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きみは、空を渡り地に響く、おおきなものになりたかった【ゲーム感想文】

クソおもろ大賞2024受賞

こちらでダウンロードできるフリーゲームだ。

純粋にただただオススメしたくて書いている。個人的に刺さりに刺さった。なによりタイトルが良い。
ちょっとでもタイトルで良いなって思った人は是非やって欲しい。そのタイトル良いなって思ったときの感情をちゃんと超えてくれる。私は超えられた。

ゲームとして遊びがめちゃくちゃ面白い訳ではない。
本作はWOLFエディターを使って作られた言ってしまえばシンプルなゲームではある。ただレベルデザインはよく練られておりテンポは良い。種族ごとに合わせて選ばれたBGMも良かった。ゲームで遊ぶというより小説を読む感覚に近い。私は7時間ほどでクリアした。ただ私はこういうゲーム形式で能動的に求めてこそ得られる物語性というものが大好物なのと、コツコツ数字を積み上げるタイプのクリッカー的なゲームが定期的に遊びたくなる人なので、完璧にハマった。そしてそのプレイ中に読める全てのテキストが良い。

もうとにかくテキストが良い。

主人公は一スライムとして生を受け、転生を繰り返しながら少しずつ「おおきなもの」を目指すのだがその過程で新しい存在になるたびに、獣の神殿にいる「モンスターめがみさま」と話すことで物語の全容が少しずつ見えていく。それがね、もうとにかく良い。アイテムのテキストも良い。絶妙な可愛らしさと可笑しさと真面目さが良いバランスで入り混じっている。モンスターめがみさまのテキストは短めでセンスが光る場合もあれば普通に読み応えがある場合もある。総量で考えると結構なテキスト量だ。読みながらこの人プロじゃないの?まじ???と驚き通しだった。

ここから先はネタバレしたくないので黙秘しておくために最低限のテキストとしてもう一回言うがまずタイトルが良い。「空を渡り地に響く」たったこの八文字で表す壮大な表現が素晴らしい。空を渡っているので空中にいるにも関わらず地に響くのである、どんだけ強大な存在やねん。ジャンボジェットかよ。そして「おおきなもの」という曖昧さ、これが今現在の自分の無垢で取るに足らない存在である「ちいささ」をとてもとてもよく表している。素晴らしい。そしてこの名付けは偶然生まれた一文なんかじゃ全くない。ずっと味わえる。クリアしたあと私は拍手した。素晴らしい作品に出会えて良かったと感動した。

この作品Steam版とか出せばちゃんと売れると思う。最近はSteamには元フリーゲーム達が並んでいるので問題ないだろうし全然遜色ない。

フリーゲームで名作と言われているもので遊んだ作品は「Ib」とか「デンシャ」とか「愛と勇気とかしわもち」くらいだったがしばらく漁りたくなった。名作って言われているもの、いっぱいあるもんな。世界ってすごい。全然知らない場所に自分に突き刺さるものがある。生きているとたまにそう思える作品に出会うが、私にとってこの作品もその一つになった。忘れることは無いと思う。


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