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【企業分析】JT(日本たばこ産業)

2914 (東証プライム)
時価総額:7.29兆円
株価:3,645円
売上高:2.65兆円
営業利益:6,530億円

事業内容: たばこ、医薬品、食品の製造・販売
設立年:1985年
本社:🇯🇵 東京都港区虎ノ門四丁目1番1号
(神谷町トラストタワー27階)
代表者: 寺畠正道(代表取締役社長兼CEO)
従業員数: 連結:55,381人、単独:7,154人
主要株主: 財務大臣 33.35%

概要

日本たばこ産業株式会社(英文社名:JAPAN TOBACCO INC.、略称:JT)は、日本の食料品製造会社。たばこをはじめとし、医薬品、加工食品などを製造している。

日本たばこ産業株式会社法(JT法)に基づき、日本専売公社の事業を引き継ぎ、1985年(昭和60年)に特殊会社として設立された。

JT 本社

たばこ事業に加え、医薬事業と加工食品事業も展開しています。 医薬事業は、「循環器・腎臓・代謝」「免疫・炎症」「中枢」の3領域を中心に、医療用医薬品 の研究開発、製造販売を行っています。

海外に主力を置いているため、売上の6割は海外事業であり、タバコ関連企業では世界第3位の規模となっています。

プロダクト・ビジネスモデル

JTグループは、130以上の国と地域で製品を販売するグローバルたばこメーカーです。

医薬事業と加工食品事業も展開していますが、収益の9割はたばこ事業によるものです。

たばこ事業

たばこ事業は、2022年よりスイス・ジュネーブに本社機能を設け、世界各国でたばこ製品を製造販売しています。

主な市場として、日本、フィリピン、台湾、イタリア、スペイン、英国、ルーマニア、ロシア、トルコが挙げられます。製品ポートフォリオにはPloomやLogicなどのRRP*に加え、Winston、Camel、MEVIUS、LDといったCombustibles のトップブランドがあります。 

* RRP (Reduced-Risk Products):喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品 

多様なニーズに合わせた選択肢を提供

JTは加熱式たばこの「プルーム」ブランドから「プルーム・エックス・アドバンスド」と、インフューズドたばこの「ウィズ」ブランドから「ウィズ2」を展開しています。多様なニーズに合わせた選択肢を提供することで、顧客満足のさらなる向上と、JTが目指す共存社会の実現に貢献できると考えています。

「プルーム・エックス・アドバンスド」は、Ploomブランドの最新加熱式たばこ用デバイスです。
最高加熱温度を約320℃まで向上させることで、吸いごたえを引き出すと同時に、旨さのために温度と気流を緻密にコントロールするJT独自の加熱技術“POWER HEATFLOW”。スティックを挿すだけで、自動で加熱がスタートする自動加熱機能をはじめとしたシームレスな使い心地。そして、なめらかな曲線美のコンパクトデザイン。

これらの特徴により、たばこスティックを挿す瞬間から吸い終わりの余韻まで、あなたが加熱式たばこに求める“1本の愉しみ”を追求しました。

「ウィズ2」は、健康懸念物質(※1)平均95~99%オフ(※2)(※3)。また、たばこのにおいをほぼ感じません。オンオフ自由自在で、好きな時に好きな分だけ愉しめ、より自由な喫煙スタイルを提供します。

本製品の使用には、健康上のリスクが伴います。紙巻たばこの煙1パフとwith2のたばこベイパー1パフに含まれる9つの健康懸念物質の量を比較。

(※1)
たばこ葉を燃焼させることによって発生する煙に含まれる物質のうち、WHOが健康へのリスクの観点から含有量の低減を優先している9つの物質。

(※2)
紙巻たばこの煙1パフ当たりの健康懸念物質の量に対するwith2のたばこベイパー1パフに含まれる健康懸念物質の量の割合を物質ごとに算出し、平均したところ、ウィズシリーズの低減率は平均90%から平均95%。

(※3)
2023年8月時点で当社が販売しているウィズ用たばこカプセルを使用した場合。

たばこ事業のSWOT分析

たばこ事業における生産市場シェア(2022年度)

