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シリーズファンすら誰も遊んでいないゲーム『サモンナイト グランテーゼ』とは何だったのか

『サモンナイト』と言えば、かつては人気だったゲームシリーズとして有名だ。
現在では、シリーズ最新作の『サモンナイト6』発売からも8年が経過してなお次のシリーズ展開は無し……どころかシリーズの公式サイトも消失したため、すっかり過去の存在と成り果ててしまった。
そして、今となっては時折「サモンナイト懐かしい!アティ先生エロかったよなw」と雑な思い出が語られるくらいの存在となり、そうした雑な感想を見る度にシリーズに思い入れの強いファン(俺とか)が「サモンナイトはそういう浅いキャラ萌えだけの作品じゃないんだが?こいつアティの過去の罪も知らねぇんだろうな」と苛立つことになったりしている。

オープニングは相変わらずufotable制作

で、今回は『サモンナイトグランテーゼ 滅びの剣と約束の騎士』の話だ。
こいつはPS2で発売されたサモンナイトの外伝作品の一つで、タイトルは過去作の『サモンナイトエクステーゼ 夜明けの翼』と類似しているが、特に世界観等の繋がりは無い。ただ、システムには類似した部分があるので間接的な続編のような存在とは言えるだろう。

そんな本作だが、シリーズの中でも特に誰も遊んでいないのが特徴だ。
その空気っぷりたるや、かつてシリーズファンのコミュニティで「グランテーゼってどうなの?」と質問しても、精々「ああ……そんな作品もあったね」くらいの返事しか帰ってこないほどだ。
黒歴史化されている・叩かれている様子でもない。本当にただプレイヤーが少ないし、プレイした人も語っていない。そんな様子だった。
ということで今回はそんな超空気ゲー、そして旧フライト・プランの断末魔である本作について紐解いてゆこうと思う。

なお、まさか今から本作を新たに遊ぼうと思っている人はいないとは思うがネタバレについては一切配慮していないのでその点はご了承願いたい。

ゲームシステム

自らのシステムを否定するな

さて、本作のゲームジャンルは3DアクションRPGで、先述した『エクステーゼ』同様、二人の主人公を切り替えて戦うシステムが特徴となっている。
エクステーゼでは主人公が二人とも剣士で、スタイルの違いはあったものの操作感としてそれほど大きな違いはなかった。対して本作では男主人公のロストは剣を、女主人公のミレットは銃を武器としており、明確に戦闘スタイルが異なる。

そのため、二人の主人公を使い分ける意義が増して……いればよかったんだが、実際には遠距離からノーリスクで攻撃できるミレットの優位点が大きすぎて使い分ける意義がほとんど無い。終盤のボスですらミレットで逃げながらひたすら射撃するだけで完封できる奴だらけで、律儀にロストで接近戦を挑むのは縛りプレイでしかない。
この点はスタッフも問題視していたのか、これを解決するために

  • 序盤のミレットはまともにコンボが繋がらないので、ヒット数を稼ぐにはロストの使用が必須(本作ではヒット数に応じて獲得経験値が最大8倍くらいまで増えるのでコンボは非常に重要)

  • 特定属性で攻撃すると開く扉はロストでなければ開けられない(ミレットでは対応した属性攻撃をしても何故か無効)

  • そもそも最初のボスが銃撃完全無効

といった具合に、もはや主人公使い分けのシステム自体を否定するような形でロストの出番を用意している始末だ。
流石に両主人公のパワーバランスを完全に同等にしろと言うのは難しい話だと思うが、それにしてももう少し何とかならなかったのかと思う。

一方の主人公は小さくなる

また、ロストを使う理由のなさとして大きいのが二人の主人公の体力が共通である点だ。ミレットが倒れたときのカバーとして使うとか、逆に様子見の鉄砲玉として使うこともできない。
本作では敵の攻撃が非常に痛く、ちゃんとレベル上げをしていても敵の攻撃を3回くらい食らったら死ぬことはザラ、ボスの攻撃が多段ヒットすると一撃で殺されることも珍しくないので、なおさらミレットを使って安全に戦うことを優先したくなる。

