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音声配信の新潮流、ポッドキャスト vs 独自プラットフォーム の構図が見えてきた

10月22日、stand.fmが、大手ユーチューバー事務所UUUMの音声配信プラットフォーム REC.を事業譲り受けした、発表しました。

これに反応して、音声広告業界の八木さんも反応してました。オトナルさんは音声広告配信大手です。

今回の事業譲渡が意味することは、世界的圧倒的シェアをもつポッドキャスト勢に対し、国内独自プラットフォーム勢が、ガチンコするぞという意思表明といえるかと思います。

実際、stand.fmに出資していますZベンチャーの堀さんは、こうツイートしています。

ちなみに堀さんなどZベンチャーさんの音声配信はstand.fmで聴けます。

日本の音声市場の課題

じつは、世界的に見ますと音声市場はポッドキャストが大きくシェアを締めています。ポッドキャストというテクノロジーに、音声広告やアプリやアグリゲーションサービスなどが、一大市場を築いています。

もちろん国内でも、ポッドキャストがブームになることは何度かありました。コロナ渦のころも第3次ポッドキャストブームとよばれるようなムーブメントもたしかにありました。ライフハック界隈で、Anchorというポッドキャスト配信アプリが流行った頃ですね。

ただ、それでも急激にシェアを伸ばすことはありませんでした。それはポッドキャストという、技術のわかりにくさが影響しています。

iPhoneを買えば標準でアップルポッドキャストというアプリが入っていてすぐにポッドキャストを聴くことができます。しかし、Androidではそういう標準的なアプリはありません。また、iPhoneユーザーであっても、そのアプリの存在を知らない人も多くいたはずです。ポッドキャストというのはテクノロジーの総称であって、YouTubeやInstagramのように、なにか特定のアプリを指し示すものでなかったゆえに、人に勧めづらい、という弊害があったのです。

独自プラットフォームの底力

そこを、他のプラットフォーム勢は粘り強くついてきました。

Spoonという韓国産音声配信アプリはライブに特化し、投げ銭が毎夜何十万円と飛び交う市場を作り上げました。Voicyは、有名人のプレミアムな配信というブランドを築きました。また、あまり指摘する人は多くないですが、じつはYouTubeで人気ジャンルのVTuberも、その多くはトーク配信であり、音声市場に食い込んでいる勢力なのです。そういう点では、ツイキャスのラジオ配信もじつはポッドキャスト勢にとっては競合なのです。

こうして、日本の音声市場のカオスぶりは、コロナ渦で加速し、今回のUUUMのREC.アプリ登場にまで至ることになります。

REC.は最後発ながら、声優学校と提携したり、はじめしゃちょーや東海オンエアなど人気ユーチューバーを招聘することで、また、圧倒的な開発スピードでアップデートを頻繁に行い、サブカル的なリスナーを徐々に取り込んでいきました。おそらく開発スピードは他のどの音声アプリよりも早かったです。AndroidもiPhoneも、そしてPCブラウザでのクロスプラットフォームを実現しているのは、おそらくSpoon以外ではREC.だけだと思います(もちろん戦略上PCは非対応というのあるでしょうけども)。

その、REC.の親会社のUUUMも、最近は風向きが怪しくなってきました。

コロナ渦で得意のイベント系が厳しくなってきたこと、ユーチューバーの退所意識が広がってきたこと、そしてユーチューブ以外の新たな一手が育っていないことなどが、嫌気されていました。

そのさなかに、社長のスキャンダルが報じられ、大きな収益となっていないであろう音声配信への風当たりが強くなっていたことは想像にかたくありません。

実際、REC.の公式noteは今年の夏くらいからまったく更新がされていませんでした。

ポッドキャストも世界的なものではない

じつは、そのポッドキャストも世界的なムーブメントかというとそうではありません。

ポッドキャスト検索エンジン大手のListenNoteが発表しています統計データでは、配信のそのほとんどは米国なのです。

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音声配信市場に関する多くのデータが、メディアをにぎわせることがありますが、それも米国に限った話といっても過言ではないわけです。実際、日本では、前述しましたように、独自プラットフォームがカオスな状態であっても、それぞれでまわっていることは事実なのですから。