たばこ事業は、販売数量で世界第3位を誇り、世界における販売数量シェア上位10ブランドのうち3ブランドを製造・販売しています。

顧客に信頼される高品質なたばこづくりを目指し、グローバルな製造体制を構築しています。

日本国内では3つのたばこ製造工場および2つのその他たばこ関連工場が、日本を除く27の国・地域では33のたばこ製造工場(その他たばこ関連工場含む)が稼動しています。

医薬事業

医薬事業は、「循環器・腎臓・代謝」「免疫・炎症」「中枢」の3領域を中心に、医療用医薬品の研究開発、製造販売を行っています。
主要な製品には、「コレクチム®軟膏0.5%、0.25%」「リオナ®錠250mg」「エナロイ®錠2mg、4mg」などがあります。

医薬事業のSWOT分析

加工食品事業

加工食品事業は、冷凍麺、冷凍お好み焼、パックごはんを主力とする冷食・常温事業、酵母エキス調味料などを主力とする調味料事業を展開しています。
主要な製品には、冷凍麺の「冷凍さぬきうどん」や、冷凍お好み焼の「ごっつ旨いお好み焼」、酵母エキス調味料「バーテックス」などがあります。

加工食品事業のSWOT分析

市場動向

たばこ製品は、Combustibles とRRP (Reduced-RiskProducts)の二つのカテゴリに大別できます。

Combustibles

Combustiblesには、紙巻たばこ、FCT (fine cuttobacco)、パイプ、シガー、シガリロなどが含まれます。

紙巻たばこは、あらかじめ紙でたばこ葉を巻いている製品ですが、FCTは顧客が巻紙を用いて葉たばこを手巻きする製品です。2022年度の世界のCombustibles 総需要は約5.1兆本相当、金額ベースの市場規模は約103兆円です。

世界最大の市場は中国であり、世界のCombustibles総需要の45%以上を占め、インドネシア、米国、ロシア、トルコ、日本、ベトナムがそれに続きます。

世界のCombustibles総需要は、本数ベースで見ると減少トレンドにありますが、金額ベースの市場規模は製品単価の上昇により成長を続けています。

RRP

RRPには、加熱式たばこ、E-Vapor、無煙たばこなどが含まれます。これらは、たばこ葉を燃焼させない製品であり、顧客にとって喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性があると考えられています。

加熱式たばこには、たばこ葉を加熱することでニコチンを含むエアロゾルを発生させるHTS (heated tobaccosticks) と、たばこ葉を直接加熱せずに液体(リキッド)を加熱・霧化してたばこ葉を通過させるInfused (infusedtobacco capsules)があります。

E-Vaporは、たばこ葉を使用せず、ニコチンが含まれるリキッドを加熱して愉しむ製品であり、Open tanks、Closed Podsや Disposablesといったタイプの製品があります。無煙たばこ(Oralたばこ)は、小さなパウチなどを口に直接含んでさまざまな味・香りを愉しむ製品であり、たばこ葉を含むスヌースと、たばこ葉を含まないニコチンパウチがあります。

2022年度のRRPの市場規模は世界全体で約9兆円と推計され、製品ごとの市場規模では、HTSは日本、E-Vapor は米国、無煙たばこは北欧が最大です。

顧客のニーズ等により、RRPの市場規模は国々によって異なり、Combustiblesに比べれば小さいものの、HTSを中心にここ数年着実に売上が伸長しており、今後もHTSの成長が、RRP市場規模の伸長を牽引していくと見込んでいます。

今後の見通し

グローバルに展開する競合他社においても、ここ数年間でCombustiblesとRRP両方の製品ポートフォリオを拡充しており、顧客の選択肢は増えています。JTグループのたばこ事業は、販売数量で世界第3位(中国専売公社を除く)を誇り、CombustiblesとRRPを多岐にわたって展開しています。

Combustiblesの市場規模(金額ベース)は、当面の間拡大を続けると見込んでおり、RRPは総需要と市場規模(金額ベース)の両方で伸長していくと見込んでいます。