それからこれは設定的な部分の話だが、本作の主人公たちが何故入れ替わりながら戦うかと言うと、彼らは「竜樹クスクス」の力で仮の肉体を与えられて蘇った身なので(本来の肉体は仮死状態)、その竜樹クスクスから離れた所では力が制限されてしまい、二人同時には力を発揮できないためだ。
だが、この設定なら肉体そのものは二人別々にあるんだから体力も別々の方が妥当そうに思える
これが、エクステーゼのように一つの肉体を二人で使い回しているような設定なら体力が共通でも納得できたのだが、本作の設定で体力ゲージが共通なのは微妙に納得のいかない点だ。上述したように本作のゲームバランスは中々に苛烈なので、なおさら気になる場面が多い。

絶望のカメラワーク

カマキリはプレイヤーより素早い上に複数で執拗かつ多角的に追い回してくる最凶の敵

本作についての数少ない情報のうち、ほぼ確実に共通して語られているのがカメラワークの悪さだ。
まず恐ろしいこととして、本作はカメラの操作が「R2ボタンでカメラをキャラクターの背後に移動する」以外に一切ない。右スティックでの操作どころか、LRでの回転すら不可能だ。もちろん上下の高さなんて変えられない。(本作の右スティックはローリング回避)
3Dゲー黎明期の頃にはカメラ操作が不自由なゲームも多々あったが、本作は2010年発売のゲームだ。PS2どころか、PS3の発売からも3年以上経っているんだが、それでこの操作性は悪い意味で衝撃的だ。
俺はこの事実を信じられず、プレイ中に何度もカメラを操作しようとして無意識に右スティックを触り、ローリング回避を暴発させていた。

そもそも操作の不自由さを除いてもカメラの動きが悪く、狭い部屋での戦闘では壁に引っかかって急に持ち上がったり、突然変な位置に移動したり、障害物で視界を塞がれることが多々ある。
そのくせ本作は敵が複数で多角的に襲ってくることが当たり前にあるし、カメラ範囲外の敵が攻撃を止めてくれるような優しいシステムもない。
また、ダンジョンでは背景をしっかり観察する必要があるような、ちょっとした謎解き要素が仕込まれている場合もあり、最初から最後まで涙が出るほど地獄のようなカメラワークに付き合わされることになる。

画面手前の扇風機に当たると死ぬ

最悪なのがボス戦で、カメラが完全自動操作になっていてR2ボタンでの操作すら許されない。もちろん自動で最適に動いてくれるわけもなく、画面外へ飛び出したボスを追いかけるだけで苦労することも多い。

その中でも絶望的なのは終盤ボスのペンギンで、こいつは普通に攻撃してもダメージが通らない。どうすれば良いのかと言うと、一定周期で打ってくる突進攻撃をマップ上の扇風機のようなオブジェクトに誘導し、そこにぶつけてやる必要がある。
こうしたギミック自体は珍しくないが、本作のカメラワークだと大問題だ。

まず、ボスは当然だがプレイヤーの方を向いて突進攻撃を使用してくる。
それを扇風機に当てるためにはプレイヤーの背後に扇風機が来るように位置取る必要があるわけだ。
しかし、ボス戦中はカメラが自動でプレイヤーを追いかけるように動くので、必ず上の画像のように「画面の手前に扇風機、奥にボス、間にプレイヤー」の構図になる。

ここで問題になるのがプレイヤーが扇風機に直接触ると大ダメージを受けることだ。だから扇風機にはあまり近付きたくないんだが、扇風機と距離を取ると扇風機が画面外に出てしまうので誘導できなくなる。
なので、そもそも遠近感が掴みにくい扇風機を必死に探して、慎重に慎重に近付いて背後に扇風機を構え、扇風機で視界が塞がれてメチャクチャ邪魔なのに耐えながらペンギンの突進を誘う。これ以外の方法は無い。

