銀魂はなぜ謎を残して終わったか

完全に妄想ですので暇つぶしがてらお読みください。100回ほど銀魂を読み返してもなおもやもやする方へ、一読者としての感想を書きます

個人的な事ですが、銀魂のもやもや感想をnoteに残そうと思ったのは、書評に2度救われた経験があるからです。
感想も書評も分析も二次創作と捉えていますが(アニメも映画もグッズも二次創作派の原作厨です)、感想を共有する事で新たな解釈を生むのも楽しみ方の一つかと思います。

絡新婦の理という作品がありまして、犯人(あえて犯人と呼びます)の具体的な動機は明確に描かれず終わっています。
京極夏彦のインタビューを読む限り、動機は明確にならずとも物語として完結しているというスタンスをとっています。しかしどの感想を読んでも最終的には犯人の動機の謎について延々考察され続けています。
私が読んだ絡新婦の理の考察ブログでは、この動機について解析しており、私自身もそこに新たな解釈を加えて一応納得した形に落ち着いています。

あくまで妄想なのですが、あえて謎を残す事で、繰り返し作品を読ませ、作品全体にまたがるメッセージを読者に伝える意図があるのではないでしょうか。動機はキッカケに過ぎず、そこから始まる物語とメインテーマが主役なのです。

絡新婦の理は、ラストシーンを読むと必ず一番初めから読み直してしまう構造をしています。意図的に謎を残していてもおかしくはないかなと考えます(あくまで私の妄想です)。

銀魂も似たような意図があるのではないでしょうか。

将軍暗殺篇以降の各篇は、虚がいなくても成立します。虚は各篇を繋ぐアイコンであり、キッカケであり、篇によって役割を変えます。

銀魂のメインテーマはよろずの絆と、自分自身の弱さとの戦い、価値観が変化していく時代での生き方です。そしてそれらに答え(メッセージ)を与えるのではなく、各キャラがどのようにしてそれらに立ち向かうかの姿勢を見せるのが特徴だと考えています。

私と貴方の意見は違うけれども、貴方がその答えを出した姿勢は尊重するということです。だから銀時は桂とも真選組とも将軍とも天人とも高杉とも心を通わせる事ができると思うのです。連載時期を考えると漫画としてはかなり前衛的です。

つまり過程が重要なのであり、明確なメッセージや、明言になりそうなセリフや、必殺技などはあえて排除しているのではないでしょうか。登場人物それぞれの答えがあり、そのキャラの中での答えとして表現されています(故に形のある家族や恋愛は排除され気味で恋愛フラグ=死亡フラグとまで言われるほどです)。

虚について明言を避ける事で、繰り返し読み返す事で、銀魂全体にわたる姿勢を追体験させたいのかもしれません。

もちろん私の妄想でありかなり好意的に解釈したものです。虚の謎はそれまでのキャラ設定やストーリーの流れを潰してしまう面もあり、ストーリーの難解さ以上に銀魂離れを加速させていたと思います(連載後半はリアタイではないので推測ですが)。

しかしsrc神はその功罪を充分把握した上で将軍暗殺篇に突入したのかもしれません(願望)。58巻の巻末で読者には(矛盾に目を瞑って)行間を読んでほしいと語っています。読者に読み方を提案するなんてsrc神らしくないと思うのですが、矛盾を承知で辻褄合わせよりメインテーマを選んだという決心なのかもしれません(願望)。

そこには言葉にできない形のないものだけど、確かに魂の中に存在しているもの。読者が銀魂に求めている最大のものをsrc先生は守り続けてくれたと思うのです。

読者としては松陽先生に言いたい事がたくさんあるのはこっちの方だと言いたくなりますが、src神が漫画として読者に託そうとした魂に会いに、もう一度銀魂を読んでみようと思います。

src神インタビューより
よく万事屋は擬似家族っていわれるんですけど僕としてはそう思って描いてないんです。というかあんまり言葉であらわしたくないというか、他の言葉で代用がきく関係性にしたくないです。万事屋には万事屋にしかない絆が描ければ、そう思って描いてます。


空知英秋先生の新作心よりお待ちしております。

(個人的にキャラ設定もりもり長編作品で途中から登場人物をメタキャラにするのは漫画ってもの自体読めなくなりそうなほどのトラウマなので封印してほしいです。まどマギとは次元が違います。トチ狂った私の妄想であってほしいと切に願ってます。)
(なお絡新婦の理は自分で年表を作った事がありますが設定にほぼ破綻はありません。作品に意図があれば破綻してよいと言いたいのではなく、もやもやを少しでも解消して作品を楽しみたいというレクイエムのつもりでこの記事を書きました。)

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