無くて七癖
電車に乗ると、どこからともなくシートに振動が伝わってきた。
走る電車だ。揺れるのは当然だと思っていたが、どうやら、隣のそのまた隣の人の貧乏ゆすりのようだ。
時折、隣の人が座り直すような動きをして牽制を続けているがスマホに夢中の当の本人にはまったく届いていない。
いつかのテレビ番組で万歩計をつけたまま貧乏ゆすりをすることによって驚くべき歩数をカウントし、実は健康にいいのではないかと物議を醸した。
おそらく人によって言うことは変わるだろうが、血行促進やむくみの解消、その上なんと軟骨形成を促進する働きもあるようだ。
とは言え近くの人は気分が良いものではない笑
その次の駅で件の人物は電車を降り、隣の人はようやく小説に集中し始めた。
咳をするときに手を添えない人、ついつい声が大きくなる人、咀嚼音が大きい人、鍵を閉めたことを何度も確認する人、予備がないと気が済まない人、自分のルールが一番正しいと思っている人、などなど。
癖や拘りの強い人は世の中にごまんといる。
その全てが悪いものだとは思わないが、癖を不快に感じる人や自分の癖を直そうとする人もたくさんいるだろう。
僕自身の癖はなんだろうと考えてみると、鼻炎の為、普段油断すると口呼吸になっている。口呼吸になると知らず知らずにはぁはぁと少しだけ荒く聞こえるようだ。
特に運動をした訳でもない状況下で、近くの人間がはぁはぁ言ってたら変態だと思われても仕方ない笑
なので、僕はこの癖を直そうとしているのだが、これがなかなか大変なもので。よく会う方は僕がはぁはぁ言ってたら注意してください笑
でも、癖はきっと偏りで、人間の美しい部分はその偏りの中にあるんじゃないかな?と思う。
右を見ても、左を見ても同じものばかりだとこっちがおかしくなってしまう。
口呼吸は喉への負担が大きいので直したいところだが、性格の歪みなんかは合う人同士が集まればいいだけのこと。
無理に合わせたり直したりしなくてもいいよ。本人が変わりたいなら変わればいい。
どうしても一緒に居たい人と同じようになりたいなら努力すべきだ。
それはもう癖の話ではないかもしれない。もっと素晴らしいものかもしれない。
無くて七癖。あって四十八癖。
それも全部、自分を作る可能性に他ならない。
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