手の延長

「武器は手の延長である」と武術の本でよく見かけます。

意拳の創始者、王薌齋のエピソードなんですが

若い頃めっちゃ武者修行してて、いろんな武術や門派を訪ねていって手合わせをしてもらうわけです。

いうなれば道場破り、「喧嘩ふっかけたる!」みたいな血の気の多い時期があったみたいです。

で、かなり強者で名が通ってた王薌齋さんですが

江南の心意拳の達人、解鉄夫さんを訪ねるわけです。この人はその頃50才くらいで、奇行奇言が多くて周りから変人扱いされてた人らしいです。

ところが、そんな解鉄夫に手合わせを願い出て、10回やって10回とも勝てなかった。

それで、負けず嫌いの王薌齋さんが、素手では負けても得意の棒術なら負けるはずない!と再挑戦するわけです。

その時に解鉄夫さんが言った一言が

「器械は手腕の延長に過ぎない。手がダメなのなら、棒でも勝てるわけないよ」

と諭すわけです。

で、案の定やられてしまった。

そこで悔しくて立ち去ろうとした王薌齋さんを呼び止めて、「いい腕しとるから一緒に拳学を追求しようや」って言って、自分の技術とかを王薌齋に伝えるわけです。


ここらへんのエピソードは僕は凄い惹かれるんです。

巷では狂人扱いされてる、ジャッキーチェンの映画の赤鼻爺さんみたいな人が実はすんごい達人で、若くて見込みがあると思ったら迎え入れて手厚く教えちゃう。

老子とか読んでても少し思うけど、フランクな感じで普段はちょっぴりダメ親父だけど、蓋を開ければものすげー人物だった、的な歳のとり方をしたいですね笑


で、手が下手なら道具もやっぱり使えないということなんです。

武器や道具は手を通して、身体と一体になっていないと本来の性能が発揮できない。そのためには身体がまずそもそも高性能でなければならない。

で、ドラムのスティックも釣り竿も同じで、「いかに自分の身体と繋がって最大限に力を発揮できるか?」を考えた時に、23のはしっこ握りは、やはり腕とスティックが繋がる気がします。

もちろん、どの指を支点にするか、どこの指で握るか、とかも大きく影響すると思います。

これはまた今度話そう。

で、これ誤解を招きやすいんですけど、振り幅が大きくなって扱いにくいと普通は思ってしまう。しかしそこを身体の捌き方とか使い方で解消していくわけです。

黒田鉄山という方の書籍を以前ハマって読んでたことがあったんですが、この方は居合とか剣術の名家の人で、現代において極限まで武術の型とかを身体操作理論として極めちゃってる方だと思います。

この方の居合とかは、剣を抜く瞬間がほんとに見えない、消える動きなんです。

この鉄山先生の言われてることで、

最大最小理論

みたいなのがあるんですね。

刀や武器は最大の動きをする、しかしその軌道は1番最小の輪を描いて最速最小になる、的な感じです。

刀は実際には最大限に動いていても、見た目には小さく動いているように見える。

それを突き詰めていくと、抜刀の姿が見えなくなっちゃう。

そんな漫画みたいなことを身をもって体現してる凄い人です。

で、小さく動いているように見えるには、身体がこれまた最大限の動きをしないといけないらしい。

ただ、ここでいう最大限の動きというのは、腕とかをめちゃくちゃ伸ばして、とかいう見た目の大きさじゃない。

おそらく、身体の全身を全て使ってムダなく動く、なんです。

で、全身を最大に使って動かしても、これまた不思議なんですが、見た目には大きなアクションには映らない。

この方の言われてることは、身体の内部とか全身の連動、感覚とか意識の捉え方などについて論じてあるんだと思います。

黒田鉄山さんの動画とかで、比較的狭いドアとかに立って、刀とか木刀を振るみたいなのがあるんです。

普通だったらドアの上部に刀が「コツン」と当たるでしょう。

しかし、この最大に武器と身体を動かす振り方をすることで、逆にドアの上部に当たらない最小の軌道になっちゃう。

だけど、刀や身体は動きとしては決して小さくなってなくて、フルスイングしてるくらいに振れているんです。

身体の操作性しだいでは、道具の動きや軌道もコンパクトにして最大の力が発揮できちゃう。

この、鉄山先生の理論とかと、23の「はしっこ握り」を僕の解釈でなんとなく結びつけてドラムに活かしてるつもりです。

身体と道具について今回は書きました。こういう普通の西洋スポーツ的な観点とは違う理論とかにはすご〜くロマンを感じます。

長いものや重たいものを、いかに小さく軽く、だけど1番威力がでるやり方で使えるか?

そこにはやっぱり身体が出来てないと到達しませんし、「武器は手の延長である」というのは至極当然なことなのでしょう。

言い換えれば、身体の無限の可能性を開拓すれば、スティックでも剣でもなんでも、無限の使い方が出来る。これはもうロマンしかないです笑

これを自分の身体を通して出来るようになれば、表現の幅も驚くほど広がるんだろうな、、、

いつか自分のドラムに活かせるように、、

うん久しぶりに30分くらい立つか!笑

日々これ精進ですね。


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