慣れてきたら、AdobeのInDesignとAuto Cad、3Dモデリング用のRhinoceros、Grasshopper、Arc GISをマスターしたいです。

これらのソフトウェアは、授業の課題やコンペなどで、使いながら覚えるのが一番良いです。目的無しに勉強するものではありません。Adobe の講習会などはほぼ要らないと思います。プロジェクトをやって「どうやって線を引くんだろう?」「どうやって新しいレイヤーを作るんだろう?」といった疑問が出てきたらGoogleで検索して、答えを見つけていく方がお金をかけずに必要なことだけを早く学ぶことができます。(本を買うなら逆引き形式の本がおすすめです。)

Illustrator、Photoshopは授業の課題やコンペ等に参加することを決意したら購入しましょう。少し値段が高いですが、必要ですし、役に立ちます。

模型表現も同様です。課題やコンペに参加した際にチャレンジしてみてください。模型は3つ作ったら大体の作り方を理解できます。ソフトウェアもそうですが、最初から意気込まず、3つくらい作品を作るまでは辛抱しましょう。一応、模型設計のオススメの本をここに載せておきます。


とはいえ、ソフトウェアの勉強は少しハードルが高いですね。。。今後、イラレの練習になりそうな課題やチュートリアルについても書いていこうと思いますのでもしよろしければフォローして新着記事を確認してください。
ちなみに先ほどの「地下鉄の駅の設計課題」はIllustratorとPhotohsopを使い3ヶ月後にこういった提案になりました。

4. 図面の引き方を学ぶ 

ステップ4は等高線(コンタ)、平面図、断面図、について学びます。等高線については学校の地理の授業で学んだ知識を使って簡単に理解することができると思います。ランドスケープアーキテクチャのデザインではよく地形を変えるので、等高線を変える方法について学ぶ必要があります。
平面図は、上から見た配置図。部屋の間取りのようなものです。断面図は平面図をある線で切った断面がどうなっているかというものです。
これらについても、簡単な解説を聞き、課題をやりながら学ぶのが一番良いと思います。自分で等高線を変化させてみて、ある線で切った時の断面図を描いてみる。変化させてみた地形の上に公園を作るとしたら、どこに遊具を置くか、道路を引いたら人が使いやすいかを考え平面図に描き込んでみる。そんな感じで自分の手を動かしながら学ぶのが一番の早道です。
ステップ1でも書きましたが、最初から細部を詰めすぎず、とりあえず何かを作ってみて、徐々に修正していく方が良いです。

少し慣れてきたら、「人が使いやすいか」を考えみて下さい。道路の幅は2人がすれ違うのに十分な幅があるか、車椅子は通れるか、坂は急過ぎないかを考えて、図面を修正していきます。
以下は、大学の等高線、断面図に関する課題の一部です。

学生コンペに提出する程度の提案には不必要だと思いますが、上級者は詳細図面の描き方も学びましょう。最初は、プロが作った図面をトレースしながら、ここはこうするべきなのか、と勉強することから始めるのが良いと思います。(ベンチの地下にはコンクリートの基礎があるのか、どれくらいの大きさが必要なのか、といったことなど)
簡単な提案で詳細図面まで提案してみるとより理解が深まります。
私は、クリエイティブなコンセプト提案も大事だと思いますが、実際に現実に作れる提案が大事だと思うので、詳細図面について考えること、模型を作ることはとても大事だと思っています。

5. 歴史・理論を学ぶ 

最後のステップとして、ランドスケープの歴史・理論を学ぶ必要性をお伝えします。音楽を例にして話をすると、ピアノの鍵盤をパタパタ叩いても美しい音楽は生まれません。リズムや音階に関する理論、また現代の時代背景、人々の感じていること、価値観を踏まえてを理解してもなお、美しい音楽を作るのは難しい。
ランドスケープも同じです。ただただ自分の思うままにものを作っても子供の土遊びと同じレベル的には同じでしょう。造園学や、植物学、生態学、統計学、計画学、など様々な知識に触れ、その知識を次のプロジェクトで試して試行錯誤するうちに、いつか本当に美しいデザインに行き着くかもしれません。

オーストラリアで2019年末から2020年初めにかけ、オーストラリアで大規模な山火事がありましたが、上の提案は山火事の被害を抑えるランドスケープデザインの提案をしています(ASLA Student Award, 2016)。サイボーグランドスケープと言う、機械と自然物を融合したデザインを模索している理論をベースに考えられた提案だと思います。
理論は大事です。そして歴史を学ぶことにより、人がこれまでどのように考えてきたか、向上してきたかを知ることができます。同じ失敗をせずに必要はないのです。歴史・理論を学び、デザインを洗練させていきましょう。
歴史・セオリーを学ぶ上でおすすめの本はこちらです。

5つのステップを独学で学ぶためのチュートリアル

5つのステップ、いかがだったでしょうか。少し大変そうですよね。安心して下さい。これらをマスターするためのチュートリアルを今後書いていこうと思っています。現在は準備中ですが、今後この下にチュートリアルの記事へのリンクを作っていく予定です。フォローして新着記事を待って頂けると幸いです。
Step 1. ものを作ることに慣れる
 - チュートリアル1-1:粘土で地形操作をする
 - チュートリアル1-2:コンタ模型を作る

Step 2. 事例から学ぶ
 - チュートリアル2-1:ランドスケープ作品を巡る旅をする
 - チュートリアル2-2:カメラを持って出かける
 - チュートリアル2-3:Pinterestに事例をまとめてみる
 - チュートリアル2-4:設計プロセスで使える事例集を作る
 - チュートリアル2-5:京都で巡るべき日本庭園5選
 - チュートリアル2-6:東京で巡るべき日本庭園3選

Step 3. 表現方法を学ぶ
 - チュートリアル3-1:超初心者LA学生向けAdobe Illustratorの使い方
 - チュートリアル3-2:超初心者LA学生向けAdobe Photoshopの使い方
 - チュートリアル3-3:超初心者LA学生向け3D モデリングの使い方
 - チュートリアル3-4:街に出てスケッチに挑戦
 - チュートリアル3-5:提案模型を作る

Step 4. 図面の引き方を学ぶ
 - チュートリアル4-1:基礎の平面図面・断面図の描き方
 - チュートリアル4-2:Illustrator、Photoshopで平面図・断面図を描く
 - チュートリアル3-4:街に出てスケッチに挑戦

Step5. 歴史・理論を学ぶ
 - 週刊ランドスケープニュース:

まとめ

ランドスケープアーキテクトになるための5つのステップ、いかがだったでしょうか。もう一度整理すると、以下のようになります。

1. ものを作ることに慣れる
2. 事例から学ぶ
3. 表現方法を学ぶ
4. 図面の引き方を学ぶ
5. 歴史・理論を学ぶ

少し長い道のりですね。大学、特に海外の大学では、これらをきちんと体系的に教えてくれます。また、単位を取るため等、勉強するモチベーションを維持しやすいです。大学に入るのも一つの手段だと思います。どの大学に入るべきかは前の記事を参考にして下さい。
以前の私もそうでしたが、独学で頑張るというのも一つの手だと思います。私の場合は、独学せざるを得ない環境でしたが、そういう方はたくさんいると思います。チュートリアルの記事をアップしていこうと思いますので、ぜひ上のチュートリアルの記事を読んで、ランドスケープアーキテクトを目指してもらえると嬉しいです。

焦らずに気長に頑張りましょう。

こちらのプロジェクトをサポートしていただけた方、書籍のSpecialThanksに名前を記載させて頂きます。