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良くない授業なのに最高の結果が出る秘密

9月下旬、福岡県田川市立金川小学校で授業をしてきました。この授業が私にとってはまたしても衝撃的なものになりました。というのは、自分としてはいい授業にできなかったと残念に思っていたら、後日教頭先生から素晴らしい結果が出ましたとわざわざ電話されてきたのです。

「あの授業の後、もう1時間担任が授業をしてすぐテストをしたのですが、多くの子どもが百点で、平均点が94点だったのです。しかも普段は特別支援学級に行ってる子もあの授業に参加し、初めてみんなとテストを受け60点でした。でも、それを入れての94点です。授業中、先生が心配されてた遅れがちなふたりの子ども、あの子たちは百点と95点でした。陰山先生の授業に触発された若い先生が、採点に立ち合い、その効果に驚いて早速自分なりに陰山先生のまねをし始めています。」

その電話に私は愕然としました。思いと違い結果が悪いと当然人は愕然となりますが、良い結果でも愕然とするのですね。

この授業は6年生の「比とその利用」でした。田川市は市内一斉に陰山式で指導をしてます。そこで今回の授業は私が提起している集中速習で、教科書十時間分くらいあるこの単元を1時間で指導してしまうというものでした。

この6年生は百ます計算はほとんどの子どもが2分を切っていると聞いていたので、私としては、どこまでついてこれるかどうかを確かめる意味もあり、最高にペースを上げようと企画しました。

1時間で一単元終える基本は、最終問題をいきなりやらせることです。最終問題には学習すべきポイントが網羅されているからです。ただ比の学習の場合、比というものを子どもは知りません。ですからそれを確認してから最終問題をノーヒントでやらせます。子どもが全力で取り組むようにするためです。そしてできた子どもを中心に議論させ、課題とその解決方法を共有し、習得させていきました。

ところがこの単元の場合、全体像を習得させても、それに加えて比の項を求めたり、小数や分数の比を単純化したりという細かい技能を習得させないといけません。しかし時間の関係で、しどうはしましたが、そこが十分に習得できたか確認する余裕がないまま急いで指導をしました。ここに悔いが残ったのです。また、当初から予定してたこととはいえ、比例配分の文章題など一部課題が残りました。

そして翌日、残ったわずかな問題と先日の不十分なところのおさえを担任の先生が行い、翌日すぐにテストをしたら平均が94点になっていたというのです。通常のテスト結果を聞いてみると、普段はよくて80点半ばとのことですから、突出して高い結果です。

ではこうしたことが実現できた理由は何でしょう。

最大の理由は私が作ったドリル「たったこれだけプリント」による予習です。田川市はコロナ禍対策として、市内全児童にたったこれだけプリントが配られています。そして休校期間中に子どもたちはこれを使い予習を字学習で進めていたのです。

次の理由。この学級では百ます計算で3分を超えるこどもはいません。この基礎力がないと、このように1時間で一単元習得するのは困難です。この日常の基礎力強化は重要です。

次は推測ですが、この授業の最後に私は「君たちはどこに出ても恥ずかしくない基礎力を身につけている。高い理想を持つことが重要だ。」と言ったことが子どもの意欲を喚起したことも大きいようです。よく根拠なく、「夢を持て」と子どもに語る人がいますが、子どもの側にそれを実感させる経験がないと子どもの心に落ちないことがあります。しかし、わずかを残したとはいえ、一単元を高速に終えることは、子どもが全力で課題に取り組んだ証です。すごく力になったと校長先生からも評価してもらいました。

予習、基礎力、意欲喚起。こうしたことが重層化して蓄積されることがこうした奇跡のような授業につながるのでしょう。





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