足りない料理店│#完成された物語

https://note.com/nananako88/n/n7913a8de67d3

 
 全てが最高の味だった。料理の見た目、口に入れた時の食感、味。そして後に広がる恍惚感。こんなお店がこんなところにあったとは。

「満たされる料理店」との看板を見かけ、入ってみることにしたのだ。必ず美味しい料理をお出しします、という言葉がいかにも怪しい感じがしたが、試すもの面白そうだった。

 そして出てきた料理は、目が回るほどに美味しく、クラクラするほどだった。食事中、店員の一人が話しかけてきた。「一つお伝えすることが足りていませんでした。」

「美味なもの、美しいものというのは、しばしば毒を含むものです。今回お出ししている料理についても、その甘美な味の代わりに毒を含んでいます。それは、最上級の料理を味わうことの引き換えに必要なものなのです。」

 僕はわずかに感じていた腹の痛みと視界の変化に気づき、口に含んだ残りの肉を吐き出した。そして、お金を投げるように払い、店を飛び出した。

「これじゃ、命がいくつあっても足りないよ。」

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