2023年12月4日 読書記録


マンガ・アニメで論文・レポートを書く:「好き」を学問にする方法

 マンガやアニメを題材に論文・レポートを書く際のコツや注意点の本でもなければ、そういう方法の本でもないです。
 小論文のアンソロジーをそれとわからないタイトルで出版するの、要するに嘘をついてお金を騙し取ってるわけで、真っ当な出版社ならやめるべきだよ。

 こういう騙しの手法は人文系に限った話でもないけど、その悪質さは別として、そもそも研究内容の発表の方法としてなんで出版を選んでるんだ?と疑問に思う。こういったアンソロジーの中身は得てしてピンポイントな論で、とてもじゃないけれど採算の取れる中身でもないだろうに、商業の出版に乗せる理由、何なんだろう?


劇場版ポールプリンセス!!

 実質プリティーシリーズ(制作会社とCG担当が同じ)。
 これまでの女児向けシリーズでは「〇〇さんってスタイル抜群で憧れるなぁ」くらいに抑えていた肉体美を、女児向けではない今作ではきちんとCGで表現していて……端的に言うと、セクシーさに感動した
 胸とか腰とか尻とか、必要に応じてきちんとセクシーなんだよ……!

 もう少し別の感想としては、何にでもエロを見出す人もいれば、何にでも競技性を見出す人もいるものだなぁとも思った。


暗号解読事典

 暗号解読のフローチャートを作りたい!と思って再読。結論から話すと、暗号は解けないから暗号なのだった。

 自分が"出題者"だったとして、レベル1は一般教養が幅広い人に解かれることを想定できる。

レベル1:単一換字暗号、ポリビュオス暗号、"ヴィジュネル暗号"(簡易)
レベル2:ヴィジュネル暗号(複雑)
レベル3:コード暗号、転置(アナグラム)暗号、その他だいたいの暗号

 レベル1は「頻度分析」や「接触チャート(要は2文字以上の頻度分析)」を聞いたことがあるくらいの人なら、解読が期待できる。レベル2は専門的な手法を知ってれば解けるかもしれない。レベル3はたぶん現実的ではない(それでも戦時下には解く人が居るから怖いねェ)。……といった感じ。

話が長くなるので区切ろう!!!!

ヴィジュネル暗号について

(以下、説明が「合言葉」だったり「鍵」だったりするけど同一のものです。)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%8D%E3%83%AB%E6%9A%97%E5%8F%B7#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Vigenere-square.png

 一般に「ヴィジュネル暗号」と呼ばれているのは、実際にはトリテミウスという別人が発明したアルファベットの方陣に、ジョヴァン・ベラソというやはり別の人物が改良を加えたものだ。
 トリテミウスの方陣では「n文字目はn段目を参照する」という仕組みだった。しかしそれだと多様性がないので、ベラゾが「暗号とは別に、事前に合言葉を渡す」という改良を加えた。日本語版wikipediaの「暗号化と復号」の項目で例に挙げられている、armが合言葉にあたる。

 どうにも推測するに、このバージョンの"ヴィジュネル暗号"が一般に広く知られている"ヴィジュネル暗号"らしい。欠点についてはwikipediaの「カシスキー・テスト」の部分を参照。
 YouTubeでよく解説される「周期性があるので、似たような文字列がいくつも見つかれば、そのインターバルの約数が合言葉の長さだとわかる。あとは頻度分析で……」が効くのは、いわば初期バージョン限定のバグで、後期版では解消されている。

 ベラゾ以降の改良としては、ジロラモ・カルダーノの自動鍵が挙げられる。
(これは平文復元後の単語を、平文の単語ごとに繰り返し用いるもので、……たとえば復元後の平文が「do not attack the city」だとすると、doはdoで暗号化、notはdodで暗号化、attackはdododoで暗号化…とする仕組みだ。最初のdoをどうやって復元するのかは、正直よくわからなかった。
 The enemy does not know the system的な考え方で、秘密の暗号方式を知っている味方なら「ある文字〇を〇のぶんだけ進めた後の暗号文字」を把握しているから大丈夫、ということなんだろうか?)

 ……というのがこの本の説明するカルダーノ式暗号だったのだが、ネット上の情報には「notはdon」で暗号化、「attackはdonota」で暗号化…と説明しているページ(たぶんどこかの大学の授業用プリントだと思う)も発見してしまった。

 いずれにせよ合言葉の繰り返し幅が短くて脆弱なので、2つの方法へと進化した。1つは合言葉を複数用意して、多重に変換する方法。これによって実質的な鍵の長さが、各鍵の最小公倍数になる。
 もう1つは、最初に1度だけ合言葉を使って、それ以降は平文あるいは暗号文それ自体を鍵として再利用する方法だ。(これは、脇道がとても長くなったが本題の、ブレーズ・ド・ヴィジュネルの発明の話になるので後述)

