ゼミの採用についての思考

僕がいる大学の学部学科はとってもアカデミックなのですが、ある大学のゼミの話が面白かったので思考の備忘録。
そこはゼミのメンバーの募集活動も面接も、全て学生がやるとのこと。採用基準から、誰を落とすか、なんてシビアな話を学びとしてやらせているんだと。いいな〜俺もそんな大学にいきたかったな〜

でも採用活動というのはどこの組織も悩むような難しい問題なので、とっても困っているんだと。俺ならどうするかなというのが今回のテーマです。

前提

・ゼミに応募する学生は250人くらいいて、18~19歳
・ゼミは創立1年目で、二期生となる今回は18人くらい入れたい
・ゼミのテーマはビジネス系(学問色は薄い)
・主体性があって、ゼミにいい効果を生み出す人が欲しい
・メンバーは多様性があったら嬉しい
・事前に履歴書チックな書類を1枚提出させる
・面接は一人、一回のみ(グループワークはなし)

ちなみに困っているらしいこと

・52人の応募が来て、3人に2人くらい落とさなきゃいけない
・18~19歳じゃ優秀かどうか判別できない(どんぐりの背比べ)
・面接しても評価がうまくできない
・履歴書の評価に差が出ない(みんな頑張ってる!)
・履歴書の評価と面接の評価が一致しない
・なんでも多様性、となって評価が正しくできない

面接前

まず戦というのは戦う前にだいたい、勝敗が決まっているものである。
優秀な人間が応募者の中にいなければ、もう負けゲー。

今回のケースを聞いていると、ゼミ全体で「たくさんの応募があったほうが優秀な人が来そうだし、ブランド価値も高まりそう」という印象を受けた。事実、明らかに採用人数に対して、募集人数がめちゃ多い。5人に一人が応募するってやばい。

ちきりんの中の人と噂される元マッキンゼーの伊賀泰代さんは、『採用基準』という本で

「もし5人採用しなければいけないときに、理想は何人の応募があるべきか。100か、500か、多ければ多いほどいいのか。理想は、”採用できるレベルの人間が5人だけ応募する"状況である。」

と言っていた。そもそも不採用というのは、どんな綺麗事を言おうと、不採用側はショックなのである。悲しく不幸なことなのである。結果的によかったと振り返れる人間はとても強い。まずは30人くらいの人間に不採用を伝えなきゃいけないことに罪悪感のようなものを感じるべき

採用人数が決まっている場合、無造作に応募者を増やすと、
・不採用と言われて自信ガタ落ちーさいあく〜、な不幸な人
・ほんとは採用されるレベルなのに、無駄に多い募集人数のせいで落ちてしまう不幸な人
が生まれてしまう可能性が高い。

応募してきた人数が半分くらい(2人に1人に不採用)のレベルなら、もっとリソースをかけて吟味ができた。しかし今は応募者1人あたり、1/52しかリソースを割けない。たくさんの不採用者を生み出すし、ゼミ側も多大なリソースが必要になる。お互いに時間と精神力の無駄だし、かわいそう。

上記のような、「楽そうだから」「先輩が少なくて気楽そうだから」など、ある意味でノイズとなりうる応募者は減らすこと。そして大事なのは、「ゼミにぴったりな」「優秀な」人間が応募することである。

そもそも論だと、「ゼミのテーマとなる本をたくさん読んでいる」「何かゼミのテーマであるビジネスに関連する活動をしている」という人間が「応募」すべきであるし、「優遇(採用)」されるべきである。そしてこういう人間は18~19歳では大していない。けど、一定数はいる。ゼミに入るのであれば、上記のようなことを当然のようにみんなしてほしいわけだが、そこまでのやる気がある人間以外応募してくるな、とまで言ってもよかったと思う。そういう人間をゼミに入れたいのだから。

必ず18人いれなきゃいけないわけでないし、優秀な人間が集まることが目的なのだから。無理して18人を入れて、組織の平均能力を下げる意味はない。

まとめ

・不採用者を減らす
・募集人数を減らして、より吟味できるようにする
→純度の高い募集をするべきだった

面接期間(評価について)

評価が難しいのは、そもそも上記の通り、応募者が多いからである。
人は多すぎる選択肢の前だと、いつも選んでいるような選択をしてしまうので、結局多様性なんて生まれないなんてこともあり得る。

なんて言っても後の祭りなので、実際に評価はどうしたらいいか。難しいな〜

まず評価というのはそもそも難しいわけだが、概ね3つの観点がある

(リスク低)

・すでにもつ能力
・人柄
・ポテンシャル

(リスク高)

すでにもつ能力

そのまま。高校生で起業してます、とか、大学一年生からインターンしてます、とか、ビジコンで優勝してます、とかもう強いよね。
ビジネスを学ぶゼミに置いて、ビジネスの経験があるってもうそれだけで嬉しいよね。暴力。もっともリスクが低い。
でもこんなやつ、まずいない。ゼミの面接に置いては評価軸になり得ない。

人柄

人柄とかくと、誤解を招きそうだが、「いい人」の定義は組織によって異なる。その組織にとって、「いい人」を採用する傾向はやっぱりある。
「っぽさ」と言い換えてもいい。その「組織にとっていい人」か、「うちのゼミっぽい人」かどうか、を「人柄」としている。

