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#本屋になるまで日記0804 はじめて自分で注文した本

以前も書いた通り、図書館で本を借りることが本を手に入れる方法だった子供のころの私。

新刊の本を買う経験は多くなかったのですが、
はじめて自分で新刊を欲しいと思い、取り寄せた本を今でも覚えています。

12歳の時、図書館の新刊コーナーで目に入った一冊。
それまで児童文学コーナーに入り浸っていた私にとって、
この本は文芸書コーナーへ足を踏み入れる大きな一歩となりました。

ここから私は角田光代さんの作品をたくさん読むようになります。


「本」をテーマにした9編の短編集。
そのなかの「旅する本」が特に好きな話です。

東京での一人暮らしで売ってしまった一冊の本。
特に思い入れがあった本ではなかったが、古本屋の店主の一言をきっかけに
この本は主人公の旅先に度々現れるようになります。

かわっているのは本ではなくて、私自身なのだと。

わたしの中身が少しずつ増えたり減ったりかたちをかえたりするたびに、向き合うこの本はがらりと意味をかえるのである。

「この本が、世界に存在することに(角田光代著)」より引用

この物語と同じように、私も何度もこの本を読み返しています。
そのたびに9つの中で好きな話の順位は変わり、感じ方もかわります。

またこの本は装丁が凝っていて、話ごとに文字のレイアウトも変わる美しい仕様です。
(文庫版では「さがしもの」というタイトルで発行されていますが、そちらは普通のレイアウトです。気になる方はハードカバーで探してください。)

図書館で借りられる本は基本的に何度も借りて読み返していましたが、
この本は内容が印象的で本自体が美しく、「自分で所有したい」という強い気持ちにさせられました。
地元のスーパーの中にある、小さな本屋さんのレジで
取り寄せた本を受け取ったときの嬉しい気持ちをまだ覚えています。

12才の時に本屋で受け取ってから、
ずっと私のいく先についてきてくれた一冊。

本を読むことが好きな私でしたが、物語を楽しむだけではなく
「本」という物体を楽しむきっかけになった1冊だと思います。



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