加東大介・賛! 〜【大番】と【南島】と【侍】
★「時代劇の父」と呼ばれた映画監督【伊藤大輔】・・・その故郷は、宇和島
・・・城下の南に「元結掛(もとゆいぎ)」という土地があり、ここは、明治の実業家【土居通夫】の、同じく出生地だったりしますが(彼の偉業は数多いが、通天閣の「通」は、土居通夫の名に由来する)
さて、そんな宇和島には、映画人・伊藤大輔について語れば、右に出るもののない、ものすごい、映画通がいらっしゃる。
ということで、先日、宇和島の教会、イースター礼拝の帰りに、お訪ね〜
わたし、30年くらい前・・・伊藤監督や、大河内傳次郎たち・・・時代劇映画の草創期に、大活躍した青春群像を、劇団仲間たちと、剣戟芝居にしたことがあり、
そんな話も交えれば、宇和島の商店街で、眼鏡店を経営・・・その階上を【資料館】として公開する、店主さんと、意気投合〜
貴重な資料、映像など、お借りして、観了した中に、これまで、どうしても鑑賞の機会に恵まれなかったのが、
★喜劇映画・・・【大番】!
主人公は、宇和島の出身という設定で、ロケ地としても、その界隈が、映し出され、セリフの中に、たくさん出てくるのが、「がいな」「がいに」
これは、宇和島の方言で「おおきな」とか「すごい」とか「度を越した」とか、そういう意味、ニュアンスで、なにかあれば、主人公は「がいな」や「がいに」を多用するところなんぞ・・・この映画、がいに面白い!
『大番』全4部作(1957-58)
原作、獅子文六。昭和前期の兜町を舞台に、相場師「ギューちゃん」の波乱万丈の人生を描く。監督・千葉泰樹、音楽・佐藤勝。
出演は、淡島千景、仲代達矢、東野英治郎、原節子、三木のり平、沢村貞子、団令子、山村聡、ほか・・・その中で、主役をはるのが、【加東大介】!
若いころ、見たり聞いたりしたものも、年をくうと、新たな面を、観たり聴いたり・・・できるようで、映画なんかは特に、スター俳優以外に、目がいくようになり、
★最近、この役者は、スゴイ!と、注目(つまり追っかけ)している、ひとりこそ【加東大介】!
と言えば、どうしても【七人の侍】のひとりを演じたことなどが、クロースアップされて、志村喬が演じるリーダーの部下役として、それは、寡黙な役回りでしたけど、
いやあ、加東大介の主演作【大番】では、まあ、よく喋り、よく動き、コミカルにシリアスに、その大活躍をたっぷり、堪能できます。
そんな、加東大介は、ニューギニアで従軍経験があり、その手記【南の島に雪が降る】・・・これがまた、ものスゴイ!
みずみずしい文章は、にじみでるユーモアと、ときに冷徹な客観描写で、その内容ともども、うーむ、唸りました。・・・なんたる、天才!
(映画や、舞台にもなってますが、もとの著作には、遠く及びませんけど、いちおう、リンク〜)
★でも、この映画版にふれると、気づくこともある
そうかー、部隊内に慰問劇団をつくるとき、そのオーディションなんて、まさに、七人の侍を集めていくシーンだなあ、とか(ニューギニア部隊の司令官役は、志村喬だし)
実際、【南の島・・・】で、各自の技能を持ち寄って「劇団」を結成、戦地に「芝居小屋」を作り上げるのは、【七人の侍】で、農村を野武士に対抗する「要塞」にするのと同じだ。
侍の力を借りて、野武士と戦う「農民たち」と、ニューギニアという戦地で、なんとか日常を取り戻し、生きのびようとする「兵隊たち」の姿は、オーバーラップする。
【七人の侍】で、リーダー役の志村喬が、部下役の加東大介に、久しぶりの再会に際し、尋ねる場面がある。
「おぬし、あれから、どうしておった?」
「天守閣が燃える中、堀にもぐって逃げるときを待っておりました」
ニューギニアの戦地・・・極限状況の部隊で、雪の降る舞台に、内地の生活をかいまみる、非日常のなかの日常・・・
このテーマは、フランクルの【夜と霧】にも比肩し、加東大介の戦争記録もまた、人間存在の深度に迫るものだ。
【七人の侍】と【南の島に雪が降る】は、【加東大介】という、結節点において、よく似た構造あり・・・
なんて、発見をもたらしてくれるのも、若いころには、とても気づけない視点として、年をくって、観えるものも、あるのだなあ。
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