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SMBC日興証券における株主優待クロス取引 一般信用売りのリスクとコスト

はじめに

現物株の取得と合わせて逆日歩が発生する制度信用取引ではなく、逆日歩リスクのない一般信用取引を利用して株式の価格変動リスクを相殺し、決まった費用で株主優待を取得する一般信用株主優待クロス取引。
少しの費用で株主優待を取得できると多くの方が取り組まれるために、銘柄によっては一般信用売建可能株数の在庫が少なく、在庫の争奪戦となっています。

一般信用株主優待クロス取引のリスクについて

一般信用株主優待クロス取引は、価格変動リスクや逆日歩コストが発生するリスクはありません。
リスクは全くない取引ということなのでしょうか。
考えられるリスクを挙げてみます。

・株主優待廃止や改悪のリスク

そもそも株主優待とは、企業が株主に対して商品やサービスを提供することです。
無償で提供される場合もあれば、割引券というように優待価格で提供される場合もあります。
また、株主優待制度を設けている企業は多くの場合、自社の商品・サービスを提供していますが、なかには直接事業とは関係のない商品などを提供するケースも見られます。

すべての上場企業が株主優待を設けているわけではなく、株主優待が制度的に充実している日本の株式市場は、世界的に見れば稀なケースといえ、海外で株主優待を設けている企業は非常に少なくなっています。
このような制度なので、いつ企業が株主優待の内容を変更してもおかしくありません。
株主優待狙いで一般信用株主優待クロス取引を行った後に、株主優待廃止や改悪があることも考えられます。
そうなると、現渡を行い取引を手じまうまでの貸株料が無駄なコストとして損になります。

最近でいうと、個人投資家に人気だったオリックス(8591)が株主優待廃止を発表し、優待投資家に衝撃を与えました。
2024年3月末をもって、株主優待を廃止する。
優待廃止を発表し、株価は一時約5%下落しました。

株主優待制度の廃止に関するお知らせ(公式ページ)

・権利付最終日を間違えるリスク

株主優待を受け取るには、権利付最終日(権利確定日の2営業日前)までに現物株を保有しておく必要があります。
権利確定日は多くの企業が月末に設定していますが、まれに15日や20日が権利確定日となっていることもありますので注意してください。
一般信用株主優待クロス取引を行って優待を取得する手法では、コストを抑えるために権利確定後、できるだけ早く取引を終了する必要があります。
株主優待の権利が取れなかったという機会損失リスク、15日や20日が権利確定日となっている企業の株式を、月末権利確定日と誤って無駄な貸株料を支払ったりするというリスクが考えられます。

・注文発注失念リスク、作業時間の時間損失リスク

一般信用株主優待クロス取引は信用取引を利用します。
証券取引になじみのない方には敷居が高い取引手法かもしれません。

コストを抑えて行う取引の流れは
一般信用売り(今週中)

一般信用売り指値変更

制度信用買い

現引き

現渡

一つの銘柄のクロス取引をするためにこれだけの作業が必要になります。
慣れれば簡単なのですが、最初は難しかったり注文を失念してしまうリスクが考えられます。

株主優待クロス取引には少額ですがコストがかかります。
数千円から数万円の価値がある株主優待を取得するためにかかるコストですが、工夫次第ではかなり少なく抑えることができます。
その手法の一つとして、SMBC日興証券口座の一般信用売りの取引を今週中注文にすることが挙げられます。

面倒だからやっていないという方も多いのではないかと思いますので、実際どのくらいの費用削減効果があるのか実証していきます。

SMBC日興証券の今週中注文について

そもそもなぜ今週中注文を使うのでしょうか。
一般信用株主優待クロス取引で大切なことは、一般信用売建可能株数の在庫を押さえることです。
権利付最終日近辺になってくると、人気の株主優待がもらえる株式の一般信用売建可能株数の在庫は0になってしまうことがよくあります。

そのために、在庫がある早い時期から在庫を押さえる必要があります。
銘柄によっては、1ヶ月以上前から注文しないと確保できないものも存在します。
ツイッターで日々、数か月先までの株主優待の中で、一般信用売りができて価値的に見てよさそうな銘柄の在庫状況や概算コストをツイートしているので、そちらも参考にしてください。

一般信用取引を利用した株主優待クロス取引には、一般信用売りで建てている期間に一日当たり貸株料というコストがかかります。
いかに少ないコストで株主優待を取得するかが大切ですので、このコストをいかに少なくするか。
そこが重要になってきます。

一般信用株主優待クロス取引での運用を利回りで考えた場合

利回り=(株主優待価値-コスト)/(株価×株数)×100

コストを少なくするためにはこのコストに当たる貸株料を少なくする。
一般信用売建注文を今週中注文とすることで、次の金曜日まで貸株料がかかる日数を先送りできます。

では実際どのくらいのコスト削減効果があるのか検証します。

一般信用株主優待クロス取引コスト算出計算式
(株価×株数×0.025/365)+(株価×株数×0.014×日数/365)

・【ケース1】

6月株主優待権利付銘柄すかいらーく(株価:1,542円)
100株6月3日の夕方5時、SMBC日興証券で在庫確保するケース
優待価値は2000円

・当日中注文
(1542×100×0.025/365)+(1542×100×0.014×26/365)
163円

・今週中注文
(1542×100×0.025/365)+(1542×100×0.014×19/365)
132円

当日中注文と今週中注文のコスト差
31円

・【ケース2】

6月株主優待権利付き銘柄すかいらーく(株価:1,542円)
1000株6月3日の夕方5時、SMBC日興証券で在庫確保するケース
優待価値は17000円

・当日中注文
(1542×1000×0.025/365)+(1542×1000×0.014×26/365)
1643円

・今週中注文
(1542×1000×0.025/365)+(1542×1000×0.014×19/365)
1229円

当日中注文と今週中注文のコスト差
414円

今週中注文のひと手間を加えて優待クロスの抑えられる費用は、2000円のリターンに対して31円、17000円のリターンに対して414円。
ということになります。

投資のリスクとリターンについての価値観は人それぞれだと思います。
ご自身に合った投資手法を選択する一助になれば幸いです。


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