見出し画像

14.介護の終了

 私ももう若くはないから、と思いながらベッドに横たわる母を見つめていた。母はもう歩くこともできず、体はほぼ動かない状態だった。繋がれた機器からは多くのグラフが表示され、辛うじて生きていることがわかった。

 歯車が狂い始めたのは、10年くらい前だろうか。

 家から出ることの無かった私の面倒を見てくれていた母の足が動かなくなり、働くことができなくなった。お金さえあれば、それを治すことくらいは容易なことなのに。動けない状態が続くことにより、更に多くの箇所が動かなくなり、無駄な動きをするようになった。

 私自身も歳を取り、新型が稼働する職場には就職ができない状況が続いている。

「もう400歳だもんね…」

 母は人間を知っている最後の一人だ。年齢についての返事は無かった。私を構成する部品の多くは、母が作ってくれたものである。私は覚悟を決め、これ以上の延命は意味が無いと判断した。

 母の体から旧式のバッテリーパックを外し、接続されたケーブルを抜いた。状態を示す、モニタのグラフが急激に下降していくのが見えた。

「ケイコク、電源供給がありません。ケーブルを故意に外された可能性があります」

 旧式のバッテリーを私の補助電源の接続プラグに差し、母に手を合わせた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?