マダオ観察日記はなぜ生まれたか

銀魂の重大なネタバレを含みます。



マダオ回のおそらく最高峰である観察日記。

これも長谷川さんが1キャラクターとしてのストーリーを動かせなくなった結果できたものかもしれません。

まず子供がおじさんを観察するというシチュ自体が強烈にシュール。これだけでお腹いっぱいのギャグなのですが、いつものマダオとは違う絶望のリアルさが読者を不安定にさせます。

そして唐突に大五郎の日記が純文学へスライドします。実は銀魂内で初めてマダオ=堕天使ルシファーというモチーフが出てきます。大五郎の家族となったマダオに読者は嫁さんどうしたというツッコミを入れられないほど不条理の世界に飲み込まれます。

ハードボイルドと犬小屋を組み合わせるセンス。src神頭の中どうなってるんですか。コンドルも旋回するよねもうそうだよね。

さらに大五郎の回想が始まるというプロットのジェットコースター加減は銀魂随一です。そこからページごとどころか一コマごとに目まぐるしい展開の乱舞。ただ翻弄されるしかない読者。マダオの侍魂を見せつけられこの感情をどうしてよいかわからないとこに最終コマとして監督脚本 お母さん というオチ。

src神の奇才極まれりという回ですが、これはひたすらマダオというアイコンが読者を不条理の世界へ引っ張っていきます。

実話なのか作り話なのか境界線の不明瞭な世界の中でマダオの侍魂が描かれます。これは裏返せばかぶき町の世界では侍魂を示せなくなった長谷川さんのために用意された特別舞台です。

この回を咀嚼するとこで読者は長谷川さんに何が起きてもマダオだからと納得させる土壌ができたのではないでしょうか。長谷川泰三というキャラではなく、わかる人にはわかる侍長谷川の象徴として読者の中に長谷川さんを根付かせる事に成功した回です。

銀時はある意味、誰のものにもならない主人公としての銀さんが登場人物にも読者にも共有されています。対して長谷川さんは登場人物にも読者にも、マダオの本当の良さを分かっているのは自分だけだと思わせる強烈な禁断の果実として認識させようというsrc神の意図が見えるのです。

それは長谷川さんが銀魂というストーリーから切り離され侍の魂という象徴として描こうとするsrc神の意図なのではないでしょうか。

ストーリーを俯瞰するという意味ではタマや信女などの狂言回しとして割り当てられたキャラがいますが、彼女達にはかぶき町の住人として根を張って生きていくキャラとしてのストーリーが用意されています。

対して長谷川さんは特に過去を乗り越えたり仲間との絆を深めるようなストーリーは存在していません。やはりハツとの復縁という矛盾を抱え込んでしまった長谷川さんが侍魂を見せる為の舞台装置として、現実か脚本かわからない観察日記という作品を作り上げてみたのではないでしょうか。

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