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写真批評 サシイロ 3 〜決定的瞬間の意味

写真の特性の1つに、ある一瞬を永遠に変えるということがある。それはある種の魔法のようにも思える不思議な世界観を創り出す。
これが写真が創作活動と位置付けられる理由だ。

永遠の絵とするにふさわしい一瞬とはどのようなものだろう。それは「決定的瞬間」と呼ばれることがある。こう呼んだのは、アンリ・カルティエ・ブレッソンだ。引用した写真は、彼の「瞬間の記憶」だ。

この写真は、この一瞬前でも後でもダメで、この一瞬でなければならない。これが決定的瞬間と言われる理由は、この一瞬後に予想される惨事に裏付けられている。いわば、物語性のある写真となっているのだ。

さて、このように一般的には物語性が決定的瞬間を裏付けるものとして語られるが、物語性以外には写真を決定的瞬間とさせるものはないだろうか。

冒頭の写真は、森山大道の「犬の記憶」である。
犬の表情をよく見て欲しい。犬と言えば忠誠、従順というイメージが今では定着しているかもしれないが、この犬は違う。むしろ自然の厳しさ、荒々しい渇望や動物の本能を感じる。これも一種の「決定的瞬間」を写真に収めたものといえるのではないだろうか。
つまり、「決定的瞬間」となるに足るものとは、通常目にする既存の概念を翻す絵であることが必須なのだ。

それは既成の枠に囚われている私達を解き放ち、自由にしてくれるはずだ。

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