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杉本一文「装」画集 アトリエサード 書苑新社(2017年11月発行)

父の日や自分の誕生日が近づきますと、離れて暮らしている娘から「今欲しいものがある?」とメールが来ます。

それに備えて、欲しいし手の出る値段なんだけどもっと欲しいものがあるから後回しかなぁと思う本を楽天ブックスにストックしていて、本書はそのうちの一つでした。

画集は好きで様々なジャンルのものを持っていますが、一度眺めるとそれきりというのが多く、なかなか買えないんですよね。

本書を知ったきっかけは最近出版された「雪割草」でした。

表紙をみて驚き!「杉本画伯はまだ現役だったのか」

そうですよね、自分が中学一年生の時(約40年前)に犬神家の一族に出会い、「横溝と言えば杉本」と頭に強烈にインプットされましたので。

インプットされた理由は様々ですが、そのおどろおどろしさはもちろん、「全裸の女性が大股開きでウッドベースのケースに入れられている」なんて表紙をみたら当時の中学生ではたまりません。今の成人向け雑誌の比じゃありませんよ。

調べてみたら本書が見つかってまだ手に入りそう。早速楽天ブックスにストックです。娘からは父の日前日に届きました。娘もこちらから連絡した楽天ブックスのページから直接購入しているはずなので、中学生の○○を刺激するような内容だとは知らないはずです。同居する家族(妻ともう一人の娘)に見られないよう、中身を楽しむことにしましょう。

タイトルは「装」画集となっています。装画(本の表紙のためのイラスト)にかけていると思いますが、残念ながら「総画集」とまではいっていません。横溝正史をはじめとしてかなり多くの装画が、本書サイズであるA4で、しかもタイトルなどがない原画の状態で掲載されています。大迫力です。

例えば

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右側は「迷路の花嫁」ですね。実はこの装画が角川文庫の横溝シリーズ(通称 緑304シリーズ)の中でもベスト3に入るほど好きでして、エロスであり幻想的な装画が続いてる中で、血痕以外での原色の赤、油絵の具のような白・青・黄がとても目を引きます。はじめて書店で見た時に目を奪われたこと、いまでも忘れられません。

他にも

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ちゃんとジュブナイルの装画も掲載されています。当時いきなり連番がとび背表紙の文字が金色になってしかも薄くなった時には「もう横溝シリーズも終わりかぁ」と寂しくなったのを覚えています。

また横溝シリーズだけではなく

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ほかの作家の装画もいくつか掲載されています。半村良、土屋隆夫もありました。変わったところでは、丹波哲郎・団鬼六・ムー・昭和石油なんてのもありましたが、驚いたのは楳図かずおや小池一夫・小島剛夕の装画です。漫画本の装画を漫画家以外の人が担当するんですね。どんな本なのかはわかりませんでしたが、愛蔵版のようなものでしょうか。

もちろん「緑304シリーズ」のあのときめくようなエロスはいっぱい収録されています。バージョン違いがあまり整理されていないのが少々残念ですが、それはないものねだりというところでしょう。朝の光より月の光の下で読むのが適した本です。

それにしてもこんな素晴らしい原画をみていて不思議な感覚に襲われました。素晴らしいんだけど物足りないんです。特に「緑304シリーズ」の場合、この装画の、このあたりに「獄」「門」「島」と書かれていないと、何か忘れ物をしたような、そんな気がしてきます。装画というのはブックデザインがあってこそのものなんだなぁと、強く思いました。

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