RRPにおいては、主にHTSが成長を牽引していくと見込んでおり、E-Vaporとニコチンパウチがそれに続く主要セグメントとして期待されています。なお、RRP市場の成長率は、製品のイノベーション、消費者の嗜好、RRP製品を巡る規制・税制等の動向の影響を受けるものと見られています。

過去5年間の実質的推移

たばこ事業は、GFBの伸長による継続的な市場シェアの獲得とM&Aにより、総需要のトレンドを上回る販売数量の成長を過去5年間達成してきました。

また、プライシングの着実な遂行とコストの最適化により、為替一定ベースのcore revenueおよび調整後営業利益の継続的成長を実現しています。

GFB販売数量は、過去5年間で着実に増加し、2022年度には3,600億本を超え、JTグループの総販売数量の約70%を占めています。

業績

売上収益

2022年度の売上収益は、全ての事業において増収したことにより、前年度比14.3%増の2兆6,578億円となりました。

調整後営業利益
2022年度の財務報告ベースの調整後営業利益は、円安に伴うポジティブな為替影響により、前年度比19.2%増の7,278億円となりました。

営業利益
2022年度の営業利益は、調整後営業利益の増加に加えて、日本におけるたばこ事業運営体制強化施策等の費用の剥落により、前年度比31.0%増の6,536億円となりました。

資産合計・資本合計・自己資本比率・親会社の所有者に帰属する持分

当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,739億円増加し、6兆5,481億円となりました。これは、為替影響によるのれんの増加があったことに加え、現金および現金同等物の増加があったこと等によるものです。

当連結会計年度の資本合計は、前連結会計年度末に比べ7,307億円増加し、3兆6,168億円となりました。これは、配当金の支払いがあったものの、在外営業活動体の換算差額の増加があったことに加え、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上による利益剰余金の増加があったこと等によるものです。

経営者

寺畠正道 代表取締役社長

1965年生まれ、清風南海高校卒業、89年京都大学工学部卒業後、日本たばこ産業(JT)入社。2005年秘書室長、08年経営企画部長に就任。その後、執行役員、JTインターナショナル副社長・副CEOなどを経て、18年1月執行役員社長、同年3月代表取締役社長に就任、現在に至る。広島県出身。

1985年の民営化以降、最年少の若さで社長就任となる。小泉前社長は後任に寺畠氏を選んだ理由について「グローバルなセンスを持ち、JTグループを中長期的に成長させる方策について考えが一致した」と説明した。寺畠氏は海外事業に長く携わっただけでなく、国内で経営企画部門を歩み、非たばこの食品事業も担当。国内たばこ市場は健康志向を背景に縮小傾向にあり、加熱式たばこなど新事業への対応遅れも指摘されている。

 寺畠氏は「世界では未開拓の市場が多くある」とし、国内は「加熱式たばこをしっかり進めていく」と語っている。

株価推移

JT株は2016年から2021年にかけてずっと下がり続けていた。この間の最高値は2016年2月1日の4,850円、それが2020年7月31日には1,796円と2,000円を割り込んで最安値を付けている。下落幅は約63%、ほぼ半値、それすらも割り込む価格になっていた。

株価は究極的にはファンダメンタルズと呼ばれる企業の業績を映し出す鏡と考えられる。それでは、JT(日本たばこ産業)の業績はこの5年でそこまで悪化したのだろうか?

実際に業績を追いかけてみよう。下の表が有価証券報告書から数字を拾った、JTの過去5年の売上高と純利益の推移をグラフ化したものだ。

これを見ると、確かに株価のバリュエーションを考える上で最も重要な利益とされる純利益は、下落傾向にあるのは否めない。しかし、その下落率は約36%であり、株価の下落率と比べると、相対的には穏やかなものであった。

同社は日本株最強の高配当銘柄として有名であり、株価の下落によりその魅力はさらに高まっていた。
JTの主力事業であるたばこ事業が堅調だったうえ、円安傾向に推移した為替も追い風となったため、2022年以降は株価も大きく回復している。

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