ただカメラワークが悪いだけならギリギリ許せなくもないが、このカメラワークでこんなギミックのボスを作るな。

せめて部屋の連結くらい変えろ

ついでに書いておくと、このペンギンが登場するダンジョン「氷壁の渓谷」なんだが、序盤のダンジョン「せせらぎの神殿」を左右反転しただけでマップを丸ごと使い回している
ここまで分かりやすくやる気がないのはどうかと思う。

『サモンナイト』シリーズ作品として

コンプリート率100%

サモンナイトと言えばサモン(Summon)のタイトル通り、召喚術が代表的な要素の一つだ。ゲーム中の強力な攻撃手段であると共に、個性的な召喚獣たちと、派手な召喚術の演出はシリーズの大きな魅力と言える。

そんな召喚獣だが、本編シリーズでは少なくとも30種以上、多ければ70種を超えるほどのバリエーションが存在した。ジャンルがアクションに変わった『エクステーゼ』では大幅に減少していたが、それでも20種は存在した。

それでは本作の召喚獣はと言うと、8種しか登場しない。上の画像に映っているものが全てだ。なお、本作の召喚獣はストーリー進行に合わせて順次入手していく形式なのだが、一番下の「ドッキーノ」はストーリー終盤にこっそり開放される裏ダンジョンで入手する隠し召喚獣なので、普通にストーリーを進めていると7種しか出てこない
この時点で『サモンナイト』としての魅力が薄いのは分かるだろう。

出身地不詳

シリーズ作品としての微妙なツッコミどころを挙げると、本作の召喚獣は出身の世界がハッキリしないやつが複数いる。
軽く本編シリーズ作品の設定をおさらいすると、『サモンナイト』世界における召喚獣は主に「機界・ロレイラル」「鬼妖界・シルターン」「霊界・サプレス」「幻獣界・メイトルパ」の4つの世界から呼び出される。
(他に、ほぼ無生物限定の「名もなき世界」が存在する)

……なのだが、例えば上の画像の「カラミティー」は出身の世界がよく分からない。カラーリングが赤と黄色中心で、微妙に和風っぽい意匠があるのを見るとシルターンが妥当に思えるが、それにしては名前が思いっきり英語だ。(シルターンは侍や忍者などが中心の和風の世界)
明らかに機械ではないのでロレイラルは違う、獣にも見えないのでメイトルパでもない、と考えると残るのはサプレスになる。一応、炎を扱う悪魔のような存在と考えればギリギリ納得できなくもないが、サプレスの召喚獣は主にカラーリングが紫中心のはずだし、もっと典型的な「天使・悪魔」のようなデザインのやつばかりなので、これもしっくり来ない。

こいつも出身の世界が不明瞭

とは言え本作は独立した世界観の作品であり、本編シリーズの世界・リィンバウムが舞台ではない。なので召喚獣の系統が本編に沿っていない事をそれほど問題視する必要はないのだが、なんだかスッキリしない部分ではある。

一方で本作の召喚獣の一体「ゼルディウス」は、本編シリーズでロレイラル出身の「ゼル」シリーズの流れを汲んだ存在と思われるため、少なくともこいつは確実に本編との関係性を匂わせている。そのため、なおさら本編の世界観とリンクさせたいのか、それとも本作を独立した設定にしたいのか、今一つハッキリしないのがムズ痒いポイントだ。

今となっては心配する必要もなくなってしまった事だが、こういった設定の齟齬が原因でグランテーゼ出身の召喚獣が本編へ逆輸入される可能性を潰してしまっていたら勿体無いし、最初から本編の世界観に当てはめられるようにデザインしてくれた方が良かったように思う。

そもそも召喚術ではない

勝手に言葉の意味を変えるな

さて、俺はここまで召喚獣の話をしたので、そろそろ本作最大のツッコミどころについて話そう。
本作は、本編シリーズと異なる独立した世界が舞台だ。ということで、同じく「召喚術」についても独自の設定がある。
曰く、「魂の器となるモノに異界の住人の魂を宿らせる秘法」とのことだ。
そして本作の冒頭では、仮死状態となって魂が肉体から離れた主人公たちが、召喚術で仮の肉体へと魂を宿されて復活する様子が描かれている。

