人間社会と日本:技術-02
ー 技術体系の具体的な方向性(1)
「情報化と知識化」と「脱炭素化」に纏わる技術体系の具体的な方向性を考えてみる。
まず基本的な技術体系の変化とは何かである。現在は、力学系から波動系への比重の転換期であると言えるのではないか。第一次産業革命(蒸気機関)と第二次産業革命(内燃機関)は、一方向運動を回転運動に変換することで「生産に大きな力」を得てきた。つまり、力学系に主体があると言える。また、別の動きとして古来よりある鉄鋼業等が発展し重化学工業として同時並行的に発達してゆく。此方は化学反応系である。更に、第三次産業革命で電気エネルギーが波動系の動きとして登場してくる。電磁波を導体を利用して送受信する通信技術が開発され発達してくる。つまり、電信電話(有線)であり次のラジオ(無線)さらにはTV(無線)へと発達してゆくことになる。この時期はアナログ方式である。同じく化学反応系では石油化学工業が人工繊維やプラスティック等で発達してゆく。第二次世界大戦や米ソ冷戦構造という対立競争が一層科学技術の進展を促して、結果的に産業革命を急激に促進することになる。然るに、科学技術の使い方によっては由々しき環境問題(危険物質の大量排出による公害や人工物質の使い過ぎによる健康被害やゴミ処理問題等)を引き起こすことが認識され、新たな方向での技術開発が急速に進展することになる。現在の生産現場には「電気エネルギー」が主要になる。また、内燃機関に代替する「電動方式」を可能にする技術体系である電池技術や燃料電池等のものである。
第四次産業革命で、コンピュータ技術とナノテクノロジーに属する半導体技術が大きく進展して、通信技術(デジタル方式)に応用され発達して、大容量化と高速化を実現し「情報化社会」を実現することになる。「情報化と知識化」の第一段階が進展し、通信技術と計算技術とデータ保有技術(メモリ関連)によりインターネット技術(軍事よりの要請から)を発展させ、人間社会で時間と空間の制約を無くす方向へ発展させてきた。然るに「お約束の如く」良い事ばかりではなく悪しき問題も登場してくる。GAFA体制に見られる寡占化による弊害である。中共による「全体主義国家の情報化と知識化によるこれまでにない強力な人民管理強化体性」の実現である。前者は、情報化社会における言論の自由等の近代性に新たな危機を齎す動きが現出してきている。ビジネスにおいてもこの情報基盤を通じて行われることで寡占側からの排他性が強まり、「適切な市場原理」が脅かされ始めている。後者に至っては、映画「マトリクス」の現実化が実現されているようである。つまり、中共による全体主義に基ずく人民管理の徹底であり、其処には近代国民国家の在り様と懸離れたものが存在していると言える。何故それが可能かと言えば、中共は後発でありインフラ等において従前の技術資産を有しておらず、最新の技術体系を直接的に新たなインフラに導入できた背景があることである。
日本は、大東亜戦争の敗戦の反省もあり「物質材料研究」を確り推進してきている。それが実を結ぶのが「半導体技術」であり「ナノテクノロジー」である。日本では算盤や計算尺の代わりに計算機能主体の「電卓」が発達してゆく。この経緯で論理演算素子の開発が沖電気等で進み、CPUの半導体化(チップ化とも呼ばれる)が進展してゆくことになる。折からの日米経済戦争の雰囲気もあり、残念ながら米国のインテルに「掠め取られて」しまった。それでも、記憶素子の分野では日本の半導体企業は貢献してゆくことになる。しかし、この技術も米国勢力(特定資産家等)により、日米経済戦争と同じ流れで日本から台湾や韓国へ生産技術が流出してゆくことになる。日本には、この当時この分野における「国策」がなく、こうした流れに「独自性を貫ける」状況がなかった。日本の官僚には「迂回輸出」の考えもあり半導体の製造は台湾や韓国に移行させられるゆくことになる。各種の仕掛けがあっただろうが、結果的に米国勢の圧力に押し流されてゆくことになる。この分野だけでなく、日本はグローバリストに経済面で「荒らされる」状況を迎えてゆくことになる。基本ソフトウェアに当たる「TRONプロジェクト」も潰されるが、組み込み型は生き残り現在は新たな発展期(パワー半導体他)を迎えている。特異な分野ではあるが「スーパーコンピュータ」では、「富岳」の開発が行われて世界にその技術力の高さを今も示している。日本には未だこの分野において研究開発能力は維持されており次世代の開発基盤は今もある。日本の強化には、改めて適切な国策が要請されるであろう。
現在は、これまでの経緯があり米国勢が優位にあるが、情報化と知識化の進展において時間軸が経過して「技術的蓄積」が大きく成り、此処から先の応用分野のアプリの要求に応えてゆくにはこれまでの漸近線的対応ではなく飛躍的な性能向上が求められる段階にきているであろう。既に方向は見えており推進されている。例えば、キーボード方式の入力だけでなく音声による入出力である。更に、同時通訳機能も必須となるであろう。これらの機能には安全性と透明性が担保されている必要があり本格的な実用化には飛躍的な性能向上が必要であり未だ時間を必要としている。また、動画制作等の限られた分野の要求に応えるCPU系の開発応用等があるように、各分野への応用が進んでおり情報技術の分化が進んでいる。やはり飛躍的な「性能向上」が求められているであろう。
