銀魂の基本構造を考える

銀魂の重大なネタバレを含みます。

66巻で将軍暗殺篇(と神楽の兄ちゃんを掘り下げる話)はかなり早い段階で考えていたというsrc神の発言と、蓮篷篇が天鳥船と同じプロットである事を考えると、将軍暗殺篇以降の各篇は別々に考えられていたと推測します。

大まかな時代の流れ(基本軸)は天人襲来→幕府による天人受入(開国)→攘夷志士による討幕(失敗)→将軍家内乱→(真選組解体)→将軍職廃止と新時代の幕開け。

この時代の流れ(基本軸)は多少ずれはあっても史実を基にしているので”銀時がいなくても成り立つ”と言うのが大前提です。

ここに攘夷志士ではなくなった坂田銀時と、万代屋と、かつての仲間(と松陽)との物語が、様々な仕掛け(長編)で絡んでいくのが基本構造と考えます。もちろん物語としては万事屋の繋がりがメインなのですが、ストーリーは基本軸に沿って動いていきます。

そして将軍暗殺篇より前の短編長編は、基本軸を進めるためのプロトタイプ(仕掛け)として作られていたのではないでしょうか。

わかりやすいところとして、銀ノ魂篇の地上戦は金魂篇です。将軍暗殺篇の銀時と高杉の戦いは、陰陽師篇の晴明と道満です。憎しみの裏にある愛情(神晃のセリフ)という意味では神楽神威も当てはまり、銀時と高杉、神楽と神威の対比だった可能性もあります(高杉と神威を組ませたのは36巻)。桂と近藤(攘夷志士と真選組)の共闘はモンハン篇等何度も繰り返し登場します。細かいところで桂が獄門島脱出で断崖絶壁に穴を開ける(さらばでは山崎)もあります。プロトタイプは無数にあり、その中から基本軸に使えそうなものを使って後半を組み立てていったのではないでしょうか。

ラストを宇宙大戦にすると決めていた→虚に宇宙大戦を引き起こさせる→将軍を宇宙に連れ出す為、烙陽決戦戦が挟まれる(喜々は銀時を追いかけて宇宙に飛び立つ)→…とラストから逆算していった可能性もあります。そう考えると地雷亜篇は銀時と松陽の設定に準えて作られたのではなく、銀時と松陽の設定を作るために編み出した可能性も出てきます。

またギャグ回は基本軸で使えるキャラの配役決定に使われていた節があります。年賀状回で長谷川さんがネクロゴンドに流されますが、ここで二つの対立する部族の争いを止めさせ平和を導きます。鳥船での長谷川さんの立場と類似します。茂々の意を継ぐ桂も似たような立ち位置かと考えます。

これが当初大まかに決めてあった配役の設定を密かにギャグ回に埋め込んだのか、ギャグ回でしっくりきたキャラを基本軸での主要キャラにしたのか少々迷います。src神は役割の終わったキャラをあっさり死なせようとするところがありますが、うっかり生き残った定春が最後まで主要キャラなのを見ると、後者の可能性も捨てきれません。長谷川さんも最初からかぶき町に居場所がなくなるキャラではなかったんですよねよかったよかった(自己暗示)。

一見バラバラに起きるギャグ回人情回を少しずつ基本軸に絡ませていく手法はちょっと強引にも見えますが、ファンになった以上は最後まで見届けたいと思わせる魅力があります。独立して完結する話それぞれは漫画として文句なしに面白いです。

だからこそ虚がやっぱりもったいないなあと思うのです。

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