リビングにダンゴムシ

映画『兎の眼』で、小学生のてっつんはハエを飼っています。担任の小谷先生はそれをやめさせようとしますが、てっつんのおじいさんは、もしも鉄三が田舎の子だったらかぶとむしなんかを育てているだろうけれども、鉄三はゴミ処理場の子供、まわりにはハエくらいしかいないんだ、鉄三はただ、自分の身近の虫を育てているだけなのだ、と小谷先生に言います。てっつんはおじいさんと二人暮らしです。小谷先生は、そのおじいさんの言葉を噛みしめます。

子供の頃は、結構誰でも虫なんて平気だったのに、いつのまにか虫を苦手に思っている自分に気づく、そんなことはないでしょうか。(ゴキブリ以外の虫は、案外に平気だった自分も、いつの頃からそうで、そんな自分に驚いたことがありました。ミミズなんて平気で素手で持っていたのですが、今はなかなかそんな気になれません。)

てっつんが自分の生活環境の中で見つけられ、捕まえられたのはハエだけでした。てっつんはハエの飼育については小学生裸足です。映画には出てきませんが、原作の小説ではてっつんのハエに関する知識が大人を凹ませるようなエピソードもあったように思います。

ダンゴムシも、思えば団地の虫なのかしら、と。

物心つく頃から昭和の団地暮らしの僕にとっては、ダンゴムシは、馴染みのある虫でした。子供の頃は、平気で素手で捕まえては団子にして、コロコロ弾いて遊んでいたように思います。団地の怪談の1階あたりとか、別棟の倉庫のあたりとか、イナゴやショウリョウバッタとかと一緒に当たり前に居た虫だったように思います。

が、僕ももう大人です。
ある朝、いつものように5時前くらいに(僕は比較的朝早くに起きて仕事をしていました。夜はお酒を飲んで比較的早く寝てしまうので、残業は出勤前にやる方でした)起きてみると、社宅のリビングを少なくない量の何かが動いている。
強度の近視の僕は、自宅や社宅では10〜20cm前のディスプレイを見るのに合わせた近眼用のメガネを使っていて、50cmとか1mとか離れたものはよく見えません。

で、近づいてみると、ダンゴムシ群。

リビングを少なからぬダンゴムシが徘徊しているという状況にパニクった僕は、とりあえず手元にあった網戸に噴霧する虫除けスプレーをかけまくったわけですが、と同時に、何をそんなにパニクっているの、自分?、と自分のことを見る自分も居なかったわけではありません。ゴキブリでもあるまいし、たかがダンゴムシ、つつけば丸まるのだから、丸まったところをちりとりに集めて外に捨てればそれでいいじゃん…。

けれども、我が社宅のリビングは、端に単身赴任先の社宅のリビング、というだけではない機能もあり、そこをダンゴムシが夜な夜な徘徊している、という状況は、ちょっと許しがたいものがありました。
アウトドアばやりの昨今、キャンプ場でテントの界隈に地を這う虫たちが居ても平気な人たちも多いのかもしれませんが、我が社宅のリビングはアウトドアではないし、場合によっては訪問者の寝所にもなる場所なので、そこをダンゴムシに徘徊されるわけには生きません。

「この意思疎通のできない虫どもに対しては殲滅戦の覚悟で臨まなければならない」と、『ガメラ2 レギオン襲来』の永島敏行くん演じる渡良瀬裕介陸佐の気持ちが分かりました。

とりあえず、購入したのは「虫コロリアース」。これは屋外噴霧用の薬剤です。社宅は、昭和60年代に建った団地な上に、中途半端な「半田舎」なのではびこる虫ははびこるので、これを部屋の前の階段廊下などに噴霧しました。

単身赴任先と自宅とを毎週往復しているのですが、帰ってみると、噴霧の効果はまったくなかったようです。
で、今度は「虫コロリアース 駆除エサ剤」というのを「虫コロリアース」のスプレーを購入しました。
「虫コロリアース 駆除エサ剤」は、ゴキブリ駆除のための「コンバット」の小さいような奴で、20箇所近くにしかけました。スプレーの方は、即効性と持続性とを兼ねているとのことでしたが、どちらかというと即効性を期待して購入しました。

ダンゴムシは、スプレーしても簡単には死なず、平気で歩いています。が、そのうち死んでしまうのでしょう。
現れて、スプレーされ、死んでしまう彼らよりも、彼らが何処から侵入してくるのか、あるいは屋内で繁殖しているのか、そちらのほうが気になるわけですが。

「虫コロリアース 駆除エサ剤」とそのスプレー版をある程度適用して自宅に返り、再び、週明けに社宅に戻ると。

想像以上にリビングではダンゴムシが死んでいました。
その上、死んでいてほしくないような、ヤスデともゲジゲジとも付かない虫の死骸も(捻転したのか、ちょっと見では何か分かりませんでした)。

設置形の殺虫剤の効果が出ているのは確実だと思いましたが、要するに入り込んできた虫が死んでいるだけ、あるいは繁殖して毒餌を食った虫が死んでいるだけ。根本治療ではありません。

今日は、より強力だと宣伝されている「アースイヤな虫ゼロデナイト」を使ってみました。遅効性ということなので、効果が出るのは1月ぐらい後らしいですが。効いて欲しいと思います。

ただ。

対象のムシなどの中には、例えば、クモも居ます。
クモとヒトは、案外に捕食・敵対している相手が似ていたりするんじゃないかと、思ったりします。
ハエトリグモは名前のとおりハエをとってくれますし、多くのクモは人間にとってもやっかいな虫を捕食するのではないかとも思います。アシダカグモはゴキブリに抗せる数少ない生き物のひとつですし、

でも。

そんなことを考えていられる余裕がないほどに、地を這う虫の侵入に対しては、結局のところ人間の智慧が見出した薬物を使うしか無い、ということなのでしょうか。

ともかくも、今回投入した殺虫剤は、比較的高価なものでもあり、その効果を期待したいと思っています。

レギオンとは共存できない、そう、腹を括ったからには、徹底した殲滅戦の覚悟で当たるしかないのだと思いますから…^ ^;;

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