SEMICON Japan 2023 メモ(2日目)

全体の雑感
・とにかく人が多い。昼の13時半ですら飯屋に長蛇の列。飯はコンビニで済ませた方がマシだった。
・海外からの来場者が例年より多い。特に中台韓勢が多い。出展企業は去年の方が中国多かったように感じたが、今年はWinWayやGudeng、C Sunのような台湾勢が目立っていたように感じた。
・APCSブースが去年より広い。去年は想像していたよりも規模小さかったが、今年はディスコが2ブース展開を再開していたり、アオイ電子やめっき薬品メーカーに人が多く立ち寄るなど去年以上の盛り上がりを感じた。ただ去年と同様の展示物も多く、事前に回るところを決めておくと良かったのかもしれない。

2016年から参加続けているSEMICON Japanも今年で8回目の参加となる。去年はSiCやGaNといった化合物系のダイシングやポリッシングの展示や紹介が目立った印象だったが、今回はGlass Core Substrate、Direct Imaging、その他Advanced Packagingに注目しながら回りたいと考えていた。2日目に回った一部会社の簡単なメモをここに記しておきたい。

AGC
・展示物:微細孔付きガラス基板
・URL:https://www.agc.com/products/electoric/detail/tgv.html
(メモ)
APCSブースで展示。PKG3D実装用回路基板向け微細孔付きガラス基板(TGV)のパネル展示。ガラス基板は今年の5月にIntelがAdvanced Packaging説明会にてガラス基板について言及。Intelは「ガラスは剛性に優れ、熱膨張率が低く、膨張や変形も少ないため、有機基板よりも優れている。また、こうした特性から、ピッチを狭めるなどのスケーリングにおいても有利」と説明
(参照:https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2309/05/news120.html)。

更に9月のIntel Innovation 2023でもガラスコア基板開発状況の詳細説明があった。詳細な内容については大原さんの記事で確認(参照:https://news.mynavi.jp/techplus/article/20230918-2774142/)

ガラス基板採用のメリットは圧倒的に平坦性。高温耐性等の強みはそこまで注目しておらず、基本的に平坦性に着目されていた。理由は従来の基板だと歪むため。ガラスは歪みに強い。これに関しては後述するDNPも同じ解釈だった。ただし現状製造コストが上がるため、採用できるデバイスはAI絡みなど末端単価の高いものに限るとのこと。

大日本印刷
・展示物:EUVフォトマスク、NILテンプレート、次世代PKG用インターポーザ、TGVガラスコア基板など
・URL:https://www.dnp.co.jp/news/detail/20170085_1587.html

(メモ)
EUVフォトマスクは大手3社については自社内製であり、かつEUV採用製品生産実績もその3社が多く占めており、ターゲットは主に某北海道のメーカーやメモリなどこれからEUVを採用する可能性のあるメーカー。ただしその3社についても営業するとのこと。ペリクル付のものについては、ペリクルは他社製で、それをDNPのEUVフォトマスクとセットにしてリリースするとのこと。
NILテンプレートについて、同社はキオクシアなど3D-NAND向けに長く深く関与しており、キヤノンと手を組んでおりキヤノン側にも展示あり。NILは複雑な光学系装置が入らない点でメリットがあるが、マスク(型)に欠陥やパーティクル付着があれば全てのチップに同様の欠陥が生じてしまう点(ハンコと同様の原理であるため)や、スループットの問題、歪み抑制の点でまだ改良すべき課題も。実際の需要については…というところだが、某露光装置メーカーの会長がお騒がせ発言したこともあったとはいえ、会長がコメントする程力を入れており以前に比べて感触あるとのこと。
TGVガラスコア基板は今回のDNPの展示物の中でもEUVフォトマスクと同様人が多かった展示だった。説明内容についてはAGCとほぼ同様の内容ではあったが、同社はViaに銅を充填する充填タイプに加え、ConformalタイプやCu Bridgeタイプも展開。大面積FCBGAの貫通電極形成やChiplet向けを想定。感触も良く、今後のニーズにも合致した製品で同社も自信を見せていた。各展示パネルは上記URLから確認可能