……つまり、どう見ても「降霊術」だ。
本作は「サモンナイト」の名を冠するために、降霊術を召喚術と言い張っている。
しかし、こんなにハッキリと設定で「器に魂を宿らせる」と言い切っておきながらも、主人公たちが戦闘で"召喚術"を使う際には特に魂の器となるものを用意するような素振りもなく、従来のサモンナイトのようにそのまま召喚獣を呼び出して攻撃させているような演出になっている。
召喚術に限らないが、本作はこのように長々と設定が書かれているくせに具体的な描写がなかったり、あるいは作中描写と矛盾する要素が多くて、何が何だか分からないことが多い。

夜会話(隠し要素)

一周目は強制的に主人公同士のエンディング

さて、サモンについて語った次はナイト(Night)夜会話システムの話だ。『エクステーゼ』では一応システムとして記載はされていたが、会話の相手が異性主人公で固定されており、サブキャラと夜会話を行えない点には批判意見が多々あった。
その点を反省したのか、本作では2周目以降はサブキャラクターとも夜会話ができる隠し要素がある。

これが本当に隠し要素で、ゲーム中にも説明書にも、サブキャラクターとの夜会話が可能になる点についてどこにも記載がない
そして一周目ではキャラクター選択画面も出ずに異性主人公と自動で夜会話が始まるので、実際に2周しないとサブキャラクターとの夜会話について気付きようがないのだ。
まあ、一応ロストとミレットのどちらをメイン主人公にするかの選択があるので、一周目で選ばなかった主人公で二周目を遊ぼうとすれば必然的に気付く点ではある……が、地獄のカメラワークの本作を何周も遊ぼうと思うプレイヤーが果たして何人いたのかは疑問だ。

設定画や世界観紹介はしっかり存在する

そして、ここで追い打ちをかけるように致命的な点が引き継ぎ要素の少なさだ。サモンナイトにはクリアデータを保存することで召喚獣や一部アイテムなどを次のプレイに引き継げる、いわゆる「強くてニューゲーム」要素がほとんどの作品で存在するが、本作で引き継ぐのはアイテム錬成のレシピと、あとは収集要素のギャラリーと魔物図鑑のみだ。
ステータスや所持品等は一切引き継がない。

アイテム錬成のレシピを引き継げるのは有益なのでは?と思うかもしれないが、本作のアイテム錬成は元々レシピ無し合成が可能なので、レシピを引き継いだ所でメモの手間が省ける程度の価値しか無い。
自由合成が可能なシステムの都合上、手に入る素材のランクがストーリー進行に合わせてガチガチに管理されており、「レシピを知っていれば序盤から強力なアイテムが作れる」ようなことも特に無い。
なのでレシピを引き継いだところで特に攻略は有利にならない。

ミレットとアスナージは婚約している

それはそうと、肝心の夜会話の内容はどうなのかと言うとテキスト量としては非常に充実しており、本編の夜会話5回分くらいの文量を長々と一回の夜会話で話し続けたりする。
ただ、内容はサブキャラクターのバックストーリー紹介的なものが多く、「その章の出来事に対する、その人物の見解」を話してくれないことが多い。
特に酷い場合だと、「主人公たちの総大将的な立ち位置の存在である炎竜ベルガードが敵の手で石化させられていたことが判明、正体を表した敵によって主人公たちも石にされそうだったが、力を振り絞ったベルガードが間一髪で主人公たちを逃がした」……といったストーリー展開で章が終わった日の夜会話で、「婚約者のプレゼントのセンスが悪い」などと全くストーリーと関係のないガールズトークで盛り上がったりする。

