宇宙杯 🚀 かっちー賞
冬の沙々杯に続いて2度目の審査員。
春らしい句を選ぶよう心がけた。当たり前だが、季節あっての季語。季語以前に、春らしさとは何?ということだ。冬の緊張からの開放感、新生活へのワクワク、フレッシュな出会い、別れの寂寥...そんな句を選んだつもり。
やわらかな爆弾抱いて春の恋
蟹沢ちゃむ
恋の句を第1位に選んでしまう。やわらか、抱いて、春、恋というソフトな言葉の中で「爆弾」が効いてる。恋人に発動させるのか、自爆用なのかはわからないが、「やわらかな爆弾」。ふわふわした心地よさと、はらはらした危うさをあわせもった、初々しい恋。上手い表現と思いました。季節は春がぴったり。好きです。
春天へ一段飛ばしコンバース
うみのちえ
冬の大会金賞、てまりさんの《跳ね翔んで青天井の手毬かな》に構図が似てる。足元から上空の青空に向けて開放的な視界。こういう突き抜けたのが好きなんだな、とあらためて自覚。冬の手毬も良かったが、春のコンバースも軽やかでテンション上がる。コンバースは真新しい白、一段飛ばしからは地下鉄出口、都会で一人暮らしをはじめた若者の躍動感を想起した。この句も春、春天でないとダメ。
真新し石鹸並ぶ春校舎
Reiko Ishida
新入生を迎える校舎。フレッシュさを新しい石鹸で表現されたのはもちろん素晴らしいが、「春校舎」として季語を回収されたところに唸らされた。誰もが想像出来る光景でも、俳句として整えるのは案外難しかったりする。「春」や「春〇〇」が適切に使えれば、季語に悩まなくても随分自由に俳句が詠めるように思っている。そんなお手本に思われた。
「ジュピター」の蝌蚪五線紙をうごめきて
庵
私は楽譜はほとんど読めないが、上手いなと思った。ショパンなんかの楽譜がオタマジャクシ並ぶだとすると、複雑かつ文学的とされるマーラーの楽譜が「蝌蚪うごめく」というのは、なんとなくわかる気がする。冒頭に書いた、春らしい句を選んだとは多少ズレるのだが、あまりにも秀逸に蝌蚪という季語を使われていたので、選ばせていただいた。
ふらここへ明日の引っ越し報告す
ゆず
自分が遊んだのか、自分の子供を遊ばせたのか。たくさんの思い出が詰まった近所の公園。ブランコ(ふらここ)遊びでは、上達するまでに練習もしただろうし、怪我をしたこともあるかも知れない。子供の成長過程を見守ってきたそんなブランコに、引っ越しのご報告。ブランコに多くのことを語らしめている句。ゆずさんの白杯決勝句《理由聞かぬ母と一緒に大豆干す》も、大豆干すに多くを語らしめている。上手いなぁ、と思う。
生春巻に透く春や海老ニつ
プッククン
生春巻のライスペーパーから海老とともに透ける春の野菜達。こんなところにも穏やかな春が。控えめな中にも自己主張。破調ながらリズム感抜群。亀山審査員、第1位。
その他の審査員による選句
白金賞、金賞、銀賞の発表
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