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好きな漫画を紹介するスレ #2 「ファイアパンチ」

マイナー気味な漫画を紹介し続けても説得力が薄れるので話題になった作品も薦めておく。ファイアパンチに関して伝えたいことは一点だ。


全巻一気に読め


これに尽きる。以下はネタバレも混じる可能性があるので少しでも読みたい人はもう、すぐ買って読んでくれ。俺の駄文なんか読むな。

チェンソーマンで跳ねた藤本タツキの作品。この作者は展開のぶっ飛ばし方やイっちゃってるようでぶっとい芯があるキャラクター達などが持ち味だが、なかでも特に言語センスが素晴らしい。そんな言葉回しどんな思考回路で生まれ落ちたのだろうかと痺れさせられる。もちろんチェンソーマンも面白い。

何故、ファイアパンチを一気に読めって言ってるかというと、この作品の場合、一気に読んだ方が圧倒的に作者が書きたかったものが見えるからだ。この作品は当時あまりにも鮮烈な1話目によりバズりにバズった。なんなら数年後にTwitterに1話公開された時もバズり倒した。んで結構な人がダークヒーロー物だと思った。俺も思った。ところが全然違う展開になっていく。

ネタが尽きた、とか。1話目がクライマックス、とか。期待からどんどん外れていく、とか。散々言われたし、俺自身も週刊誌と違ってサイトを見る習慣がついてなく読み逃してしまって、単行本になって気が向いたら読もう。くらいに思っていた。

んで一昨年くらいに一気に読んだんだが、そういう話だったのか!!!と脳みそがスパークした。それでも賛否両論あるようだが、個人的にはすごい傑作だと思う。読んだ人はわかると思うが、この作品は場面転換がめちゃくちゃ激しい。ファイアパンチは度々意識が飛んでしまうのだが、それを味わうかの如く、瞼を閉じて開いたら別の世界、というような展開をする。

※ここからは個人の妄想と興奮が入り乱れた言説なので話半分で読んで欲しい。

切り替わる展開のどの瞬間から読み始めても、この作品は成立する。わかりやすく言うと最終話が第1話で、第1話が最終話でも成立すると思う。こういう話の形をとるものとして「神話」がある。神話は同じ登場人物が登場することもあるが、それぞれが独立しており、概ね順番に沿って読むものではなく、少しずつ関係性が見えてくるものだ。

この作品は「ファイアパンチ」という存在の神話なのだ。作中でもファイアパンチが神と崇められるシーンもある。ファイアパンチ自身が描いてあることから、ファイアパンチを主人公である。として読んでしまうが、そうではない。「ファイアパンチ」が関わってしまった、「ファイアパンチ」に関わってしまった人々の物語なのだ。ある意味で全員が主人公とも言える。神話では神はその時々によって、顔を変える。時に冷酷であり、厳格であり、怠惰であり、愛深くあり、超常的だ。

「ファイアパンチ」もまたシーンによって表情が変わる。求められるものが変わることもあればファイアパンチ自身がどうしようもなく変わってしまう場面もある。そういう作品なのだ。そしてラスト、全ては泡沫の夢であったかのように終わる。いや終わりではない、上記で書いたように作品は、最終話から違うシーンに展開されても良い。結末はこうだというだけ。別にあの後、違う「ファイアパンチ」が関わった話が続いても不思議はなんらない。と俺には読めた。

という訳なので、この繋がりを理解するには一気に読むのがベストだ。その時にしか見えないものが絶対にある。作品にはベストな形というものがあると俺は思っている。一人静かに読む。カフェで読む。眠れない夜に読む。傷心の中で読む。週刊誌で読む。一気に読む。意識しないうちに、場所も状況も方法も、様々な形で読後感に影響を与える。なにがベストかも人による。だからおもしれぇんだなぁ。みつを。

その一つとしてファイアパンチに関しては「一気に読む」。俺はこれを薦める。



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