これは後で改めて書くが、本作のストーリーは主人公同士で夜会話をして親睦を深めていく前提で構築されている様子がある。サブキャラとの夜会話は本編と繋がっていないことが多いし、逆に主人公同士で夜会話を進めていないとストーリー展開が不自然になる場合がある。
サブキャラとの夜会話を可能にするなら、その点の整合性は取ってほしいところだった。

本作のストーリーについて

銀翼の三騎士団(所属者一名)

一言で言うなら「設定そのものは作り込まれているが、それが実際のストーリー中で活かされていない」、これに尽きる。
とにかく目立つ点として、設定は大仰なのに作中の物語には特に関わってこない要素や、逆にストーリー上の重要人物なのに立ち絵も台詞も一切なく、会話の中で名前が何度も挙がるだけ……なんて例が多々ある。
例えば上の画像では「銀翼の三騎士団」と書いてあるのにキャラクターが二人しか描かれていないが、これは三人目の騎士が物語の開始時点で既に死亡しており、グラフィックも台詞も一切登場しないからだ。
ついでに言うなら右の犬もストーリー開始時点で騎士を辞職しており、現役で「銀翼の三騎士団」に所属しているのは左のメガネただ一人しかいない
明らかに組織としては既に解散してしまっているのだが、作中では「銀翼の三騎士団」と言い張っている。

また、主人公ミレットの父親である神官長カレイドは本作の物語の根幹に深く関わる人物で、会話で名前が挙がることも幾度となくあるのだが、彼も物語の開始時点で死亡している上に立ち絵などは存在しないし回想シーン等で彼自身の台詞が出てくることも一切ないため非常に印象が薄い。

「七輝」は作中で何度も語られるが、グラフィックも台詞も一切ない

とにかく本作は回想シーンや視点の変更で描写をすることが異様に少なく、キャラクターの台詞で「あの時はこんな事があって、俺はこうして、あの人はこうして、その結果こうなった」といったことを一人の口から全部語らせることが多い。その結果、会話シーンがやたらと冗長になっている上に、肝心のストーリーも「情報として把握はできても印象には残らない」事態に陥りがちだ。

元々、サモンナイトというシリーズ自体 会話シーンの演出が全体的に弱く、台詞でいちいち状況を説明する事が多くはあったが、本作はシーンを描くことすらせずに文章で設定を垂れ流すだけのことが本当に多くて、ひたすらに臨場感を欠いている。

実害ゼロ

そもそもストーリーの内容自体、「それって別に問題じゃなくね?」とか、「それで本当に解決したのか?」と感じさせられるものが多い。

例えばヒルギスという人物は、過去に命を落としそうになった際に「何としても生き延びたい」と闇に願った結果、一命を取り留めたが魔物と化してしまった。
そして、このまま生きていると心まで魔物と化して誰かを傷付けてしまうのでは、との思いから逆に死にたがるようになり、「死にたがりのヒルギス」と呼ばれるようになった……との設定だ。

しかし彼は、作中の描写を見る限り明らかに任意で魔物と人間の姿を切り替えられるようにしか見えないし、「死にたがり」と化した後も部下たちから深く慕われていると言われているため、魔物になったと言いつつも実際は何一つ問題を起こしていない
結局、彼は弟の説得により「正気を取り戻して人間に戻った」ような描写がされるのだが、元々別に正気を失っていたわけでも人の姿を失ったわけでもないので、何も問題は起きていないし解決していないようにしか見えない。

誰も側にいる必要はなかった

同じくよく分からないのがヴィルヘルムだ。
彼はヒルギスと同じ騎士の一人で、騎士団長のアスナージが敵に操られていると知りながらも付き従っていた。
何故そうしていたのかと言うと、「もしも洗脳が解かれてアスナージが正気に戻った時、彼は自分がやった事の罪の意識に耐えられない。だから誰かが傍で支えてやる必要があるが、それができるのは共に道を踏み外した者だけ」……と語っている。

