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ラプンツェル、ラプンツェル、おまえの髪を垂らしておくれ

「ラプンツェル」で検索すると、まず『塔の上のラプンツェル』が出てくる。
私は『塔の上の〜』の映画を観たことがないので、詳細は知らないけれど、グリムの原作とはかけ離れているらしいことは容易に想像がつく。

グリム“童話”といいながら、ラプンツェルは大人向きの話だと思う。子どもたちに語ると(意外に男の子たちも)興味津々に聴くけれど、「自分の知ってるラプンツェルとは違う」という感想が多く寄せられる。
「なんだか怖い」という声も。

プリンセスものにはお約束のようだが、ラプンツェルにも、魔法使いが登場する。
魔法使いと一括りに言っても、それぞれの背景など考えると、一概に大悪人とは言えないよなあ…と、大人になるにつれ、思うようになった。

ラプンツェルに登場する「魔女」はゴテルと呼ばれ、ラプンツェルの「名付け親」とされる。(野ヂシャのことをラプンツェルという)
ゴテル婆さんは、実は彼女なりにラプンツェル(野ヂシャも娘も)を大切に育てていたと思われる。

そもそもゴテルは、身重の妻のために庭の野ヂシャを盗んだ男(ラプンツェルの父)に、盗みを許す代償として、妻が子どもを産んだら、自分に渡すよう、無理やり約束させた。その時ゴテルは、自分が母親のように子どもの世話をするから、と言っている。

ラプンツェルを高い塔に閉じ込めたのは、意地悪ではなく、ゴテルなりの愛情だったのであろう。
彼女なりにラプンツェルを守ろうとしていたと思われる。

しかし、成長したラプンツェルは、高い塔の上にいても、「世間」から完全に隔絶されることはなかった。ある時、塔の近くを通りかかった王子はラプンツェルの歌声に魅せられる。
やがてゴテルが塔の上へ行く様子を見た王子は、見よう見まねでラプンツェルに声をかけ、その長い髪を梯子にして塔の上へ登っていく…

恋に取り憑かれたラプンツェルは、自ら墓穴を掘って、王子が塔の上に通っていることを口に出してしまう。
その時、ゴテルは「おまえを世間から遠ざけるために塔に閉じ込めておいたのに…」と激怒する。
ラプンツェルに愛情をかけていたからこそ、その裏切りが許せなかったのだろう。

怒り狂うゴテルは確かに恐ろしいけれど、親の立場で考えれば、「こんなにかわいがっているのに、コソコソと男を引き入れて密会してたの⁉︎」…ってことになるのではないか?

ゴテルに髪を切り落とされ、塔を追われたラプンツェルは、荒野で惨めに暮らすことになる。
ラプンツェルを失った王子は、絶望して塔から身を投げ、目が潰れてしまった。

王子は何年も彷徨い歩き、とうとうラプンツェルのいる荒野へやってくる。
めでたく再会…と思いきや、予想外の情報が飛び込んでくる。
ラプンツェルは、荒野で「自分の産んだ男の子と女の子のふたご」と一緒に暮らしている、というのだ!

男と密会していたうえに、子どもまでつくっていたとは、これはゴテル婆さんならずとも、怒っても仕方ない状況かも…

…という、グリムのラプンツェルのおはなし。

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