中国料理の迷宮

WEDNESDAY PRESS 023

かつて「中国料理の迷宮」という著作があった。
作者は勝見洋一さん。食から見た中国文化史であり、サントリー学芸賞を受賞した名著でもある。王朝の交代は料理をどう変えたか。社会主義が食文化に与えた影響など、具体的なエピソードを挙げながら綴る。
タイトル通り、読み進むにつれ、どんどん迷宮に入ってゆく感じであった。

先日「中国名菜譜をひもとく」というテーマで「一椀水」の南茂樹さんと、「京、静華」の宮本静夫さんの二人でコラボレーションを行ってもらった。それぞれ古典から5品ずつ料理を作るという趣向であった。
その料理を食べながら「中国料理の迷宮」という著作を思い出していた。
古典料理だが、二人の手にかかると全く古さを感じさせない。むしろ瑞々しさを感じるぐらいである。
フカヒレにしても当時とは食材の質が違う。料理名やレシピは同じでも、食材や調味料は大きく変わっている。
また豚肉の料理も大きな塊を大きな土鍋で煮込むだけの料理にしても、豚肉のクォリティが異なる。シンプルの極みのような料理だが、豚肉の脂の甘さや肉の香りなどでうっとりするほどの仕上がりとなっていた。
そんな料理を食べ終わり、過去と現在と未来が見事につながったなと考えていた。
過去は古典であり、それをしっかり知り、現在の解釈で想像する。その延長線上に未来の姿があるはずだ。
古典や伝統は長い時間の経過によって判断されるものであり、ことでもある。それを強く感じるコラボレーションであった。

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