南夕子 イノチガケ/『ウルトラマンA』覚え書き(8)

さて、前回書いたように、視聴率低迷のテコ入れとして(?)、市川森一と上原正三、二人のエース脚本家による共作で、超獣、怪獣、宇宙人が入り乱れて大暴れする前後編の後編。今回は、南夕子が(唐突に)見せた新たな一面について述べる事にする。

『ウルトラマンA』第8話/太陽の命、エースの命

脚本=上原正三/監督=筧正典

第七~八話の最大の見どころは、超獣ドラゴリー、宇宙人メトロン星人、そして怪獣ムルチと、巨大生物が三体も登場する大盤振る舞いだ。あまり『ウルトラマンA』を記憶していないぼく(放映当時小学校二年生)だが、この三体入り乱れた格闘は朧気ながら記憶にある。

もっとも、三つのうちの怪獣ムルチ(『帰ってきたウルトラマン』にも登場した)は、あまり活躍しない。ウルトラマンAが、超獣ドラゴリーとメトロン星人に挟み撃ちにあって苦戦しているところに、なんの説明もなく現れる。最初は他の二体と一緒にウルトラマンAを襲っていたが、あやまって超獣ドラゴリーに体当たりしてしまい、激怒したドラゴリーに、下あごを引きちぎられ、腹部まで剥ぎ取られ、真っ赤な肉がむきだしになるという残酷描写つきで殺され、まったくストーリーには絡まないまま、いわば特別出演を終える。だから以下、ムルチの存在は忘れてください。

今回の前後編の特徴は、一週間後に妖星ゴランが地球に衝突するというタイムサスペンスだ。ウルトラマンAやTACの最大の任務は、妖星ゴランを迎撃すべく製造中のマリア2号をぶじ、発射させる事。

だが、超獣と宇宙人、双方を同時に相手しながら、マリア2号を守るのは、ウルトラマンAにとっても至難の業だ。エースバリアという技を使って、どちらかを異空間に閉じ込める以外、方法はない。だが、この技はエネルギーの半分を消費してしまうという危険なもので、下手をすれば、北斗か南、いずれかが命を落としかねない。だが、北斗に相談された南夕子は、何の逡巡もなく、敢然としてこう答える。

「たとえ命を落とすことになっても、地球の身代わりとなって死ぬなら、思い残すことはないわ」

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