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神がかってきた金川小学校の集中速習

秋の陰山メソッド研究全国協議会のオンライン研修で、福岡県田川市立金川小学校の集中速習が加藤教頭先生より報告されました。そしてその内容に、私は圧倒されていました。すごい。いよいよ神がかってきた。それが私の評価です。

というのも、私の提起である3倍速の提案に対し、何と現在の授業は5倍速と言われるのです。教科書5時間分とされるものなら1時間、10時間分とされるものなら2時間というペースになっているというのです。そして現在10月下旬ですが、いくつかの学年では、2学期分のまとめに入っているそうです。しかも成績は爆上がり状態。今年はコロナ禍により、5月末まで田川市も休校状態でした。しかも8月は普通に夏休みでした。それを考えると、驚異的なんてものではなく、現実にはあり得ない、理解を越えたレベルで、私はそれを神がかりとしか表す言葉を知りません。


市教委は今年度金川小学校を研究指定校とし、私が何回か指導に入ることとしました。つまり金川小学校で集中速習を展開することが提起されたのです。

しかしその集中速習の授業を展開するためには、百ます三算は2分以内、漢字の習熟率8割以上が必要です。9月の私の師範授業前にそれを達成しておいてもらうことがを私から条件として出させてもらいました。それ自体でも高いハードルです。無謀にも思えましたが、そこには理由がありました。

田川市は市内一斉に陰山メソッドを導入していますが、昨年度は近くの鎮西小学校が読み書き計算の力を半年で爆上げし、一気にトップクラスになっていたからです。私もこんな爆上げは見たことがなく、仕掛けたはずの私が理解できない、神がかった指導になっていたのです。それが念頭にあり、できるのではないかと思っていたのです。

ただここで私は自分が予想も経験もしたことのない展開を経験します。

私は、短期間に劇的に伸びた子どもの基礎力を探る意味で、最高に速い授業を提案しました。6年生の「比とその利用」という単元を1時間で指導するというものです。無謀なことです。でもその理由は短期間に伸びた子どもの基礎力がどれほどの効果をもたらすものか、そういう実験をしようとしたのです。ですから、もともといい授業にはならないと覚悟していたのです。

そして実際に指導してみると、やはり一単元一気に終わるには、時間は足りませんでした。いくつかの問題において、時間が足らず、子どもが十分理解できてないまま、次の課題に行かざるをえなかったのです。それで自分の授業として評価は65点。特に遅れがちな子が二人いて、その子を指導しきることができませんでした。

三日後、教頭先生から電話がありました。しかしその内容は信じられないものでした。というのも翌日に1時間足りないところを担任が補い、その翌日にテストをすると、かつてとったことのない学級平均94点という結果になったというのです。そして「陰山先生が気にされていた二人の遅れがちな子は100点と95点でした。」あり得ない、信じられない報告でした。

その後、私は記録されてた授業動画を見ましたが、確かに当初、分かってなかったはずの子どもが授業の後半に周りの子に教えるような場面があり、伸びているのが確認できました。その時にはわからなかったのですが、時間内に子どもたちは伸びていたのです。

そしてこの流れから、もうひとつ大きな変化が起きてきました。集中速習の自主的な研究が独自に高まってきているそうです。教科書をそのままに教える授業から、どこまで子どもを伸ばせるかというように先生の動きがまったく変わってきたそうです。

またその動きはまた子どもに返ります。本来勉強の苦手だった子どもが自分の可能性に目覚め、好成績となっているそうです。さらに学校のさまざまな作業もあっという間に終えるよう、子どもがすべてにわたって、自分たちから動くように変わってきたそうです。

そうした事実はこれまで各地でも確認されていたことなので、以前それを私は説明していました。しかし、経験したことのない先生方は、それが新鮮で、私の説明が予言に思えているそうです。そしてそれが研修意欲になっているそうです。とてもうれしいことです。

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ただここまでよくなった理由には、ひとつ今までなかった新ネタがあります。「たったこれだけプリント」による予習です。基礎力がつくと予習が可能になります。しかしこれまで予習にふさわしい教材がありませんでした。実は「たったこれだけプリント」は予習には絶好の教材でした。そこで田川市からコロナ禍に対する学力対策の相談を受けたとき、「たったこれだけプリント」を持たせてはどうかと提案をしたのです。そのことにより予習を推進し、授業の高速化、つまり集中速習を提起したのです。

そしてその提案は、地域にも受け入れられ、公費で子どもたち全員に配布されたのです。

ただ集中速習は、低下対策であって、まさかここまでの向上が起きてくることは予想していませんでした。やはり学校はすごいです。

集中速習。それは私が担任時代こっそりやって授業方法を標準化したものです。なぜこっそりか?それは何時間分の授業を1時間で終えるのは、非常識な指導だからです。学校文化にはゆっくりていねいな指導こそ素晴らしいという価値観があります。しかし、集中速習はそれを完全に否定する授業だからです。

ただ私は思っていました。ゆっくりていねいな授業は、子どもが集中できず、受け身にしてしまう最悪の授業だと。本当に子どもが伸びるのは基礎力をつけた上で展開される高速な授業です。

しかし、それは言えません。百ます計算のタイムを計っただけで、子どもを傷つける、考えられない子どもにすると、口汚く批判する教師や学者が多いからです。そのため、無駄な批判を受けないよう、封印してきたのです。しかし皮肉なことに、このコロナ禍という非常事態が、市内の学校すべてがその方向に動くことを可能にしました。

現在、田川市内においては全学級が授業の高速化を模索しています。もちろん突然始まってうまく行ってないところもあるでしょう。しかしそうした中でも、年末までにほとんど学級の算数は、3月分まで終えます

最終的には、冬休みからの総復習で総仕上げをします。そして2月には独自の学力調査を行います。そこでは全国を上回るのではなく、全国トップを狙う気持ちで、田川市の教育委員会や先生方と共に取り組んでいきたいと思っています。



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