また、近代性がない所では、人間社会の「適切な発展」は望めないであろうことは今現在の人間社会の在り様が示している。物事が複雑になればなる程に、その事に対する理解を個々人において上げてゆく努力が必要である。同時に、それらを学習する機会が幼年期から準備されていることも必須であろう。それは、人間精神における問題とも連動しているからとしか言いようがないが、人間精神による物事の複雑性の水準が上がるならばそれに連動してそれを扱う人間精神の複雑性の水準を全般的に上げてゆく必要があるであろう。情報化と知識化は当り前の状況になってきており技術進歩も早いので、生涯に渡って時間を掛けて必要な知識や技能が獲得される「仕組み」が必要である。
「情報化と知識化」は、ハードウェアとソフトウェアがセットのものであり真に「人間(肉体と精神)」と同型であることである。この分野の技術革新が進めば、人間精神の理解も進むであろう。この問題は同時並行的に扱ってゆくべきものであろうと考える。ベースとなる物質材料研究とナノテクノロジーは今後も技術革新を遂げてゆくであろう。日本は、先端的な立ち位置を維持できるように「国策」を確保し確り投資をおこなってゆくことである。歴史的に日本のみが性善説の人間関係を確立してきていることもあり後れをとっているが、安全保障の仕組み(この分野ではサイバー・セキュリティというものになりハード&ソフトの両面において必要になる)を技術革新に応じて常時向上させる必要性がある。
人間社会の情勢は「力の空白」の事態にこの先突入してゆくことが明確になってきている。安全保障が最優先事項になる。日本の近隣国である支那(中共)が敵性国である。そこで重要になるのは、現代では科学技術である。特に、日本は技術開発の蓄積がある。最先端なものも多くある。これまで的確な国策が取られてこなかった原因は幾つもあろうが、戦略的に重要な科学技術に関して国策的観点(安全保障と国益)で評価し、ビジネスの現場にまで踏み込んで法的な措置が採れる「環境」が現在の日本においては不十分である事である。この環境の構築が最優先であることは言うまでもない。更に、スパイ防止法の整備も必要である。これまで安倍政権でかなり「法的整備」がなされてきたが、影響力を行使された野党他勢力の反対もあり欧米並みの水準にはない。この点を早急に改める必要があろう。
「情報化と知識化」「脱炭素化」の技術体系は、この先国家の基本的な国力の基礎であり国民の生活基盤を支えるものであり、安全保障の観点が最重要に成ってきていることより、民間だけに任せておくことは出来ない状況になってきている。現代の科学技術を適切に評価し採用する方向性を打ち出す「機関(政官経専の代表で構成された協議体が相応しい)」を設けて、政治家も確り理解し議会で方向性を議論し国策化する必要がある。
日本はこの分野(情報化と知識化)に関しては米国と同様に「先駆けてきた」次期があるが、ある時期より「支配勢力」に影響力を行使されて弱体化を仕掛けられてきた経緯がある。それでも、現場の頑張りで現在も「川上から川下まで」かなりの力を有しているが、半導体製造と最終製品において弱体化は否めない。また、基本ソフトをはじめアプリに関しても後塵を拝している。此処まで述べてきたように、この分野は国家の国力の基本であり国民の基本的な生活基盤でもある。何時までも外部勢力に依存していては、日本の弱体化を克服することは出来ない。更に、支那(中共)のような全てに政治(支配欲)が優先する巨大国家を台頭させてしまった現在は、安全保障をすべてに優先する必要がある。日本は人的規模やその能力において全般的に関わることができることを確り再認識して、ハードウェア系は川上から川下まで網羅する研究・開発・製造・適用の連鎖体系を構築してゆくべきであろう。また、両輪の片側であるソフトウェア系においてもそれなりの力のある人物達がいることより自前で研究開発・適用管理・利用管理ができる環境を構築してゆくべきだろう。特に、ソフトウェアは要求仕様に基づいた設計概念(アーキテクチャー)が重要であり、「TRON」のような斬新なものを生み出すことが出来ていたことを思い起こすことであろう。現在は応用範囲が拡大して「TRONプロジェクト」の概念が現実化している状況である。やはり、情報化と知識化の「協議体(自由で発想力に富む要員構成)」を設置して、動向を全般的に捉えられる様にしてその一部門としてソフトウェアのアーキテクチャーの方向性を主導できる環境を構築することであろう。そうした方式の方が「スーパーな人物」に頼るよりも日本的な対処であり成果を出しやすいと考える。そうした動きにより、ソフトウェアの具体的な研究開発が促進できるであろう。総合力なり統合力により成果を出してゆくのが日本的なやり方であろう。弱体化させられバラバラになったものを再編することである。スーパーコンピュータの開発は出来ているのであるから、全般的な情報化と知識化の動向に対しても可能性は高いであろう。
追記:スマホについて
現在は、個人利用の主体はスマホになっている。この業界も何社かのキャリアがあり競争状態にあるが、実際に利用してみるとキャリア間で微妙な違いがり家族間で異なると妙なトラブルが有ったりするし、利用料金に差が出てきて乗り換えなど厄介な問題が生じてきている。現在の情報化と知識化の動向を踏まえれば国民が皆利用することになる訳であり、競争原理を持ち込むのではなく統一環境にして国民皆が利用し利用環境の水準向上(使い勝手を良くする利用料金を適切なものに管理する全体として実体的にも経済的にも価値を向上させる)を図ってゆくことであろう。外部勢力に「価値を掠め取られる」状態を無くすことである。
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