チーズとハチミツ
こんにちは。
今日は相反する力について書こうと思います。
開高健という作家の書き物が好きなんですが、この人はベトナム戦争から命からがら生き延びて、その後ウイスキーの広告宣伝部とかでライターをしながら、世界中で伝説の巨大魚なんかを釣りして渡り歩いた方です。この人は小説も書くのだけど、「オーパ!」シリーズをはじめとした世界各国の釣り紀行や世界各国の酒や食文化のルポがほんとに面白い。
あと、「風に訊け」という若者へ向けたお悩み相談集はくだらない質問が多く、それに対する開高氏のくだらない返答の中にキラッと光る真理みたいなのが混じっていて、思考が凝り固まって来た時に読むと脳みそがほぐれます。おすすめです。
この人が食レポで
「相反する味が混ざることで極上の味になる」
みたいなことを言ってるんです。
みなさんは、スイカに塩を振ったりしませんか?
甘味を引き立てるには、甘さばかり足してはイカン、塩味を足すんや、と言うわけです。すると味の奥深みがでる。
僕はクアトロフォルマッジョ(名前あってるかな?)というピザが好きなんですが、これを一時期いろんな店を調べて食べ歩きしたことがあります。
これは、4種類のチーズを生地にかけて、食べる前にハチミツをかけるというやつです。
で、僕が食べ歩いた中で、いろいろ行きましたが1番美味い店は結局決まりませんでした。
だけど1番不味い店はすぐに決まりました。
それは、チーズだけの味で勝負してるのか知らんけど、ハチミツが出なかった店なんです。
「すいません、ハチミツないんですか?」
「そのままお召し上がりいただいてます」
「!!!」
その時の例えようのない怒りは、今でも忘れません笑
と、僕のグルメレポートみたいになってきましたが、これって僕は音楽にも共通すると思うんです。
要は、同じベクトルのものを揃えようとするより、少し角度の違うものを入れたほうが深みが出ますよってことなんです。
普通編成のバンドなら、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムみたいな感じですよね? で、音楽用語で「ユニゾン」って言葉がありますが、要はこれは同じフレーズを楽器間で合わせる時に使います。で、ユニゾン特有のかっこよさってものすごくあると思うんですが、じゃあ、全てのフレーズを全楽器で同じにして強調しまくったらどうなるか?
おそらく、つまらなくなるんです。
バンドやジャンルによりますけど、やっぱり各楽器の持ち味とか鳴る音域って違うんだから、同じフレーズにしちゃうと活きることもあれば良さが死ぬこともある。
だから、僕個人はぜんぜん違うベクトルからアプローチしてるサウンドとかは面白いし大好きです。
例えばこの曲のリフとか
探せばいろいろあると思いますが、こんな感じで各楽器が絶妙に絡まる感じとかは聴いてていろんな発見があるし楽しいですよね。
これはつまり、相反するフレーズだけどうまく絡まることでより良くなってるんだと思う。
チーズとハチミツ的なサウンドなんだと思います。
組み合わせを間違えたらアレですけど。。。
で、ちょっと違うのかもしれないですが、ここ最近僕が書いてたことにも通じる気がするんです。
見た目がヘタレなのに音がめちゃくちゃかっこいい、とか、見た目がカッコつけたビジュアル風なのに少しアホい感じがある、とか。
「思ってたのと違う!!」これが良い方に作用すると非常に強い。
相反するものっていうのは、組み合わせ次第ではより良く作用する、ということだと思う。
で、少し違うかもしれないんですが、亀甲クラブの先生からも触り稽古の時に同じようなことはよく言われてきました。
「押そうと思ったら逆に押さないようにする」
「引こうと思ったら逆に伸ばす」
一見意味がわかりませんが、人間の意識して動かせる筋肉を「〇〇しよう」と思って使うと動かせる部分の筋肉だけの力になり、弱くなることがあるよって言ってるんだと思います。
身体の中で大きな範囲に渡っている姿勢維持筋とかインナーマッスルと呼ばれるものは、思っただけではなかなか動かすのが難しい。だからそれらを総動員するためには「〇〇しよう」と思わず別のイメージで動かすことがポイントになってくるんだと思います。
例えば、
片手に結構な重さのバッグを持ってみます。
荷物を持った方の手に力を入れて持つと、重みを感じて疲れます。
これを、荷物を持ってない方の手にも同じくらいの重さのものを持っている、とイメージしてみてください。
バランスがとれて少し楽になりませんか?
ならなかったらごめんなさい笑
楽になったとしたら、逆の手を意識することで身体が繋がり、部分ではなく全体の力を使えたってことなんです。
これは力を一極集中するんではなく、相反する方向に少し向けることでより強くなることもある、ハチミツとチーズ理論なんです。
亀甲クラブではこのような、やろうとしてることと逆だったり全然違う意識でやる、という練習をかなり教えられました。
あと、意拳の立ち方の考え方とかでは、
静の中に動がある
動の中に静がある
これを感じるように立つといいよとあります。
じっとしていても内部では動いている、もちろん血流とかは動いているし、筋肉や骨の動こうとしている方向に流れを感じる、でも外から見たら微動だに動いていない。
「これが1番速く動けるようになる上達法だよ」と亀甲の先生からも言われたりしました。
内部の動きが整ってはじめて、本来の動きの質が変わる、みたいなことでしょうね。
そのためには、止まっている状態でも、内部は動いている、という相反する状態を作りだす必要がある。
逆に、身体を動かす時も止まった状態を作っておきます。
だるまさんがころんだ、で咄嗟に止まれるか?
止まれないでグラグラしたり倒れたりする、ということはコントロールが甘くて、運動の慣性を使って動いちゃってる的なことなんだと思います。
シンプルな動きの中に、相反する複雑な状態、チーズハチミツ状態を作り出しているんです。
実際、普通の人の動きと先生の動きを見比べると、一般の人の動きは身体から発する力の方向とかが一方通行のように感じることがある。要はチーズだけ、みたいな動きになる。
で、先生の身体の動きとかを見ると、とてつもなく情報量が多いんです。ハチミツがちゃんと入っている。
シンプルに動いていても、その動きにいろんな力が働いてるのが、見た目になんとなく情報として入ってくる。何かとてつもないことが身体の内部で起こっている気がする。
で、そうなるためにはどうすればいいの?って言われたらなかなか難しいし、僕も全然出来ないんですけど💦
でも、人間たまには自分の思い込みでやろうとしてることから少しだけ思考を外してみるのも、いいのかもしれませんね。
偉そうに言ってる僕もそれがなかなか出来ずに今日も仕事の激務で頭と身体がカチカチに硬くなっちゃってます。
日々これ修行ですね。
「風に訊け」読まなきゃ。
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