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写真批評 サシイロ

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様々な写真家の写真を批評した評論。 変わりばえしないモノトーンな日常に色が射すように、あなたの気付きになればという思いを込めて。
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2018年3月の記事一覧

写真批評  サシイロ  14  〜動物写真

写真批評 サシイロ 14 〜動物写真

今、まさに桜が満開でお花見をした方も多いのではないだろうか。上野の恩賜公園は花見客で賑わったと聞いたが、上野動物園のパンダの親子とセットで楽しんだ方もいるのではないか。
さて、今回はモノクロ写真とは離れて、動物写真というジャンルについて、触れてみたいと思う。

動物写真というのは垣根が高いものではなく、例えば自分が飼っているペットの写真をSNSにアップしている人もたくさんいるだろう。ペットではなく

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写真批評  サシイロ  13  〜耽美を創る  後編

写真批評 サシイロ 13 〜耽美を創る 後編

前回のサシイロ12では、耽美を構成するために必要な要素はいくつかあって、その中でも時代が必要としているエネルギーについては、私たちが生きるこの現代が求めているエネルギーとは何なのかがわからないと、現代にふさわしい耽美は創れないのではないかと述べた。
今回は現代が求めているエネルギーについて、もう少し考察したい。

演出的な技法である世界観を創り出し、それを写真に収める写真家として、沢渡朔という写真

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写真批評  サシイロ  12  〜耽美を創る  前編

写真批評 サシイロ 12 〜耽美を創る 前編

細江英公の「おとこと女」がJCIIフォトサロンで公開中だ。
細江英公といえば、三島由紀夫とも交流が深く、「薔薇刑」など特に男性のヌードをモチーフにしたモノクロの耽美な世界観で知られている所だ。

細江英公の特徴は、自分の主張を伝えるためにシチュエーション自体を創作し、それを写真に撮るという、どちらかといえば演劇的な作風だと言えるだろう。彼は演出家のような立ち位置で、写真を撮るのである。
では演出家

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写真批評  サシイロ  11  〜日常と非日常の境界

写真批評 サシイロ 11 〜日常と非日常の境界



須田一政の「風姿花伝」は面白い写真集だ。何が面白いのかというと、ごく普通の人たちが異様な空気を発しているからである。
写真評論家の飯沢耕太郎氏は、須田一政のことを、日常に潜むアニミズムを撮る写真家と呼んでいる。それはもはや日常見ている人や光景ではないので、須田一政のことを非日常を撮る写真家と呼ぶ者もいる。

須田一政の写真を見ていると、アニミズムというものは、何も人里離れた自然の中に行かねば撮

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