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受賞電話は突然に

作品を書き、投稿するようになって2年が経ちました。
初投稿以来、家の電話が鳴ると、
「待って、私が取る! 受賞の連絡だから!」
と家族を押しのけて、受話器を奪取しています。
もちろんネタなんだけど、半分本気なところが我ながらこわい。

応募するときは、家の電話番号を書いているのです。
でもね、かかってくるのは営業電話以外のなにものでもないわけですよ。
うちの場合、娘が2人いるからか成人式の振り袖関係が最多。
次点で塾・家庭教師系ですかね。
全くもう、あれどうして家族構成とか子の学年がわかるのかしら!

まあとにかく電話はそんな感じ。
今やなんでもスマホかPCで済んじゃうもんね。
営業以外のお知らせは、めったに運んでくれなくなったわが家の電話。
だけど私は2年経ってもまだ、「あ、きっと私の受賞連絡だ!」って半分本気で思いながら電話を取り続けていたんだ。

その日、私は仕事が夕方からで、午前中をのんきに過ごしていた。
朝ごはんの片付けと洗濯もすんだし、ごく軽くだけど掃除機もかけた。
さーて、心置きなくこたつでだらだらするか。
ご存知の通りこたつは魔具の一種なので、程なく私はまどろみの世界に引きずり込まれて、なすすべもなかった。

今日は息子が午前授業で、あと1時間もしたら帰ってきちゃう。
うーむ、お昼はどうしよう。
うどん? ラーメン? パスタ? 
とにかく麺は確定だね。
まあ、やつが帰ってきたら起きればいいか。
ほんじゃあ夢の世界に行ってきまーす。

旅立ちから20分ほど経った頃だと思う。
家の電話が鳴った。
夢の国にいたはずなのに、寝ぼけた頭で私はやっぱり考えていた。
「あ、受賞連絡だから出なくっちゃ!」
もうすっかり染み付いているのだ。こわいってば!
それで夢世界を強制終了し、魔具からむにゃむにゃ脱出すると、私は電話を取ったのだ。

「こちら『日産 童話と絵本のグランプリ』事務局ですが」
え? 夢にまで見た受賞連絡!? 
そんな感動に打ち震えるかと思いきや、寝ぼけた私は「あちゃー、なんかやっちゃったか?」と思ったのよね。
日産、たしかに出しました10月末。でも、最終日にバタバタと落ち着きなく応募したのよ。
そうか、あれなんか不備があったんだ。やらかしちゃったのか、と。

あんだけ受賞電話の妄想リハーサルを積んでいたというのに!
どうにも詰めが甘いというか。
よもやこれが待ち望んでいた電話だなんて、そのときはすぐに結びつけることができなかったんだよね。
話を聞くうちに、どうやら自分の作品が佳作に選ばれたようだと気がつくが、頭の中はハテナでいっぱい。
は? うそ、あの作品が? 

本当に自分の作品かどうかなどの確認や、表彰式の案内などがあり、ようやく頭が追いついたのはしばらく経ってから。
「あ、ありがとうございます! こういう電話初めてで。ハイ! ハイ! 嬉しいです!」
それまでは「はぁ」とか「はい……」とかふわふわした対応だったのに、最後になって急激にテンションが上がる、情緒不安定な私。
こうして、私の初めての受賞電話は終わりました。

佳作をいただいた作品はパンツをめぐるお話です。
応募締め切りが迫るなか、アイデアがなかなか浮かばず諦めかけていたところ、修学旅行帰りの息子のかばんから、見知らぬパンツが出てくるという事件が勃発!
幸いすぐに誰のものか判明しお返しできたのだが、もしも落とし主がわからなかったら? と思いついて書いたものだった。

嬉しい一方で、え、あれで良いのでしょうか? と戸惑う気持ちもある。
勢いだけで、ちょっとドタバタが過ぎたのではないか。
もちろんベストを尽くしたつもりですが、それでも決め手のようなものが自分でわからなくて、ちょっと信じられない。

表彰式は3月4日に大阪府立中央図書館のホールで行われるとのこと。
電話口では、「ハイ伺います!」と即答で答えたものの、いざとなると少々悩みました。
交通費が出ないのです(佳作だから?)。
この時期は子どもたちの学費が立て込むのよね。今年は入学金もあるのよ。
行くのなら宿泊したいし、だが出費は抑えたい! どうしよう。

迷っていると、長女が一喝してくれました。
「お母さん、『行く』の一択でしょ! 表彰式は学びしかないよ。講評聞いたり、上位の人を見て発奮したり。それでお仲間と友だちになって連絡先交換したりしてさ、いいことしかないじゃん! 絶対行くべき。行ってきなよ!」

彼女は音大生で、コンクールやオーディションの場数を踏んでいるのです。
そうだね。そうやってあなたは前に進んできたんだもんね。
心は決まりました。母、行ってくるわ!

すると夫氏が、「俺のマイルを使いなよ」と。
彼はポイントをマイルに全振りし、帰省の際の旅費にあてているのです。
コロナでここ数年思うように帰れず、余っていたマイル。
とはいえ君の大事な虎の子じゃないのさ。いいの?
ありがたい! 
ちょっと遠回りになるけれど、飛行機でマイル使って行くことにいたしました。

「いいなぁ。私も行きたい!」
ついでに、受験を終えてまだ結果の出そろわない次女も後から合流することに。
コロナ元年に高校生になり、行事が縮小されまくってたもんね、あんた。
いいぜ。こうなったらケチなこと言わんと、関西親子修学旅行もしてきちゃおうぜ!

こうして、私はドタバタと関西に旅立ったのでありました。





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