2022年11月4日 アークナイツが面白すぎる

先月までの印象

アークナイツ:ブルーアーカイブじゃない方
ブルーアーカイブ:アークナイツじゃない方

今月の印象

アークナイツ:忍殺3部の戦闘とファフナーEXODUSの世界観、戦争は女の顔をしていないの退廃描写を足して1.5くらいでしか割っていない化け物。それに加えてソシャゲ的な美少女描写もあって、ゲーム性も高いらしい。
ブルーアーカイブ:アークナイツじゃない方

第1章から「テロ組織が市街地暴動を起こしている都市に仲間の救助のため潜入し、大きな犠牲を払いながら撤退する」をする美少女ソシャゲ

ソシャゲという物語の形式

 具体的な内容に踏み込んだ感想を書くこともできるけど、それはたぶん誰も読まないので割愛するとして、ふつうにソシャゲというシステムが面白くてビックリしている。
 今までソシャゲシナリオのことはアニメ化したもの(たぶんFGOだけかも)でしか触れたことがなかったから、「話のテンポが自由すぎる」「戦闘を挟まないと話が進まない」「プレイヤブルキャラクターは死亡しない(シナリオに制約がある)」「主人公の扱いが難しい」みたいなネガティブな面ばかり感じていたけれど、この度アークナイツではソシャゲという形式のポジティブな側面にも多く触れることができた。

 まず第一に、作品がメインシナリオ、イベントシナリオ、キャラクター設定・ボイスの3つ(かそれ以上)に分かれているのが面白い。ふつうの小説や漫画や映画なら必要に応じてしか時系列や視点を変えることはしないのに対して、ソシャゲはそうではない。世界史に例えるならこんな感じだ。

メインシナリオ :チンギス・ハンが各地に侵攻する
イベントシナリオ:十字軍の難航やマグナ・カルタ成立
キャラクター  :インノケンティウス3世や鴨長明

 この形式は従来の形式と比べて、世界観の別視点や事件の別側面の描写が自然にできるし、メインシナリオで説明しきれなかった部分の補足や、メインシナリオでこれから起こる出来事への伏線作りにも向いている。

 そして当初どこまで意識的だったのかはわからないが、アークナイツの世界観・物語はとにかくこの形式に向いている。この形式でなければ確実に頓挫すると言ってもいい。地球によく似た架空の惑星が舞台で、大陸規模の舞台には数々の国家や都市とそれぞれの思惑があり、民族同士がいがみ合うまでの歴史もある……ハイ・ファンタジーのSF版にあたる単語を僕は知らないが、あらゆるフィクションの中でもかなり世界観の風呂敷を大きく広げている作品だと思う。
 そんな大胆な作品が机上の空論ではなく実際に形になっているのは、メインシナリオではウルサス帝国(≒ソ連)と炎国(≒中国)のそれぞれ一都市だけに焦点を当てて、それ以外の14の国家や30近くある種族のほとんどはイベントシナリオやキャラクター個別の説明に割り当てている(中にはこれから回収するための伏線として断片的にしか提示されていないものも多い)。

 ……めちゃくちゃだ。これまでうまくいかなかった世界中の机上の物語の中には、その最適な形式がソシャゲだったというものも多かったんじゃあるまいか?

もうひとつの可能性

 メインシナリオ、イベントストーリー、キャラクターの3軸形式が持つもう一つの面白い点は、おそらく制作の分業が従来よりやりやすいということだ。
 TRPGを思い浮かべてほしい。世界観や大枠の物語、重要NPCが書かれたルールブックさえあれば、セッションシナリオやキャラクターは誰でも作ることができる。これと同じようなことがソシャゲでは可能だと思う。
 イベントシナリオやキャラクター(重要人物を除く)に関しては「こういうあらすじどうでしょう?」「こういうキャラクターを考えました」という、いわば社内二次創作の提案するだけならどの社員でも(プログラマーやイラストレーターでも)できて、ディレクターやメインシナリオライターがOKを出せば実際のライターがシナリオを執筆する――そういう形式が、少なくとも理屈の上ではだいぶ実現可能だと思う。

 実際の所アークナイツがどのくらい分業されているのかは知る由もないが、一部の重要キャラクターはイラストレーターの過去の一次創作をリファインしたものであることを考えると、イラストレーターがキャラクター設定に干渉できる点くらいは当たっているんじゃないか……そして何より、世界観という風呂敷の広さとその見せ方の巧さが尋常ではないから、これが少数の天才によるものだとは信じたくないものだ。

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