不倫にまつわるエトセトラ④

〜SIDE C〜
美人で男に困らないのに何故かダメ男ばかり捕まえてしまう女
私はそんなラブコメ漫画の主人公のような女だ。

ギャンブル依存症 ニート DVこの世の全てのパターンのダメ男と私は恋愛経験をしてきたんじゃなかろうか。自分が好きになる男性とは必ず付き合えるのだが全てがどこかダメな人だった。

次こそはと地味で絶対にモテないであろう男を好きになり付き合い始めたがその男は既婚者だった。

流石の私も凹んで仕事を休みその日は昼から飲み歩いていた。最後に辿り着いたのがあのBARだ。そこで私は旦那と出会う。

旦那がちょっと引いた目でこちらを見ているのだけは印象に残っている。もう恋愛なんてしないと決めていた私はこっちから声をかけて初めて会った男に全てをぶちまけた。

気がつけばホテルの部屋で目を覚ました。いつものパターンかと思ったら今日は違った。部屋には私一人しかいない。
しかもなんて事のない普通のビジネスホテルだ。

ホテルのフロントの人に恥を忍んで聴くと旦那がここまで運び料金を払って帰っていったと教えてくれた。お礼がしたいからと無理を言って記帳してあった会社の情報をメモする。

手土産を持って私は会社に行った。せめてものお詫びにと食事をご馳走する事に。昨日は泥酔していてよく見えなかったがマンガから飛び出してきたような容姿端麗な男だった。そして昨日は聞けなかった旦那のこれまでの人生を聞いて私は涙が止まらなかった。恋をしないなんて誓ったはずなのに気がつけば私は同じようにひどい人生を送ってきた旦那を好きになっていた。

自分が好きになった男とは付き合えるというジンクスの通りに私は旦那と交際し結婚した。結婚してから知ったのだが会社の後取りらしい。いよいよ私のダメ男に振り回された人生も終わる。そう思っていた。

旦那は容姿端麗 お金持ちだったがダメなところがあった。というより結婚してから気づいてしまった。

旦那とは子宝に恵まれなかった。おそらく色々な原因があったのだろう。

それを知ってか知らずか旦那の父は私と顔を合わせるたびに「子供はまだか?」と聞いてくる。しまいには夫婦生活のことまで聞いてくる始末。旦那との子供ができないのは父のプレッシャーによるストレスと考えた私は旦那の父にもお弁当を作りそれに毎日少しだけ隠し味を加える事にした。

しばらくして旦那の父は体調を崩した。
腎臓が弱っており仕事復帰は難しいらしい。みるみる弱っていく父はそれ以降子供のことは言わなくなった。

父が現役を退いて旦那は異例の若さで社長になった。これでまた幸せな生活が戻ってくる。そう思っていたが現実は甘くなかった。
旦那は忙しくなりなかなか家に居れなくなってしまった。障害を取り除いたつもりが益々子供からは遠ざかってしまった。

私は派手な下着をこっそり買ったりネットで不妊治療についてたくさん調べたりしていた。でも旦那は仕事でいつも疲れていて妊活には協力してくれなかった。

結局私はまたダメ男を捕まえてしまったのかなと悩んだ。そんな事もあって無性に外でお酒を飲みたくなった私は旦那と出会ったBARに行く。そこで私は彼と出会う。

正直冴えない彼は私のタイプではなかった。身の上話をしているが話も全く面白くない。
でも彼の目を見てすぐにわかってしまった。出会ったばかりだが彼は私に惚れている。まがりなりにも沢山の経験をしてきたからか私のことをどう思っているかもなんとなくわかるようになってしまった。
そして一つの仮説を思いつく。

旦那にはもしかすると子供を作る能力がないのかもしれないと

そこで男に耳打ちしとある提案をした。

「私赤ちゃんが欲しいの。あなたの精子をもらえないかしら」


「違うの。誤解なの」

旦那に彼との現場を見られた私はこう答える。
旦那は何故か笑っている。
あなたは誤解している。私は貴方とずっと一緒にいたい。そのために子供がどうしても必要だった。でも貴方にはその能力がない。だから彼に力を貸してもらっただけなの。

そう言おうと思っていたのに冒頭部分を聞いて私の話を聞くのを辞めてしまった。

彼はそそくさと帰ってしまった。理由くらい話してくれても良かったのに。

旦那はしばらく自室に篭って出てこなかった。
その後どこかへ出掛けてしまった。

旦那は私の話を今は聞きたくなくて頭を冷やしているだけ。少しすれば帰ってくる。そう思って私は家で旦那の帰りを待っていた。

なかなか旦那は帰ってこなかった。
今回の事で旦那は相当反省しているに違いない。きっと子供ができないことが原因だと気づいて色々な事を調べて病院に検査に行ったりしてるに違いない。と思いながら私は旦那の帰りを待った。

数日して宅急便が届く。差出人は旦那。
宛先は私。箱を開けてみると圧力鍋が入っていた。

私は飛び上がるほど嬉しかった。やっぱり旦那は私の事を考えてくれていた。これはこの鍋で私の美味しい料理をそろそろ食べたいという旦那なりの不器用なメッセージだと思い帰ってくる日に使おうと取っておいた。

そしてある日の夕方。私が買い物を終えて帰ってくると鍵が空いている。

旦那が帰ってきたとわかり急いで中に入る。旦那の靴がある。上の階から笑い声が聞こえる。私は嬉しくなって急いで料理の支度を始める。私は旦那を喜ばせようと圧力鍋を取り出す。説明書通りに組み立てる。

旦那の好きなカレーにしようと思い具材を刻んで鍋に入れる。そこに旦那が降りてくる。旦那はよほど嬉しかったのか震えている。私も嬉しくてつい包丁を持ったまま近づこうとしてしまった。危ない危ない。

そして私は大事な事に気がついてしまった。カレーにしようと思ったがルゥがない。私は圧力鍋を火にかけた。説明書通りに強火にする。
そして旦那に火の番を任せてカレーのルゥを買いにスーパーへ急いだ。

ルゥを買って急いで私は自宅に帰ってきた。けど何故か旦那の姿はそこにはなかった。警察が何か言っているが耳に入ってこない。入ってきたのは救急車と消防車のサイレンの音だけだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?