aikoは高級和膳で、西野カナはラーメン

私はaikoばかり聞いていると思われがちだが、西野カナも聞く。
aikoが高級和膳ならば、西野カナはラーメンなのである。毎日、手の込んだ前菜から始まる高級和膳は食べてられないし、むしろラーメンは日常的に食べたいものじゃないですか。

aikoも西野カナも、恋愛をテーマに歌う。しかし両者は対極に位置する。
例えば、西野カナの代用曲『会いたくて会いたくて』はこんな歌詞。

会いたくて会いたくて 震える
君想うほど遠く感じてもう一度二人戻れたら...
届かない想い
会いたいって願っても会えない強く想うほど辛くなって
もう一度聞かせて嘘でもあの日のように“好きだよ”って...

お分かりの通り、西野カナの歌詞の特徴は、「心の声」を中心に歌詞がなぞられることである。
今こんなことを考えていて、こんな気持ちだよ!ということをストレートに伝えてくれる。すぐに理解ができ、胸にすっと落ちてくる。「あー今つらいんだ」とわかる。

一方、aikoは恋人と別れるとどのような歌詞を書くか。

毎日を過ごすのがこんなにも辛いなんて
2人の間を隔てたものはあたしの心の黒いもの
絶対そうだと思い込んだ
寂しすぎるあたしの心
夏は何度もやって来る 暑くて空も高くて
あなたといた道が今もちゃんとゆらゆらしてる
aiko『雲は白 リンゴは赤』

「あなたといた道」は「今も」「ちゃんと」ゆらゆらしている。季節は、人間の生活を無視し、無慈悲に移り変わる。あなたは今私の隣にいないが、季節はあなたといた時と同じようである。季節が作り出す風景は変わらないが、私もあなたも変わった。つまり、あなたといた時のことを毎年、思い出させられてつらいよ。季節は移ろいでも、私たちの関係は変わらないものでありたいよ、という意味なのだろうが...

読んでいても、聞いていてもすっと落ちてこない。
aikoは本当に読んでいて考えさせるのである。

「心の黒いものってなに?」「今もちゃんとゆらゆらしてるって、"ちゃんと"って必要?」「つまり何が言いたいの?」という多くの疑問が矢継ぎ早に思い浮かんでしまう。正直、疲れる。

だからaikoばかり聞いていると疲れる。毎日、高級和膳といった感じ。ラーメンが食べたくなるように、西野カナも聞く。わかりやすく、うまい!と簡単に言える。aikoはなんかこう、だしの風味とか、色と香りの工夫とか、味わい尽くさないといけない感じ。

そこが魅力だし、人におすすめできるお店は、そういうお店であるわけだが。

先日、自宅の猫の首輪がボロボロになっていることに気づきました。サポートしていただいたら、猫の首輪にして、noteに投稿します。