 そして最後に登場したブレーズ・ド・ヴィジュネルの功績は、トリテミウスの方陣の中身を入れ替えることを提案したこと、そして進行鍵を発明したことだ。
 前者はつまり、方陣の中の横行あるいは縦列がABC…と並んでいるのを、少し入れ替えることだ。(仮に合言葉が「ANGOU」なら、アルファベットからANGOUだけを手前に持ってきた「ANGOUBCDEFHIJKLM…」とする)
 後者は自動鍵の進化系(私の理解が正しければ、自動鍵の中に含まれる一種)で、冒頭だけを合言葉(たとえばarm)で復元した後、残りの部分では復元後の平文それ自体を鍵として使うことを指す。これによって実質的な鍵の長さは、本文の長さと同一になる。それでも結局は解けてしまうのだが……。

 先ほどのウェブページの説明を要約して転載すると、「合言葉がnから始まる5文字のワードだと仮定すると、1文字目の平文はtだったということになる。なのでそのtによって暗号化される5文字後の文字を復元し、出てきたsによってさらに5文字目を復元……と繰り返すことで解ける」らしい。
 この時点で「n」と「5文字」は総当たりのための仮定でしかないし、基本的には5文字おきの復元から正誤を判定するのは難しい(QやXがたくさん登場していたら頻度的に怪しくて、EやTがたくさん登場していれば頻度的にそれっぽいが)。
 とにかく非常に手間のかかることをすれば(あるいは21世紀のコンピュータを使えば)解ける……らしい。

暗号解読の手法

(ここではシーザー暗号やヴィジュネル暗号など幅広い換字暗号への解読手法を紹介する)

フリードリヒ・カシスキの解読手法:だいぶ前に先述した、インターバルの約数を利用する手法。YouTubeで暗号解読とかで検索すれば出てくるよ。

ケルクホフスの解読手法スーパーインポジションポジションのシンメトリの2種類がある。

ウィリアム・フリードマンの解読手法:平文アルファベットと暗号アルファベットの対応が既知なとき、合言葉を発見することができる。

【スーパーインポジション】
 同じ鍵によって暗号化された暗号文をたくさん集めて並べることで、それぞれのn文字目同士は同じ暗号化がされているので、頻度分析が使える。

【ポジションのシンメトリ】
 n文字目同士の比較である文字と別の文字のインターバルが判明した場合、そのインターバルはn文字目以外の箇所でも成り立つ。

 たとえば、n文字目の中では暗号文のXが平文のaに、Yがcに対応していたとするとき、他のm文字目で暗号文Xに対応する平文がsだったならYに対応する平文はuの可能性が高い。(aとcはインターバルが1文字だったから、sから見てインターバルが1つのuだという推測)
 わかりやすさのためにXとYは連続するアルファベットで説明したけど、実際にはaとcのインターバルにしか注目していないので、あらゆる換字で使える。

【フリードマンの合言葉発見】
 ある部分で暗号アルファベットと平文アルファベットの対応が完全にわかったとしても、合言葉がわかるとは限らない。

 たとえば、合言葉「absolute」で変換された平文アルファベット「absolutecdf…」が暗号アルファベット「ecdfgh…」に移っていたとする。(ABC順からabsoluteを先に出して、7文字ずらしたもの)
 このとき平文「abcdef…」が暗号「eckmjn…」に対応するとわかっても、合言葉の「absolute」は自明ではない。

 そんなとき、まず任意の文字からスタートして、「平文aは暗号eに移り、平文eは暗号jに移り、平文jは……」と進めて一巡することで26文字の文字列を得る。(この場合の文字列は、「ejvsdmx……」だった)
 その後、その文字列をインターバルを変えて……説明が難しいので素直に画像を貼ります。

これの一番下の表を参照!

 非常に自信がないが、自分の理解が正しければ、この表は未完成だ。

 本当なら3段目には26文字目以降にはみ出してしまった文字列(gpztirbc…)も同様に、「g  p  z  t  i  …」と書きだして、3段目の空いたスペースに入れる必要がある。4段目以降も同様に埋めると、7段目を埋め終わった時、「absolute」の文字列が登場する。
(2段目と13段目の場合、右にはみ出した分をどの位置から書き始めるべきかはアドリブかもしれない?)

◆以下、原論文を軽く読んできて追記◆
・7段目なのは、平文「abcdef…」と暗号「eckmjn…」が8文字ずらしだから、8-1で7段目ということらしい

・そしてそれとは別に、「D〇F」とか「W〇〇〇Z」といった部分が見えたら、(〇の部分が予想しやすく、その予想が的中していることが大きなヒントとなるので)ほぼ確実にその段に正解となる合言葉がある。

 暗号解読事典は、こんなタイトルの割には、暗号の紹介の話がメインで、正規じゃない受信者が暗号を解読する方法に関しては非常に説明が手薄である。ついでに翻訳も怪しい気がする。(いや、ヴィジュネルまわりは紹介なのに説明がわかりづらかったぞ? たぶん重要な箇所での誤植もあったと思う)
 わかんねーよ、「第1の鎖が完成すると、解析者は文字を験しのインターバルに書きだし、そのスペースが徐々に広がっていって、キーワードの平文の部分が判明する」の1文で済まされても!


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