自分のために部下が一緒になって外道に堕ちたとすれば、むしろ罪の意識を余計に強めるとしか思えないので彼の理論がそもそも納得できないんだが、結局アスナージは主人公たちの呼びかけであっさり正気を取り戻した上で、罪の意識で潰れることも特に無かったので、ヴィルヘルムがやったことは本当に何の意味もなかった。
と言うか、付き従っているとは書いたが彼は別に黒幕の活動に加担しているような様子も特に無く、別段道を踏み外したようにも見えないので本当にただ「設定があるだけ」の人物だ。

ポエムを読むタイプのラスボス

そして本作の黒幕、スカールだ。
まずサモンナイト3の主要キャラクターとして「スカーレル」というキャラクターがいるのに、新たにスカールというキャラクターを登場させたことについてツッコミを入れたいが、まあサモンナイト6で「イオス/イスラ/イスト」と名前の似た3人が共演したことに比べたら些細なので放っておこう。

彼は『災いの剣』シャイタンを手に入れて世界を破壊することが目的……と見せかけて、本当は「災いの剣なんて物騒なものが存在しない平和な世の中を作りたかった」という目的で動いていた。
そのため自身の命をもって災いの剣の封印を解いた上で、その災いの剣を主人公たちに破壊させた。その結果スカールは倒れたが、彼の目的は無事に達成され、彼らの戦いは終わりを告げることとなる。

……で、結局最初から最後までラスボスの思い通りに進んだが、世界は滅びずに済んだのでまあいいか、といった具合で本作はエンディングを迎える。

主人公ルートの場合は助かるが……

しかし、このスカールの計画に伴って本作の中心となる国家グライベルの王が暗殺されており、さらにグライベルの主要人物であるグライベル三賢者のうち二人が死亡、銀翼の三騎士は一人が死亡、一人が引退して実質解体、紅翼の七騎士だったスカールも死亡(サブキャラ攻略ルートの場合はロストも死ぬ)と、もはやグライベルは国家として再建不能なレベルでボコボコになっているのだが、エンディングではこの点にほとんど触れないまま終わる

スカールが倒れた後は、一気に場面がすっ飛んで「ロストの本来の身体はもう助からない」と説明、二人の主人公がお別れを言ってエンドロールに入り、その後のエピローグでは主人公ルートの場合はロストが助かり、サブキャラを攻略していた場合は二人でロストの墓参りに行くエンドとなる。
一応、主人公ルートの場合はサブキャラたちのその後もほんの少しだけ描写されるが、「グライベルを今後どうやって建て直すか」については誰も語らない。まあ無理だろうしな

口しか動かないアニメーションもある

別れのシーンではロストとミレットが二人で抱き合うシーンがある。
まあ、共に旅をしてきた仲間だし互いを想い合っても不思議はないだろう。
実際、一周目なら違和感のあるシーンではない。問題は、このシーンが夜会話の対象としてサブキャラを選び続けていても発生することだ。
俺は上の方で「主人公同士で夜会話をすることが前提でストーリーが作られているような部分がある」と書いたが、このシーンが最たる例だ。毎回主人公同士で親睦を深めていたのなら違和感はないのだが、2周目でサブキャラをひたすら攻略していた場合はロストとミレットが抱き合うほど親睦を深めているようには見えないため、違和感が拭えない場面となってしまう。

そして、サブキャラを攻略すればエンディングはどうなるか、シリーズ経験者なら当然知っていることだろう。

抱き合った男の墓前で別の男を口説く女(婚約者持ち)

俺は折角なのでミレット主人公でジェドを夜会話で選んでいたのだが、その結果ラスボス戦後にミレットはロストと抱き合った後、エピローグではジェドと二人でロストの墓参りに行き、その場でジェドを口説き始めた!

これ、ジェドが口説いてきたから受け容れたんじゃなく、完全にミレットの方から口説いてるからな。死んだロストが浮かばれない……と言うか、お前そもそも婚約者としてアスナージがいたはずだろ。なんで平然と他の男を口説きに行ってんだよ。

寝取られエンド

これがグランテーゼだ。

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