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VRChatの小さなワールドが好きな理由  #ワ探アドカレ


※この記事は、VRChat(VRSNSプラットフォーム)で活動する「VRChatワールド探索部」、通称ワ探の部員によるアドベントカレンダー、 #ワ探アドカレ の9日目です。



「VRChatのメインコンテンツはコミュニケーションである。」

そんな当たり前のことを実感したのは、このゲーム(と、敢えて書く)をはじめて何か月も経ってからのことだった。

美しい世界や魔法のような技術を見たくて、アバターを纏ったときの自分の変化を知りたくて、単なる興味でインストールしたVRChatだった。

海外の子供たちに追い掛け回され、命からがら[JP] Tutorial world に逃げ込み、運よく親切な方に会い、いろいろと教えていただいて今に至る。
はじめは少しでもたくさんの世界や技術について情報収集する手段としてのコミュニケーションだったが、そのうちコミュニケーションそのものに魅力を感じ、時間を割くようになった気がする。

誤解を生まないように書いておきたいのだが、コミュニケーションといっても、もちろん人間と人間が会話をすることだけではない。
たとえばそこに、

アバターをつくる人、改変する人、愛でる人がいること。
写真を撮ってアップする人、見る人がいること。
パフォーマンスする人、楽しむ人がいること。
ワールドを作る人、訪れる人がいること。

すべてが意思の交換で、これらがありとあらゆる場所に満ち溢れているから、毎日コミュニケーションが忙しくてたまらない。


自分の好きな時間

たとえば言葉を介して会話をするときにも、物理世界と同じようにいろいろなシチュエーションやタイミングがあるわけだが、そんな中でも私が特に好きなのは、たまに訪れる「偶然そこに居合わせた少人数のフレンドと、ゆっくり会話をする」時間である。

VRChatの中で遊んでいると、イベント参加が多いためか、多くの方とは挨拶や世間話くらいで終わってしまうことが多く、なかなか2~5人くらいの少人数でじっくり話すことが叶わなかったりする。(これはあくまで自分の場合。)だから、たまのタイミングでそうした機会があると嬉しい。

好きな食べ物。
よく行くイベント。
VRChatを始めたきっかけ。
今ハマっている音楽アーティスト。
使っているアバターのことや改変のこだわり。
制作したワールドの詳しい設定やコンセプトのこと。

もちろん(少なくとも現在の日本では)匿名性の高いVRChatというゲームにおいて、人によって聞かれたくないこともあるだろうから、関係性を考えながら、この人にはこれを質問してみてもいいかな、やっぱりやめておこうかな、と悩みながら話していく。日々、反省することも多い。


そうこうしていくと、次第にその人の視点や哲学、「らしさ」の輪郭が浮かび上がってくる。

この瞬間が嬉しい。


・・・思い返してみれば、そういうときにはいつも決まって「小さいサイズで、すこし暗く、静かなワールド」で話し込んでいることが多いような気がするのだ。

当然ながら、どこまでも続く広い空間や、華やかな色彩が美しいワールドが大好きだ。ただそれと同じくらい、近すぎず遠すぎず、適度な親密感を保つことのできるこういう小さな場所がたまらなく好きで、誰かとゆっくり話すときに訪れるのが気に入っている。

たとえば、屋根裏部屋の、妙に落ち着く雰囲気が好き。

Rainy Attic — by Fins

天井の存在を感じながら、差し込んでいる光をぼんやりと眺める幸せ。


PlayRoom — by Tija

夕焼けが一望できる贅沢な屋根裏部屋。ペット用のカゴなどもあり、小さな動物になった気分に。梯子を上った先に小さなベッドがあるのも、またキュンとしてしまう。


やねうら-YANEURA — by HANI․

大切にされてきた沢山のモノたちが、ここで静かに時を待っている。この空間が過ごしてきた時間を胸いっぱいに吸い込むと、なんとも言えない懐かしさだ。


子供の頃に夢見た、
秘密の空間を共有できるとワクワクする。


海底の秘密部屋-The Underwater Secret Room

ゆらめく、波の光と影。家具や照明の可愛らしいデザインと、ワールドのダークで美しい雰囲気のギャップがたまらない。このワールドで、小さなころ計画した秘密基地の話で盛り上がりたい。