TOWA
展示物:2.5D/3D/Chiplet向けWLP/PLP用コンプレッションモールディング等
URL:https://www.towajapan.co.jp/jp/semiconjapan2023/
(メモ)
意外にも展示物の写真撮影は許可されたが、パネル展示については許可が下りず。逆のパターンはよくあるが、パネルを撮影できなかったのは残念。AI向けモールディング技術展示が今回の目玉。HBMの封止にCPMシリーズのCPM1080を使用。その後COW実装した後にCOW封止。こちらでもCPM1080を使用。COW個片化ではFMSシリーズのFMS3040-FCが紹介されていた。その後OS実装封止ではYPM1250-EPQを使用。こちらは今年9月に製品化した新しいモールディング装置。Chiplet対応した業界初の製品で会社側も自信あり。シンギュレーション技術紹介ではいつもと同じでブレード展示や個片カット技術の紹介。

キヤノン
展示物:NIL装置「FPA-1200NZ2C」、後工程露光装置「FPA-5520iV LF2オプション」等
URL:https://global.canon/ja/news/2023/20231129.html
(メモ)
今年もAPCSにブースを構えた。今年はNIL装置の新製品や前年発売した後工程向けステッパーのパネル展示がメイン。NILに関してはDNPで粗方説明受けていたため軽く流したため今回は後工程向け露光装置の情報をアップデートする目的で来訪。特にPLPに関しては1回の露光では全てを照射できないため、4分割して露光することになるが、分割した境界が歪みの影響を受けてしまい、その歪みが不良の原因になる。キヤノンは自社でレンズ開発を手がけていることから開発技術を応用しその歪みを最小限にすることを可能にしている。こちらの製品についてはこの1年問い合わせも多く、ニーズをくみ取れているとのこと。前年も来訪していることもあり他の展示物は時間の都合上割愛して切り上げた。なお後工程露光についてのキヤノンの記事は各所にあるため要確認。
(参照:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02398/00008/)

余談だが戴いたノベルティグッズはボールペンとFPA-5520iVに模したメモ帳とクリアファイルだった。

住友ベークライト
展示物:3DPKGソリューション
URL:https://www.sumibe.co.jp/exhibition/2023/1121_01/index.html
(メモ)
封止樹脂「スミコン」及び感光性樹脂「スミレジン」のパネル展示が行われていた。どの製品も注目度高い。顆粒状エポキシ封止材(顆粒剤スミコン EME Version GR)はWLP向けに低反り化技術、小粒径フィラー開発による狭GAP充填性に特徴。特に充填性については封止材には球状シリカが使われており(SiO2フィラー)、これのより高い流動性が求められている現状があり、小粒径フィラー開発に伴いこの課題に応えた。このフィラーについては顧客毎、またPKG毎にカスタマイズすることが可能。Filler max size<3umについては鋭意開発中。

オーク製作所
展示物:ダイレクト露光装置GDi-MPv2、開発品ダイレクト露光装置SDiなど
URL:https://www.orc.co.jp/info/ja/news-release/news_co3/news-release-20231205.html
(メモ)
同社は上場していないが、後工程露光装置メーカーで、特にダイレクト露光装置に強みがあり、次世代PKGコンソーシアムであるJOINT2にも参画している非上場の中でも重要なポジションにいる企業のうちの1社(と勝手に思っている)。今回話を聞いたのはダイレクト露光装置、特に開発品であるダイレクト露光装置SDiについて。ダイレクト露光はマスクレスであることが最大の強みであり、年々コスト要因としてマスク製造は無視できないものとなっており、マスク製造工程が無くなることでコスト削減を実現できるもの。その最新型が現在開発続けているSDiである。これはインターポーザで要求される線幅2μm以下の解像性を実現するもので、NEDOに22年に採択されたプロジェクト「三次元積層関連の革新的な後工程用露光装置の研究開発」のもと、開発を進めている。特に露光精度L/Sが2μm以下のダイレクト露光装置を求められていたこともJOINT2参画の理由にあげていた。ただし話を聞く限り実用化にはまだ遠くやはり光源周りに課題が山積みとのこと。当初のスケジューリング的には24年3月までに2μm実験機開発、P2である量産試作機1.2μm開発を25年3-9月までを予定している。

