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【物工/計数Advent Calendar2020 22日目】工学博覧会2020を振り返る

この記事は物工/計数Advent Calendar2020の22日目になります。

21日目の記事はこちら

せっかくの機会なので、今年自分が代表として携わった工学博覧会の備忘録を書いてから年を越そうと思います。基本的には自分の考えや感想を綴ったものですので、お気軽にお読みください。

工学博覧会とは

まずは、工学博覧会の説明を五月祭の企画紹介文から引用しておきます。

『工学博覧会は物理工学科と計数工学科の学生有志が、日頃学んでいる学問や学生生活を紹介する展示企画です。皆さんが中学や高校で学ぶ数学や物理は工学に用いられ、生活の役に立ったり時には人を感動させる作品を作り上げます。 見て、遊んで、話して、美しき工学の世界を一緒に楽しみませんか?』(第93回五月祭ホームページより)

工学博覧会は毎年開催されており、多くの来場者がいらっしゃいます。来場者が実際に体験することができる展示があることや、普段目にすることがない演示実験を目の前で見ることができることは工学博覧会の魅力と言えます。

また、学科の学生や先生方をお呼びして行う講演会・座談会などの企画もあり、『学科の中の人との関わり』の場になっていたことも魅力の一つになると考えています。

工学博覧会の魅力は他にも様々あると思いますが、この記事ではこれらに焦点を当てて今年の工学博覧会を振り返ってみたいと思います。

工学博覧会2020と”オンライン五月祭”

今年を振り返る上でコロナの流行は無視できないでしょう。大学のみならず社会全体が混乱し、停滞した年であると言っても過言ではありません。このような情勢下では例年のような”オフライン”での五月祭は開催することはできませんでした。

しかしながら五月祭委員会方のご尽力の結果、9月に五月祭を”オンライン”で開催することになりました。五月祭を9月に開催するだけでも前代未聞ですが、オンライン開催に関しては殆ど経験がなく、手探り状態で準備を進めました。

①ホームページ展示

今年はホームページで展示を行うことにしました。ホームページ全体は「応物の国のメイプ」という絵本仕立てで、絵本を読み進める途中途中で展示に出会うようなデザインがなされました。「絵本」×「学科展示」というコンセプトはかなり挑戦的でしたし、準備にかなり苦労しましたがメンバーの力を合わせて満足できるものを作ることができました。

②ライブ配信

ほぼ1日中YouTubeライブ配信を行いました。コンテンツとしては、各展示の紹介やそれにまつわる話題についての発表を行ったり、学科の先生方をお呼びしてインタビューをさせて頂いたり、幣学科と似た学科に所属する学生方による座談会など盛りだくさんでした。それぞれのコンテンツは長くても1時間以下で、それぞれのコンテンツの間の時間は5~30分程度と、かなりタイトなスケジュールでした。これは参加者の興味を引き留めるための工夫で、頭の中には「24時間テレビ」ないしは「紅白歌合戦」のようないくつものコンテンツを繋げていくスケジュールを思い描いていました。ライブ配信の同時視聴者数は100人を超え、どの時間帯も30人以上いるなど、多くの方に御覧頂けたものと考えています。

皆様のおかげでMayFesAwardsでは学術発表部門2位を受賞させて頂きました。ありがとうございました。

工学博覧会2020の運営について

工学博覧会を運営するに当たって一番悩んだ点はコンセプトを何にするかということでした。私は過去に何度も実験教室や科学ボランティア活動を行ったことがあるのですが、自分はコンセプトを決めるに当たって

①イベント概要(地域、客層、実施形式など)が決まったら、より掘り下げて現状把握を行い、どういった(地域)課題があるのかを考える
②イベントで取り使うべき課題を決め、イベントを通して参加者に課題に対してどのような向き合い方を築けるようになってもらいたいかを考える
③課題に対する参加者の向き合い方を想定しながら、どのような方法で想定した向き合い方を構築させるかを考える
④考えた方法が参加者にとって参入障壁が低いものになっているか、楽しむことができるものかを考える
⑤方法を十分に検討した後にコンセプトを確定させる

といった行程を踏みます。丁度、教師が学習指導案を書く感覚に近いのだと思いますが、目標を設定して、実現するために工夫を施すという一連の流れはシンプルに見えてかなり難しいです。時には実際に準備するよりもコンセプトを決める方に長い時間がかかることがあります。工学博覧会のコンセプト作りに当たっても、多種多様な展示やメンバーの様々な思いをまとめ、目標や方法を考えることは大変で、コンセプトが出来上がるまでに半年くらいかかったと思います。