雨が降っているときに話したいことって何だろう。

雨が降るワールドに来ると、なぜだかうきうきする。
「雨だし今日は家でのんびりする日だね」みたいな共通認識が生まれて、いつもよりゆっくりとした時間を過ごせる気がするのだ。

White Silence — by Sumeru

海の真ん中にぽつんと存在する、少し寂し気な白い部屋。ガラスに伝う雨粒があまりにもリアルで、ずっと眺めていたくなる。むしろ、何も話さなくても良いと思えるような、そんなゆっくりとした時間が流れている。


Storm Day — by Fins

雷が鳴り響く外の様子を見ながら、空間が持つ安心感にまどろむ。人の存在を感じながら、のんびりと過ごすことができる。このワールドも、窓に打ち付けられる雨粒の描写が素晴らしく、眺め続けてしまう。


乗り物という空間で生まれる会話が面白い

小さな空間といえば、乗り物も当てはまるのではないかなと思う。
目で景色を追いながら、なんてことのない話をするのが好きだ。

DrivingCity at Night — by amesake

運転していると、いつもは話さないようなことを話していることに気がつく。対面しているとき、横並びのとき、鏡を見ながら話しているとき。たぶん会話の内容も少しずつ変わっている。

Moscow Trip 2002-Night Tram (v 5․0) — by DrMorro

小さなワールド、とは言えないかもしれないが、電車で移動を共にしている感覚も良い。ここは雪の降るモスクワの路面電車。年季の入った電車の窓越しに街の様子を眺めると、本当に旅行しているみたい。今までに行ったことのある国の話とか、してみたい。


The Stack — by Mochie

地下から上に登っていくと開放感のある美しい部屋が。窓の外を見ると・・・?(是非行ってみてください!)


懐かしい思い出を共有できるのは嬉しい。

Japan one room — by Ende

畳と蚊取り線香の香り漂う、日本の四畳半。ブラウン管のテレビを囲みながら、みんなでのんびりできるなんて!昔どんなテレビ番組見てた?なんて話しながらポテチギミックを頬張った日、たまらなく楽しかった。


とことんシンプルな潔さが好きだ。

_AfterDark˸B0․S․2 — by をたぱち

蛍光灯、剝き出しの配管や配線、そして動画プレイヤー。使われなくなったテレビたち。とことんストイックに会話できそうだ。一人でぼーっとするのにもおすすめ。この暗さとディテール、いつまでも居たくなってしまう。


Capsule — by Mochie

窓からは地球が見える。ということは、地球から近いどこかの星の建物なのだろうか。それともISSのような場所なのだろうか。宇宙に浮かぶ、シンプルで小さな部屋。いつか実際に訪れる場所かもしれない。


2x2x2m — by SUNAO

2m四方の小さなワールド。ミラーがあるのでそんなに窮屈に感じないし、無性に落ち着く。なんとキャパシティが40名(!)だとか。


自然に囲まれた小さな空間で生まれる会話


Winter Solace — by Temporal

森の中に現れた四角い空間。花やきのこが生えているから、この中だけはきっと暖かい。ベンチに座りながら、何人かでただぼーっとするのも楽しそう。


ENJOYǃ Campfire — by m1chie

訪れるたびに、話が盛り上がってつい長居してしまう。どうして人は焚火を見るとつい話しすぎてしまうんだろうな。焚火を起こすところからの共同作業ができるのも素晴らしいワールド。

まだまだ好きな場所はたくさんあるけれど、長くなってしまうのでこのあたりでやめておこう。


おわりに


それにしたってこの世界での会話は本当に難しいよな、と思う。いくらワールドの素敵な雰囲気を借りたとしてもだ。

なんせ、自分が話している相手の顔も名前も年齢もわからない。分かるのは、アバターの姿と、ハンドルネームと、場合によって声、だけ。

生まれ持った肉体を脱いで、自ら選んだ見た目を自分の「中身」に装着し、別の「中身」と意思疎通をする。

未だに、本当に不思議なことだと思う。

100人いれば100通りの「在り方」があるから、自分の薄っぺらな知識で、目の前にいる人をつまらない型に当てはめて見てしまっていませんように、と願うような気持ちで、少しずつ、少しずつ、その人のことを知っていく。

これが本当に難しい。
だけど面白くてたまらないのだ。

だから今日も悩みながら話をする。
できれば、小さくて、すこし暗くて、静かなワールドで。

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