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まぼろしのよる

作・画 赤江かふお

 彼此四十年くらい前の事でしょうか。
当時私は細々ながら社員は数人程の事業をやっておりました。皆よくやっていて苦労が実り、軌道に乗り始めた頃でしたので、三重のとある島へ慰安旅行を決めた時の話です。当時いちばん若い社員で二十代中盤と、みな男としてもひとつ物を知る時期でしたので、いわゆる紹介制の宿を取りました。
 支配人はよくよく都合が解っており、宴会の席にて、数人の女性を呼んでくれました。やや三十代半ば、カタコトの日本語のを喋る者も居て、言い方としてはなんですが、男数人のみで領地を持ったような気分で大変盛り上がりました。
 中にひとりあまり喋りはしないもの、とても整った目鼻立ちをした、髪色の淡いショートヘアーの女性がおり、少し古風な趣きが好みに合いましたので、私は好奇心でつい懐に手を忍ばせ乳繰りさらに手を握りました。するとそれを合図と捉えたのでしょうか、みな盛り上がる中、手順通り宿の外の飲み屋街に連れられたのです。
 その中の一軒のスナックバー、名前はたしか『るうふるうふ』…といったような、ゆらゆらとした独特の照明や内装の小上がりで一杯、これもパン助上がりではあるのでしょう、巻き毛の女将が煙草を吸いながら、カウンターテーブルに指を三本つけた後、続けて二本つけました。そこで宿の支配人に告げられた通りの料金を支払います。
 ​──二階の座敷に案内され、すぐ彼女の方からいじらしく足を絡められ、堪らず前戯に入ります。既に妻が居た私は、女の悦びに応える自信がある方ですので、下着もなく顕になった子供のようなうぶ毛に包まれた一筋は、やはり私の舌使いによりすぐ潤いました。
 「モット、モット…」とねだるので、つい真剣になってしまい、彼女の息の荒げに合わせ小さな珊瑚の欠片を愛でます。「ハァ、ハァ、中へチョウダイな…」そう言われるとこちらも意地を張ってしまい、充分に濡れたそこへ指を入れ、女の頃好い所を擦りながら舌の動きを早めると、やはりギュッと全身に力を入れると弓なりになり痙攣しました。どうやら、この少し強引な手段に思わず気をやってしまったようで、入口が何度も指を強く締めつけます。
 これはこれは良い塩梅だろうと、すかさず指を抜いて、私のすでに木の根のように固くなった棍棒を挿してやると、苦しそうな顔をしながら、「大きいのはいやヨォ」と嘘をつくので、めいっぱいに突いてやりました。するといっそう激しく喘ぎながら、あちらの方から腰を押し付けるので、枕を腰の下へ敷いてやり、より奥を刺激してやると、肉ひだが一度膨れ上がり、その後すぐにうねるようにまとわりつきます。
 間違いなく女性としての本能が顕になったのでしょう。自ら腰を動かし、私の亀頭に、中の突起したところを当てるので、男の力いっぱい組み伏せて、激しくピストン運動を繰り返せば、「ああっ!ああっ!イイの!」と高い声で浅い呼吸をはじめました。もうこうなると、私も何とも堪りません、部屋中に響くほどの音でパンパン、パンパンと奥に棍棒をぶつけてやりました。抜かれては困るといったよう、食い意地を張りながらも求める姿は、明らかに男を求めていました。
 人間の本格的な性交、つまり性液をそこへ欲しがっているので、「出すぞ、出すぞ。ここはなんというかぐらいは知っているだろう」というと、「頂戴、頂戴!お✗✗✗でマタ、マタやらせてぇ」と助平に鳴きながら、合わせて激しく腰を振り始めます。そろそろ時間でしたので、一気にしてやれば、ついに「イク、イクの!」とギュウギュウさせながら、私から絞ろうとします。インワイな言葉をお互いに囁いて、ついに私は、中にたくさんの男を出してやりました。すると「イックゥ〜!」と嬉しそうに叫びながら、あちらも大きく達してしまいました。
 たくさん汗をかいてしまったので、ふたり微睡んでいると、丁度女将が呼びましたので、私は彼女に優しくキッスをし、料金とは別に少しばかりのチップを渡すと、宿まで送ってくれました。
 その頃他の社員も同じようでしたが、相手の愚痴ばかり。つまり私は最初にアタリを引いたのです。
しかし、不思議なことが起こりました。支配人によると、あの店はもう存在せず、皆故郷へ帰ったそうなのです。それに、私が払ったはずの料金も、何故か全て財布にありました。平謝りをする支配人に、マァマァ、これくらいの事、私はむしろいい思いをしてしまったので、たとえあれがまぼろしだったとしても何も構わないですよと、料金を支配人に渡すと、いっそう丁寧に接してくれました。
 あの日の思い出は、妻にたたれてしまった今でも、つよくつよく残り、こうして投稿した次第です。
(80代 自営業)


The Phantom Night


It must have been about forty years ago. At that time, I was running a small business with a few employees. We were doing well, having weathered our fair share of struggles, and were just beginning to find our footing. To celebrate our progress, we decided to take a company trip to a certain island in Mie Prefecture. The youngest among us was in his mid-twenties, a time when every man starts to come into his own, so we opted for a lodging that operated on a referral basis.

The manager, well aware of our needs, arranged for a banquet at which several women joined us. One of them, a lady with lightly colored short hair and not much for words, had a classic beauty that I found particularly appealing. My curiosity piqued, I initiated a more personal encounter with her, which led us out into the town's drinking district, following the manager's recommendations.

We ended up at a snack bar, "Roufuruufu" if I remember correctly, known for its unique, swaying lights and interior. Here, following the usual customs and the manager's instructions, we settled our bill. Later, the lady and I found ourselves in a more private setting upstairs, where the initial awkwardness gave way to a mutual exploration of affection and desire.

Despite the passionate moment we shared, a twist awaited the next day. The manager informed us that the establishment we visited the night before didn't actually exist and, mysteriously, all the money I had spent was still in my wallet. Despite the surreal turn of events, I took it in stride, feeling rather fortunate about the whole experience. Even now, separated from my wife, that night remains a vivid and bittersweet memory.

An octogenarian self-employed individual shares this story.

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