能登半島にて・・
WEDNESDAY PRESS 002
「能登半島にて・・」
かつて能登半島に「さんなみ」という素晴らしい民宿があった。
この宿のご主人は野菜もいしるも作る。いわゆる地産地消の魁のような存在であった。ここから「スローフードな宿」という連載が始まった。地元の食材を使い、少人数の宿泊者、一泊二日1万5千円までという条件の宿を取材したのであった。およそ10年あまり連載を続け、単行本も2冊まとまった。日本には、こんなに素敵な宿があるのかという発見続きの旅であった。
能登半島にはその先端部の珠洲の「湯宿さか本」の忘れがたい宿。「いたらぬつくさない宿です」とご主人は話すだが、その室内の美しさ、料理のレベルの高さには驚くばかりであった。こんな宿が二軒もあると、何かにつけて能登半島を訪れていた。しかし「さんなみ」がなくなり、次第に能登半島から足が遠のいていた。金沢、富山、新潟などには出かけるのだが、そこから帰還ということが多くなっていた。
だが、先日能登半島の七尾で日本料理の「一本杉 川嶋」輪島でフランス料理の「ラトリエ・ドゥ・ノト」に出会って一気に能登半島が近くなった。二人の料理人は熱い。能登半島愛に満ち溢れている。30歳代、40歳代の若さである。その世代とのネットワークが強固であり、情報交換・共有が盛んである。このような料理人に出会うと、こちらも元気と勇気をもらい、また彼らと何かできるのではないかと考えを巡らし始めているのだ。
能登半島詣の予感が忍び寄ってきた。
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