SCREEN HD
展示物:次世代パターン用直接描画露光装置LV-6000、Lediaシリーズ
URL:https://www.screen.co.jp/pe/experiences/ja/index.html
(メモ)
こちらも後工程ブースではダイレクト露光装置のパネル展示を行っていた。LeVinaシリーズのLV-6000は業界最高水準の2μm高解像度描画が特徴で、今後ファイン化が進む先端PKGパターニングに対応。また従来機や他社機に比べスループットも向上しており、L/S=5/5μmの解像度で毎時100枚の生産を開発段階で達成している。LDを用いておりランニングコストも1/3実現。LediaシリーズのLedia 7FはFC-CSPはじめ様々なPKG基板に対応できる汎用性の高い装置。ちなみにL/S=10μmであり、LV-6000に比べると解像度という点では劣るが、大サイズへの要求にも対応しており32インチサイズまで対応したモデルもラインナップしている。大判材料向け用途はこちらを選択。光源はLDではなくUV-LEDを使用

ウシオ電機
展示物:UX-5/UX-4、INPREX
URL:
(メモ)
UXシリーズ及び子会社アドテックエンジニアリング社のダイレクト露光装置のパネル展示が行われていた。UXシリーズは後工程向け露光装置であり、分割投影露光装置UX-5がPKG用途、投影露光装置UX-4がパワーデバイスやMEMS用途に分かれている。UX-5は歪みが生じやすい基板に対し、歪みに追従した自動変倍が備わっており有機基板特有の課題をクリア。
アドテック社のダイレクト露光装置INPREXは反りやうねりによる高さへ蜷やビルドアップ走の凹凸に対応するオートフォーカス機能を露光ヘッド毎に搭載していることが特徴。更にアライメントリトライ機能もあり生産性向上に繋がっている。
なお、先日発表があったAMATとの戦略的パートナーシップ契約(参照:https://www.ushio.co.jp/jp/news/1002/2023-2023/501155.html)についてだが、こちらは現地で質問する際、別の方が窓口となっておりそこで話が聞ける。開示以上の内容についてはほぼ回答がなかったが、新しいDLT装置は量産レベルのスループットを実現しつつ線幅2μm以下のパターニングに対応可能で、ガラスや有機材料大型パネル、あらゆる基板上のChiplet設計で最適な解像線幅を実現するとのことで、ガラス等の最先端パッケージ基板上で2μmパターニング製造実証が行われている。これは多層ガラス基板向け直接描画装置の応用であり、現行のL/S限界は2μmだったが、今回の発表資料によれば1μm以下の要望に応える前提となっており、この開発が進展したのではないかと思うのだが、これについては一切回答が無かった。

ローツェ
展示物:ブーメランアーム真空ロボットRR481、クロスレッグアーム真空ロボットRR492、カメラ搭載待機搬送システム及び異常検知AI
URL:
(メモ)
例年ハッピーアワーでお世話になっている搬送機器メーカー。いつも展示していたN2パージ系は今年は1つも展示なし。その変わり実物展示はRR481及び新開発のRR492、AIチームの技術発表が柱となっていた。面白かったのはRR492で、フルリンクアーム機構により長距離搬送が可能になったこと、駆動部に真空ダイレクトドライブモータ採用したことで高い搬送精度と真空性能を実現していることの2点が大きな特徴。特許出願中の新開発品で、顧客要望があって開発したわけではなく、自社内でこういうこともできるのではと思い開発したとのこと。これに関しては開発メンバーが直接解説してくれる。カメラ搭載搬送システムと異常検知AIについては、2年前に3人で立ち上げたAI開発チームが、AIでどういうことができるか考えた末にできた産物であるとのこと。装置内に設置されたセンサからデータを収集し異常を検出することで故障を防ぐというもの。異常を検知した場合は、ドライブレコーダーの様にその前後を記憶することで見返しながらどのような異常なのかを目視することも可能。カメラは他社製だがセンサ自体独自で開発し、近接センサやカメラ、AIを組み合わせ効果的に異常検知できるという趣旨の展示だった



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?