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【企業分析】デンソー

6902 (東証プライム)
時価総額: 5.8兆円
株価: 7,300円
売上高: 5.5兆円
営業利益: 3,417億円
(2022年)

事業内容: 自動車部品の研究・開発・生産
設立年:1949年、1951年上場
本社: 日本🇯🇵 愛知県刈谷市昭和町
代表者: 有馬浩二(代表取締役社長兼CEO)
従業員数: 167,950人
主要株主: トヨタ自動車24.75%、豊田自動織機 9.08%、トヨタ不動産株式会社 4.36%
日本生命2.83%、アイシン 1.64%

概要

株式会社デンソーは、愛知県刈谷市を本拠に置く自動車部品メーカーである。2009年(平成21年)以来、自動車部品業界では国内最大手である。TOPIX Large70構成銘柄の一つである。かつては、TOPIX Core30の構成銘柄の一つでもあった。

35の国と地域にグローバル拠点を持ち、研究、生産、営業拠点を構え、グループ会社の総数は198におよびます。
デンソーでは、付加価値のあるテクノロジーを活用し、事業戦略と一体化した知財戦略を推進しており、特許保有件数は42,000件にもなる。

自動車部品メーカーの中では、世界No.2の売上規模をほこります。売上に占める海外比率は54%。

デンソー本社

プロダクト・ビジネスモデル

車載事業

エレクトリフィケーションシステム

ハイブリッド車、電気自動車の駆動・電源システムと関連製品、オルタネーター、スターターなどの電源供給・始動システム製品などの開発・製造
電動パワーステアリング、制御ブレーキシステム用モーター、ECUの開発・製造
ワイパーシステム、パワーウィンドウモーター、エンジン制御用モーター、ブロワーファンなど、小型モーターシステム製品の開発・製造

パワートレインシステム

燃焼から吸気・排気系までの一貫したガソリン・ディーゼルエンジンマネジメントシステムの開発・製造
VCT*・排気センサー・プラグなどのエンジン関連製品などの開発・製造
ハイブリッド車で培った電駆動・熱マネジメント、および燃料電池の状態制御により、燃料電池の高効率発電を支える製品・システムの企画・開発

* VCT:Variable Cam Timing


サーマルシステム

熱マネジメントシステムと快適空間を構成する、自動車・バス用エアコンシステムの開発、製造
ラジエーター、コンデンサーなどの冷却用製品の開発・製造

モビリティエレクトロニクス

モビリティ全体の電子システム、サービス、プラットフォームの開発・提供
HMI*1コントロールユニット、メーター、HUD*2、センターインフォメーションディスプレイなどのコックピット製品の開発・製造
TCU*3、ETC*4車載器、路車間・車車間通信機などのコネクティッド製品とサービスの開発・製造
画像センサー、ミリ波レーダー、ソナーセンサー、自動運転ECU*5、エアバッグ用センサー & ECU、DSM*6などのAD*7 & ADAS*8 製品の開発・製造
パワートレイン制御ECU、ボデー制御ECUなどのエレクトロニクス製品の開発・製造
ペダル踏み間違い加速抑制装置など、後付け製品の企画・開発

*1. HMI:Human Machine Interface
*2. HUD:Head-Up Display
*3. TCU:Telematics Control Unit
*4. ETC:Electronic Toll Collection System
*5. ECU:Electronic Control Unit
*6. DSM:Driver Status Monitor
*7. AD:Autonomous Driving
*8. ADAS:Advanced Driver Assistance System

先進デバイス
油圧制御バルブ等の駆動系製品、ELCM*1等のエバポ製品、MCV*2等のエネルギーマネジメント製品の開発・製造
車載用パワー半導体、IC などのマイクロエレクトロニクスデバイスの開発・製造
車載用/非車載用センシングシステムの開発・製造

*1. ELCM:Evaporative Leak Check Module
*2. MCV:Multi-flow Control Valve

非車載事業

インダストリアルソリューション

自動化設備・モジュール、産業用ロボットに代表される産業向け機器の開発・製造
ハンディターミナル、QR、RFID*、決済、認識ソリューションなどの社会向け機器の開発・製造およびサービスの提供(入退室管理システム、食堂自動精算システム、顔認証システム ほか)

* RFID:Radio Frequency IDentification 電波を用いて、複数のタグを非接触でまとめてスキャンするシステム

フードバリューチェーン

施設園芸ターンキーソリューション*(ハウス資材・機器・栽培コンサルティング・クラウドサービス)の製造・販売・アフターサービス
車載用冷凍機、小型モバイル冷凍機の製造・販売・アフターサービス

* 農業に携わるすべての人が安定的に農作物を生産できるよう、最適に組み合わされた製品・サービス群

未来を動かす重点分野

未来社会を見据え、新しい価値をカタチにするために4分野のコア技術の開発に注力しています。

 ・Electrification
 ・Advanced Safety and Automated Driving
 ・Connected Driving
 ・Factory Automation /AgTech

