「トンカツの真髄」

WEDNESDAY PRESS 069

人生最期の食事はビーフカツサンドが希望である。
だが、東京に行くとトンカツが食べたくなる。
昨年久しぶりに出かけ感動を覚えた「ぽん多本家」で夕食。
メニューにはカツレツと書いてある。
迷うことなくこれを注文。

しばらくしてテーブルに到着。
コロモはやや大粒、淡い茶褐色の揚げ具合だ。
まずはそのまま食べる。
コロモのサクッとした食感に続く、豚肉の瑞々しさ。
まさに溢れる肉汁という表現がピタリとくる。
次は塩を少しかける。
塩の力で豚肉の甘みが広がりをみせる。
しかし、コロモの脂分がほとんど気にならず、スッキリである。
今度は、常備されたソースをかける。
ウスターソースは適度な酸味と甘み。
これをかけることにより豚肉のコクを引き出したように感じる。
千切りのキャベツの甘さもいいのだ。
結構なボリュームはあるが、ペロリである。
だが、脂ぎったところがない。
香りとうまみだけが口中を駆け巡る。

豚自体は選び抜かれた豚のロースの芯のところだけを使う。
このうまみと麗しい香りに、すっかり魅了される。
トンカツはこうあらねばならぬと思ったりする。

そして驚いたのは揚げ油のこと。
この油は、毎朝入荷した豚肉の脂分を取り除き、それを低温でじっくり溶かすのである。つまり自家製のラードを作るということになる。
自らの脂で自らの身を揚げて入ることになる。
だからこそのスッキリ感であり、まろやかさなのだと思った。

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