能力と人柄がマッチしてたら、間違いなく採用だよね。

金融業界の営業職とかコンビニのアルバイトとか、たくさん人手が欲しい業界は人柄さえOKなら、まず採用。

ゼミの採用に置いて人柄というのは、ストレスに強いor弱い、とか、思考派or行動派とか、色々あるが、
まぁ人柄採用をやろうとすると、みんなだいたい良い子なので、差がつきづらい。

でもまだ、わかりやすい方だと思う。問題が次。

ポテンシャル

新卒一括採用も、言ってしまえば、ポテンシャル採用。
今回のゼミの採用を悩ませているのはこいつが原因。

大学一年生を採用と言っても、本当にどんぐりの背比べとなると思う。
実績もなければ経験もない。だからポテンシャルで測るしかない。

ポテンシャルとは、「こいつが1~2年ゼミにいたら、きっと成長して、みんなに良い影響を与える人間になるだろう」というものだけど、これを見抜くなんて達人芸である。だって未来のことだもの。未来は神にしかわからない。だからポテンシャル採用はとってもリスクが高いし、大企業とか余裕がないとできない。
(後述するが、ポテンシャル採用において大事なのは、採用でなく教育)

大学一年生、実績もなければ、経験もない。部活の経験、大学での授業の経験、アルバイト、まぁちょっとしたビジネス系イベント参加?くらいかな。

ポテンシャルを評価軸にしようというのが無理難題だが、それ以外で評価できない、というのが今回の難しいところ。一体どうやって、1枚の書類選考と1回の面接で評価したら良いのか。う〜んどうしよ

適正チェック→賢さチェック

まず一つ、「純度の高い募集で募集人数を減らす」のが大事だと触れた。加えて「ポテンシャルでしか評価できない」という状況。

僕なら、「課題図書を出して、自分の言葉で評論させる」を書類提出とするかな〜

まず課題図書を読んで2000字なりを提出させる時点でハードルが高くなる。そういうゼミなのか、と意識付けられる。で、多分そんな募集人数が減らなかったとしても、コピペとか引用しまくりとか、文章が荒いやつはたくさん出てくる。「自己紹介」は評価しづらいが、その人間の「評論」はとても評価しやすい。

文章構成も、思考も、その課題に対しての向き合い方も、自己紹介より100倍評価しやすい。というか、締め切り間近に、うわ〜〜〜って提出してきたらその時点で、うがった目で見ちゃうかも。てへ☆

課題図書は意見が分かれそうなものを選んだ方が良いかな。
ゼミの活動である、「インプット→アウトプット」の適正と、「ゼミでの文化」の適正をダブルでチェックしたい。
(大企業に行きた〜いってゼミに、ベンチャースピリッツなやつが来たら不幸だし)

面接は「賢さチェック」をしたい。
賢さチェックと偉そうに言っているが、この場合は「思考しているか」どうかである。

思考しているか、は、「もしこういう状況になったらどうするか」といった仮説的状況を問いかけるようなものを重視したら良いと思う。
だいたい、用意した回答というのが応募者にあって、引き出しから答えを出すような回答はあんまり参考にならない。

その場で思考してもらって、それが正しいかとかでなく、「一人で思考をすることができているか」をチェックする。
「うわ〜教科書的!」って思ってしまう回答もあるだろうし、「うわ〜個性的すぎ!」って回答もあると思う。そしたらとにかく詰めまくる。

思考しているかをチェックするには、「なんで?」「それってこうだったらどう思う?」と続けているとボロが出るか、喋りながら考えているかよくわかる。

まとめ

・提出書類は課題っぽくして、「研究の適正」と「文化の適正」をチェック
・面接は「一人で思考できるか」をチェック

面接後

正直、戦というのは、戦っている最中は重要ではないのだ。
準備が9割であるし、日本の高度経済成長よろしく戦が終わった後にどうするか、である。

ポテンシャル採用、大学一年生を採用する、というリクルート活動において、もっとも大事なのは、面接後である。

大学一年生というのは、もう、とにかく、伸び代しかないわけである。
せっかく自分の後輩として入ってくるのだから、スノボ旅行とか、飲み会とか、恋愛だけでなく、「一人前」にしてやる責任がある。

どうするか、はまぁぜひ議論していただきたいところだが、

ゼミに所属するメンバーにとって「自分のゼミの応募がたくさんで人気〜、他は定員割れ〜」というのはある種とても嬉しいと思う。自分の所属する組織がみんな大好きで人気なのだから!それはわかる!

でもやっぱり、「とんでもなく優秀な人間を輩出している」ということで人気になるべきであるし、それを目指して欲しい。東大に行く人は、日本で一番頭がいい人間が集まるから東大に行きたいのだ。俺も私大の中でトップクラスに頭がいい歴史が勉強できるところ、で大学を選んだ。どうせ行くなら、頭がいい人に囲まれたい。

募集人数は重要じゃないし、むしろ害を生み出している。
輩出した人間の素晴らしさで、有名になって欲しい。

まとめ

・ポテンシャル採用なのだから、教育が大事。全員を立派な「一人前」にしてやる
・結果的にゼミの卒業生がみんな優秀で、有名になり、そういうブランド価値を持てるような教育をして行く



先日、自宅の猫の首輪がボロボロになっていることに気づきました。サポートしていただいたら、猫の首輪にして、noteに投稿します。