コンセプト作りの際には色んな人の意見を聞いてインスピレーションをもらうことにしているのですが、学科同期との会話から出てきた「没入感」という言葉が今年の工学博覧会のキーワードになったと感じます。ディズニーランドに入園することで自分がディズニーのアニメの世界の住人になったかのような気分がしますが、それと似た構図を学科企画で行う。つまり学問や人よりも更に下のレイヤー、言葉では説明することのできない雰囲気を提供するということです。

これが今年の工学博覧会のコンセプトの基になった考え方です。未だにこの「没入感」を自分の言葉で表現しきれていないのですが、少なからず「絵本」×「学科展示」という挑戦的な展示デザインを後押しした一つの要因になっています。入口は広く、誰でも気軽に参加でき、気づかぬうちに応物の中に溶け込んでいくようなデザインを『数の悪魔』という本を参考にしながら作り上げ、学問の本質は落とさないよう、ファンタジー要素を盛り込んだホームページデザインとなりました。実はこのコンセプトは3月頃に考えていたため元々は工学部6号館をそのような装飾を施そうと考えていたのですが、オンライン開催になったことでコンセプトをそのままウェブ上で実現することになりました。

オンライン開催の課題

さて、最後にオンライン開催準備の過程でぶつかった様々な課題の中から特に重要だと感じたことを挙げておきたいと思います。

①オンラインで提供していた『臨場感』をいかにして伝えるか
②双方向的なコミュニケーションをいかにして図るか(参入障壁をいかにして減らすか)
③参加者の興味をいかにして引き留めるか

これらの課題は全て「私たちは何を提供できるか?」という問いに関係しています。例えば例年の工学博覧会では、普段見る機会の少ない演示実験や展示を目の前で見ることができるという点が一つの魅力ですが、オンラインでは画面越しに見ることになります。インターネットで気軽に実験動画にアクセスすることのできる時代において、私たちが付加することのできる要素は何でしょうか。ウェブアプリを実装したり、ストーリー仕立ての演示動画を作ったりなど、メンバーそれぞれが臨場感を生み出す工夫ないしは臨場感に代わる要素を検討していたように思います。

また、参加者からのリアクションを聞く機会が去年よりも減ったように感じました。例年の工学博覧会では、展示を見た来場者の方々が学生側にフランクに感想を言ってくださったり質問して頂くことが多かったのですが、そのようなフランクな会話の場を設けることが難しかったというのが今年の印象です。YouTube Liveのコメント欄や、Twitter、Discordなどを用いて参加者との会話を図ろうとしていましたが、やはり参入障壁が高い感触があります。自分なりに参入障壁が高い理由を考えてみましたが、おそらく「小話」がフランクな会話について考える上でキーになるのではないでしょうか。「小話」とはごく少数人で、他の人に聞かれず、履歴も残らない、その場で完結するようなコミュニケーションのことをここでは指すことにします。少なくとも工学博覧会で見られるフランクな会話の殆どはこのような「小話」ではないかと考えます。ちょっとした疑問や感想を学生に話して、それをきっかけにしてより深い内容に話題が移っていく過程が学問を、学科を、人を知ってもらう機会になっていたのではないでしょうか。「小話」をするためには①履歴が残らない②特定の人にしか会話が見られない③質問相手(学生)を見ることができるなどの工夫が必要なのかもしれません。

ツールに関わる話では、参加者の興味をいかにして引き留めるかという観点も重要です。オフラインとオンラインでは広報戦略が大きく異なります。オフラインの場合は五月祭の中で”ふらっと”立ち寄ってくださる方も多いのですが、オンラインではそのような”ふらっと”する機会が少ないように感じます。そのため、オンラインの場合はオフラインに比べてより広い範囲に対してSNSを通して広報を行う必要があると感じました。なるべく多くの方に印象づけるような広報が重要で、今年のキービジュアルはまさに多くの方の目に留まったのではないでしょうか。

展示方法にも参加者の興味を引き留める工夫が必要です。オフラインの展示にはある程度の導線を設計することができます。演示実験の近くに解説文やスタッフなどがいれば、その場でその実験ないしはプロダクトの魅力を説明することが自然に行えるでしょう。一方で、オンラインは”つまみ食い”ができます。勿論オンラインのメリットでもあると考えられますが、伝えたい魅力を十分に伝えられないこともあります。このような意味で、参加者の興味を引き留めるながら魅力を伝えることは重要なことだと考えられます。オンラインではそれぞれの要素同士を一つに繋げるような流れをいかにして実現するかが重要だと考えます。例えば今年の工学博覧会ではホームページをストーリー性のあるものとしてデザインしたり、ライブ配信では各コンテンツの間を長く空けないようにするなど、参加者の興味を引き留める工夫を行いました。

工学博覧会ストーリー

さいごに

イレギュラーな2020年でしたが、工学博覧会メンバー全員の力を合わせて無事開催できたことはとても良い思い出となりました。来年以降はどのような工学博覧会が見れるのかが楽しみです。

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