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デザイン未経験でも海外大学院でランドスケープ留学できる

私は、留学前、大学では生態学、大学院では都市計画を学んでいました。
どちらも調査や研究をやっていたため、デザインはほとんどやってきませんでした。ですが、今、メルボルン大学に入学し、ランドスケープを学ぶことができています。

ランドスケープを学んでいる人は
「ランドスケープアーキテクチャについて海外で学びたい。」
と思ったことがある人、意外と多いと思います。

以前、日本でランドスケープの理論と設計を体系的に学ぶことは少し難しいということを書きましたが、ランドスケープを学んでいると海外の大学に留学すると言う選択肢は自然に出てきます。

しかし、多くの海外の大学は入学審査にポートフォリオ(自分がこれまでに作ってきた提案作品を冊子にまとめたもの)の提出を求めます。ランドスケープ、建築、デザインの雑誌を見ると、自分ではとても作れなさそうな洗練されたデザインやイメージ写真が…。特に全くのデザインのバックグランドが無い人は

「無理だ…。」

と思いますよね。
私は日本の大学で、学部では生態学、修士では都市計画を学びました。コンペに参加した経験もほぼなく、作品も無い。Illustrator、Photoshopを独学でいじりましたがとても留学の審査に太刀打ちできるレベルではない。やっぱり無理だ、と何回も諦めてきましたが、今、何とかメルボルン大学でランドスケープを学ばせてもらっています。今回は、どうやって私が海外大学に入学したのかについて書かせていただきます。

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大学院3年コースはデザイン経験を求めない
2年コースはデザイン経験が求められる

私は今、メルボルン大学ランドスケープコース(Master of Landscape Architecture)の3年コースを学んでいます。
多くの海外大学には3年のコースと2年コースの2種類があり、3年コースはデザインのバックグラウンドの無い人のためのコースとなっています。3年コースは入学審査時にポートフォリオ(自分の過去の作品集)の提出を求めていません。何を勉強したいのかを伝えるエッセイと英語のテストのみで入学できます。(推薦状が必要な場合もあります)
同学年の学生と話をしてみると、彼らのほとんどはデザインの経験がありませんでした。Adobe系のIllustrator、Photoshop、Indesignのうち1つも使ったことがない人が80%くらいだったように思います。Auto Cad、3ds Max、Rhinocerusを使ったことがある人はほぼ皆無。98%がデザインのバックグラウンドの初心者でした。

一方、2年コースは建築などデザインのバックグラウンドのある人のためのコースです。入学審査時にポートフォリオの提出を求めています。生態学や建築の科目の履修経験があることがしっかりと証明できた学生が2年コースに入学できますが、このコースに入れた学生はかなり少ないようです。

実は、私も、下手くそなポートフォリオを提出し、日本で生態学、都市計画と建築の理論的なものを勉強したと言うことを主張しましたが、3年コースに振り分けられてしまいました。英語圏以外の大学で取得した単位は、審査を通りにくいように思います。
(建築事務所で数年働いていたチリからの留学生が3年コースに振り分けられていたので…。しかし、彼女はその後大学に申し立てをして多くの科目を免除してもらっていました。私も彼女を見習い申し立てをした結果、いくつかの科目を免除してもらいました。)
下のものは私がメルボルン大学にアプライした際に送ったど下手くそなポートフォリオの一部です。都市計画の研究内容+提案を載せました。

大学ポートフォリオ

大学ポートフォリオ2


大学院3年コースに実際にデザイン未経験者はいるのか

3年コースの同期の学生に以前に何を勉強していたのかを聞いたことがあります。中国人の学生は芸術(ファインアート)をやっている人がちらほらおり、彼らのPhotoshop技術は素晴らしいですが、その他の学生は経済学、マーケティング、法学を学んでいたなどバックグラウンドは多種多様でした。

大学院3年コースでは何を学ぶのか

3年コースの学習内容を簡単にまとめますと以下のようになります。

1年目 ソフトウェアの練習・ランドスケープの歴史・生態学
2年目 ランドスケープセオリー・詳細図面の引き方
3年目 スタジオ等で演習・卒業設計

3年コースの1年目はデザインの基礎的な学習を行います。
Adobe系(Illustrator、Photoshop、Indesign)、AutoCad、3Dモデリング(SketchUp、Rhinoceros、Grasshopper、3ds Max)等のソフトウェアの学習、基礎的な平面図、断面図の描き方、等高線への理解、模型の作り方、植物学、生態学、ランドスケープの歴史を学びました。
1年目にデザインの基礎をしっかりと抑え、2年目以降は2年コースの学生と合流して彼らと一緒に同じ科目を履修します。1年目は準備期間のようなものですね。

イラレ少し触ったことあるし、準備期間いらないよ、という人もいると思いますが、それでも3年コースは初心者にとって有意義だと思います。
私は、上記のソフトウェアの知識に関して、使えるというものと、全然使えないというものがちょうど50:50くらいでした。メルボルン大学入学前は、ランドスケープの雑誌等に載っている綺麗なPhotoshopの絵の作り方が想像できませんでしたが、最初の1年でそれらを作る方法論が少し分かった気がします。今はもう少しで手に届きそうかな、というくらいになってきました。基礎からデザインを学びたい人には3年コースの最初の1年はとても有意義なんじゃないかなと思います。

入学から3ヶ月で作ったPhotoshopの絵です。

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大学院3年コースがある大学

欧米豪の大学の多くはMaster of Landscapeの3年コースと2年コースがあります。全ては網羅できていませんが、パッと見つけたものをリスト化しておきます。

Harvard University GSD
University of California, Berkeley
University of Virginia
Lusiana State University
University of Oregon
Cornell University

ペンシルベニア大学のサイトには3年コースについて明記されていませんでしたが、3年コースもあると聞いたことがあります。知り合いでアメリカに留学されている方がいらっしゃったら確認してみてください。

大学によって、3年コースでもポートフォリオの提出する大学がありますが、あまり萎縮しなくても良いのではないでしょうか。大学側もこのコースの学生に最初から素晴らしいデザインスキルを求めていないと思います。留学経験のある先輩とお話しした際、「将来性が感じられるかがどうかが審査基準になのではないか」といった話を聞きました。
要は、ちゃんと目標があるか、なのでは、と思います。エッセイに気持ちを全力で込めましょう。

まとめ


ランドスケープアーキテクチャ、あるいはデザインに興味を持った方、特にそれらを海外で学びたいと思っている方が、この記事を読んで留学に対して少し気楽に考えてもらえるようになったら嬉しいです。

正直、私はビビリにビビって、ランドスケープデザイン留学をしたいと思い始めた大学3年の夏頃から実際に留学するまでに約4年半もかかってしまいました。実際に留学をして感じることは、そんなに怖がらなくても、もっと早くから行けたよ、ということなのです。なので、この記事を読んで、強気に自分の思い正直に突き進んでもらえたらとても嬉しいです。

建築・都市計画・ランドスケープの学生、社会人の方、またデザイン未経験の方に向けたランドスケープに関する記事を書いており、それらの記事をマガジンにまとめてnote本を作成しております。
ランドスケープとは何かという基礎的な内容や、海外留学についてなどを書いておりますので、どうぞ目次を手にとって見てください。
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