市場動向

自動車部品業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2018年から2020年まで減少傾向にありましたが、2021年には大幅に増加しています。

自動車部品業界の動向と現状(2021-2022年)

2021年の自動車部品生産額6%増 3年ぶりの増加も材料高が足枷に

経済産業省の「生産動態統計(2022年6月24日公表)」によると、2021年の自動車部品の生産金額は、前年比5.5%増の7兆5,951億円でした。3年ぶりの増加に転じました。

自動車部品の生産金額の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)

グラフを見ますと、多少の増減はあるものの近年は8兆円台後半で推移しています。一方、2020年は新型コロナウイルスによる世界的な感染拡大が響き大幅減、7兆円台前半まで落ち込みました。2021年は3年ぶりに増加に転じた一方で7兆円台半ばまでの回復となり、コロナ前である2019年の水準には届いていない状況です。

2021-2022年の自動車部品業界の動向を見ますと、コロナ禍からの業績回復が見られた年でした。日本や北米、欧州、アジア地域では半導体や原材料不足による自動車減産の影響はありましたが、ディーゼル用エンジン、ハイブリット車や電気自動車部品、先進安全製品の需要が増加しました。

一方、資材費や物流費の高騰、急激な円安などのコストが足枷になり収益を下げる要因になっています。

自動車部品は、一台の自動車に約3万点の部品が使われるとも言われ、自動車産業を支えています。世界経済の影響を受けやすい業界で、世界同時不況時には自動車販売台数が大幅に減少、自動車部品業界も大ダメージを受けました。一方、北米や欧州、中国などの主要市域の経済が回復するとともに、自動車部品業界の業界規模も増加基調へと変わっています。

近年では東南アジアの需要が旺盛に。1人当たりのGDPが3,000ドルを超えると自動車が普及し始めるとも言われおり、2020年現在の1人当たりGDPがインドネシアが3,800ドル、フィリピンが3,200ドルとなっており、現在、該当時期に突入しています。

直近では、2021年の世界自動車販売は、インドネシアとインドが伸びており、なかでもインドは前年から30%近く増加するなど、新興国に勢いがあります。

自動車部品業界 売上トップ5(2021-2022年)

※は自動車部品関連の部門売上高。自動車部品業界の2021年売上高ランキングを見ますと、トップがデンソー、2位がアイシン、豊田自動織機、住友電気工業、日立製作所と続き、トップ3がトヨタ系で占めています。

2021-2022年の自動車部品業界の業績は、5社中5社ともに増加となりました。住友電気工業を除く4社が2ケタ増となり、前年から12~62%の大幅増を記録しています。また、5社の売上高はコロナ前の2019年を大きく上回りました。

自動車メーカー傘下の企業で構成 上位にはトヨタ系が多く占める

自動車部品業界とは、自動車の部品を作るメーカーの形成する市場および業界を指します。

一口に自動車部品と言ってもその数は多く、エンジン、変速機、サスペンション、シート、ブレーキ、ハンドル、ECU(エンジンコントロールユニット)、熱交換器、ワイヤー、電子制御システム、エアバッグ、EPS(電動パワーステアリング)など多岐にわたります。

国内の自動車部品業界は、トヨタ系、日産系、ホンダ系など大手自動車メーカーの系列系企業、独立系企業、海外系企業に分かれます。

大きなシェア占めるのが系列系部品メーカーで、特に、デンソー、アイシン精機、豊田自動織機、トヨタ紡織、ジェイテクト、豊田合成などトヨタ系自動車部品メーカーが多いのが特徴です。

系列系の自動車部品メーカーが多いため、当然のことながら自動車業界の影響を大きく受けます。自動車業界の推移を見ていただけると分かるのですが、グラフの推移が自動車部品業界とほぼ同じ動きをしていることが分かります。トヨタや日産、ホンダなど大手自動車メーカーの傘下にある企業が多い業界だけに、自動車業界の業績しだいで、今後の自動車部品業界の動向は変わってきます。

世界の自動車部品業界の市場シェア

自動車部品事業会社の2021年度の売上高を分子に、後述する市場規模を分母にして、2021年の自動車部品業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位はBOSCH(ボッシュ)、2位はデンソー、3位はZFとなります

2021年自動車部品業界の世界市場シェアランキング

1位はドイツのボッシュ社となっています。ドイツを代表する産業機器メーカーで、自動車部品の分野ではエンジンから電子機器まで幅広く製造しています。ドイツの自動車大手であるダイムラーやVWとは資本関係を持たず、独立系の部品会社であることが特徴です。