ですから、今回stand.fmがREC.を事業引受したことにより、想像できる未来は、以下です。

LINE vs ポッドキャスト勢

ZベンチャーはLINEなど、ヤフー方面の勢力です。そこには、大きな広告市場が待っています。

そして、現在、LINEアプリに音声配信のアプリはありません。

今後、stand.fmがZベンチャーの期待にこたえるられ続ければ、LINEアプリと合流し、ヤフーからの音声広告を実装し、ポッドキャスト勢と二大勢力になりえる可能性があると思いました。Yahoo!やLINEは、日本の広告市場ではその存在感を疑う人はいないと思います。

国内独自プラットフォーム勢も、現状ではマネタイズは、投げ銭手数料などがほとんどであり、広告ほどクリティカルな一手は出せていない現状です。その多くは、現状まだ赤字でもよい判断している時期かと思います。実際、官報をみますと、VoicyもRadiotalkも赤字を連続しています。

ただ、今回のことで、勢力が、独自プラットフォームvsポッドキャスト勢とシンプルになれば、広告出稿側も安心してプランニングできる未来が見えてくるのではないでしょうか。音声広告は独自のノウハウがあり、当然効果が出せるようになるには数年はかかるはずですし、そうなるためには市場がある程度は安定しなければ不安でしかたないでしょう。

シナジーがある事業引受とまだあるウルトラC

さて、今回の事業引受は双方にシナジーがある良手でした。

stand.fmは、白背景でスタイリッシュなテイストのアプリで、比較的意識高い系のキラキラした人たちや、そこに惹かれるリスナーが多いプラットフォームでした。

いっぽう、REC.は声優事務所と提携したり人気ユーチューバーを招聘したりと、比較的低年齢層・サブカル的なカルチャーがありました。しかし、ライブ配信機能を実装していませんでした。

しかし、stand.fmではライブ配信があり、比較的機能しています。日々、時間制限のないライブはにぎわっています(対するRadiotalkはライブが基本30分制限)。

ですから、今後うまい具合に、双方が機能していけば、配信者・リスナーともにメリットがある気がします。ただ、1つにアプリに統合となりますと、さすがにこれだけカルチャーが違いますので、無理があります。下手をすると、REC.ユーザーやリスナーは、Radiotalkへ移ってしまう可能性があります。カルチャーとしては、Radiotalkのほうが、デザインも含め、REC.に合っているからです。そこは、stand.fmの手腕に注目が集まることでしょう。

収益化機能実装、himalaya 配信者受け入れ、有料チャンネル機能開放、そして今回のREC.事業引受と、着々と進化をとげるstand.fm。

そして、わたしが思うにまだ、ウルトラCはあります。ポッドキャスト受け入れ、です。

ポッドキャストはその技術から、RSS配信をし多くのアプリに同時配信が可能なのです。ですから、ポッドキャスト番組をstand.fmで配信(RSS受信)することも可能なのです。ですから、stand.fmがRSS受信を実装してしまえば、stand.fmリスナーはより多くの番組を聴けますし、ポッドキャスト配信者はstand.fmという新規のリスナーを獲得できるチャンスが広がります。そして、Spotifyでさえライブ機能をデフォルトでは実装できていません(グリーンルームという近いものはありますが)。しかし、stand.fmではライブ機能はかなり優秀に機能しています。

そう思うと、じつは伸びしろがあるのは独自プラットフォームです。ポッドキャストは世界市場という安定感こそありますが、ライブや投げ銭など、アプリ内での対流や滞在をさせづらいデメリットがあります。とくに音声配信は一度聴きはじめてしまえば画面を見ることは少ないですが、ライブであれば画面を見続けます。そこでレコメンドや広告も理論的には可能です。

AppleもGoogleもポッドキャストに何年もテコ入れはしていますが、それでも現状のとおりです。それくらいポッドキャストというテクノジーは汎用的すぎて、広告という裾野を広げるしかないとも言えます。とはいえ、今回の動きでRadiotalkやAnchor Japan、地上波ラジオなど、ポッドキャスト勢も打ち手を加速せざるをえなくなってきました。

今回のstand.fmの一手で、いよいよ音声配信業界で、大きな変化が生まれそうです。毎年のように、音声配信元年といわれつづけた音声界隈ですが、はたして。

さて、隔週でわたしはソルティさんとコラボして、音声配信業界のニュースまとめをstand.fmで配信しています(普段はポッドキャスト配信)。よろしければ私の番組をフォローしていただけますと、メディアの最新ニュースを入手できます。ぜひ。

#ポッドキャスト #Podcast #standfm #音声配信 #音声広告

この記事は吉田喜彦個人が書いています。