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写真批評 〜サシイロ6 愛=理解×誤解

写真は一瞬を切り取ったものはずだが、それを長い時間見ていると、不思議な感覚に陥ることがある。
ダイアン・アーバスは、そういう写真家だ。

冒頭の写真は、ダイアン・アーバスの有名な双子という写真だ。
この写真は、パッと見ると2人が全く同じように感じる。服装や髪型がそっくりだからだ。
全く同じものを並べられると、正直違和感を覚える。現実にはあまり目にしない奇妙な世界。私たちは何がその違和感の原因なのかを探ろうとする。そうして初めて、各個体の持つ特徴に気が付く。
冒頭の写真の双子は、よく見ると右手に立っている子の方が全体的にやや大柄で、目の大きさも右手に立っている子の方が大きい。そう、彼女たちは、紛れもなく、違う「2人」なのである。

ダイアン・アーバスは、双子以外に障がい者なども被写体に選んだ。
彼女の言葉に以下のような言葉がある。

「愛とは理解と誤解とが理解しがたいほど奇妙に組み合わされたものです。」

彼女は、こうしたスタンスで被写体と向き合い、各人の持つ個性を抉り出した。個性のないと思われる相似に個性を認めたり、誤解の生じやすい障害にフォーカスしたり、ダイアン・アーバスにとって、写真を撮るという行為は、愛そのものを実践することに他ならなかったといえる。

写真を撮るという行為は、1人で行うものだが、他者と関係を結ぶための目的で行われなければ意味がない。
ダイアン・アーバスは、それを教えてくれる人だ。

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