2位はデンソーです。ボッシュやコンチネンタルとは異なり、トヨタとの関係性を非常に強く持っています。トヨタ自動車との擦り合わせ型の部品開発を得意とします。

3位はドイツのZFです。トランスミッションやシャシーなどのパワートレイン強く、米国のTRWの買収によりグローバル展開を加速しています。

4位はドイツのコンチネンタルとなります。タイヤ事業に加えブレーキ制御やカーエレクトロニクスといった自動車システムにも強みを有しています。

6位は現代モービスです。現代自動車のTier1サプライヤーとして強みを持ちます。

7位はカナダの自動車部品大手のマグナです。米国の自動車メーカーとの関係が強く、自動車シート等に強みを持ちます。

市場規模

調査会社エクスパートマーケットリサーチによると、2020年の同業界の市場規模は3800億ドルです。2027年にかけて、年平均3%で成長し、同年には4530億ドルに拡大することが見込まれます。

業界の再編

自動車業界はすそ野が広い産業であり、自動車大手からの独立、技術革新のための規模を追求した経営統合やM&Aなどが盛んに行われています。直近の買収マルチプル(売上高倍率)は概ね1倍弱となっています。

自動車部品業界の買収マルチプル(売上高倍率)

自動車部品業界の主要M&A

2007年 Continentalによる独Siemens VDOの買収
2008年 Schaefflerによる独Continentalの買収
2010年 投資ファンドが英Tomkins買収
2011年 ニュージーランドの投資ファンドがHoneywellの自動車部品事業を買収
2011年 仏Valeoが日本のファイルズを買収
2011年 日清紡が独TMD Frictionを買収
2012年 米Delphiが仏FCIを買収
2012年 カナダのMagnaが独Ixeticを買収
2013年 米Gentex CorporationがジョンソンコントロールのHomelink事業を買収
2014年 ContinentalがVeyance Technologiesを買収
2014年 投資ファンドが英TomkinsよりGates Corporationを買収
2014年 ZFとTRWが経営統合
2014年 ハンコックタイヤと投資ファンドがVisteonのClimate Control事業を買収
2014年 Learによる自動車向けレザーのEagle Ottawの買収
2015年 独Mahle(マール)がデルファイのThermal systemを買収
2016年 ジョンソンコントロールズが自動車シートのアディエントを分社化
2016年 サムソン電子が音響大手のハーマンを買収
2016年 KKRがカルソニックカンセイを買収
2017年 デルファイテクノロジーズが分社化
2018年 テネコがFederal Mogulを買収
2018年 LGエレクトロニクスがオーストリアの照明大手ZKWを買収
2018年 KKR(カルソニックカンセイ)がマニエッティ・マレリを買収
2018年 オートリブがVeoneerの分社化
2018年 ハネウェルからGarrett Motionが分社化
2018年 旭化成が自動車内装ファブリック大手のSage Automotive Interiorsを買収
2019年 フォルシアによるクラリオン買収
2020年 BorgWarnerがデルファイテクノロジーズを買収
2020年 海信集団(ハイセンス)が車向け空調部品大手サンデンを買収
2022年 フォルシアがドイツの照明大手ヘラーを買収
2022年 マレリが簡易再生(民事再生)手続きへ移行

業績

2022年3月期決算は売上高5兆5155億円、営業利益3412億円 来期は売上高6兆3500億円、営業利益5600億円を見込む

増収増益となった要因としては、半導体不足などによる車両減産ほか外部環境の影響あるも、新型コロナウイルス感染症による影響からの回復と採算改善努力などを挙げた。

 また、来期の業績予想については、好調な売上収益と採算改善の積み増し、変動対応力のさらなる強化や経営基盤強化の取組みで売上高6兆3500億円、営業利益5600億円を見込む。要因の中では、変動対応力の強化が大切であるとした。

年間配当については、2022年3月期は前回公表比+5円の165円。来期については180円(中間、期末各90円)を予想する。

 なお、業績に影響を与えている半導体不足については、半導体の製造工程における長めのサプライチェーンなどを挙げ、1年程度続くのではないかとの見通しを示した。

経営者 

代表取締役社長は有馬浩二氏。

京都大学工学部卒。1981年に日本電装株式会社(現 株式会社デンソー)に入社。生産技術部に配属となり、樹脂材料の開発に取り組んだ。1989年にデンソー・マニュファクチュアリング・テネシーに出向し、現地にて生産の立ち上げから安定稼働までをリードした。

1995年に帰国後、SCオルタネータの開発に携わり、世界初となる加工技術を確立、SCオルタネータの開発・量産化に成功した。2005年に、デンソー・マニュファクチュアリング・イタリア社長に就任し事業の黒字化に貢献、2008年6月に株式会社デンソー常務役員に就任した。

帰国後、2009年から電機事業部を担当し、SCオルタネータの海外生産体制の確立とグローバルな拡販、アイドルストップスタータやモータジェネレータの開発・量産化を牽引した。

2013年に生産革新センター長に就任し、生産にかかわる技術開発および生産を統括。2014年6月デンソー専務役員を経て、2015年6月株式会社デンソー代表取締役社長に就任。

財務状況

財政状態計算書

キャッシュフロー計算書 

株価推移

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