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Synthesizer V(とフリモメン)の調声メモ


前置き

Synthesizer V(主にフリモメン)でカバー制作をして約1か月ほど経過し、なんとなく掴んできたコツを備忘録的に書き連ねていく記事です。

Synthesizer V 全般のこと、フリモメンの使い方、Synthesizer Vに限らず他の歌声合成ソフトでも応用できそうな調声の小技などなど。

※当記事の調声小技などを真似しても「より人間らしいリアルな歌唱」に近づくとは限りません。
筆者はUTAUやVOCALOID系の合成音声っぽい歌唱も好きなので「合成音声×人間っぽい生々しさ」のハイブリット調声といったところです。

※当記事では「ノートと歌詞を入力し自動生成ピッチが適用された状態」を「ベタ打ち」と便宜上表記します。

※当記事では2024年6月時点、
Synthesizer V Studio Pro Ver.1.11.0
Synthesizer V AI フリモメン Ver100
を使用しています。

※筆者は音楽知識ゼロです。仮にもし専門的なことをしていたとしても経験で勝手に身についていたことだと思うので本質はなんも分かってないです


winに搭載されてる画面録画機能で撮ったら音質悪くなってしまったごめんねフリモメン
当記事に記載されていることと同じ内容で実際にフリモメンの声で聞いてみる動画です。 各項目ごとにタイムスタンプ設定しているので活用したい場合はYouTubeと2窓するなりしてください。


フリモメンのボーカルスタイル

デフォルト
フリモメンだよ。
ファットな低音とさわやかな印象の中~高音域が特徴のイケオジボイス。
ベタ打ちでも深み・抑揚のある歌い方をしてくれます。
初見ではもうこれでよくね?ってなった

Synthesizer Vの仕組みはよく知りませんがフリモメンの声優である古賀明さんの歌い方を学習したんでしょうか…だとしたら…古賀さんも歌上手いんでしょうね…
SynthVフリモメンを作るきっかけとなった古賀さんの歌ってみたも聞いてみたかったな…

Bassmen
デフォルトより更に太く低い印象の声。 そういった声で歌ってもらいたい時の他に、ジェンダーをいじるほどではないが声を太くしたい時に部分的に使うのも効果的。

Gentlemen
デフォルトより若干息成分があり、かつ柔らかく、なんだかちょっと大人っぽい艶やかな印象。

Hardmen
力強い発声。テンションパラメータを併用して適切なピッチを書くとハードロックにも合うやべぇ歌声になります(好き)

Softmen
一番息成分が多く、柔らかい声。 子音の発音が不明瞭になることがあるので、きれいに響かせたい場合は瞬間的に下げると良いかもです

Youngmen
デフォルトより明るく軽く、元気な印象の声になる。 ジェンダーをいじるほどではないが声を若くしたい時などに部分的に使用するのも良さげ。

調声の方向性を固めるためにも最初にベースとなる歌声のスタイルを決めておくのが良いです。
ただBassmen一本!というわけではなく、
デフォルトよりちょっと低く…かつ優しい声で…とBass30%とSoft50%というように混ぜて使うことが多いです。
また後述するパラメータと同様に歌唱中に部分的にスタイルの値を変えることができます。
なので例えばAメロ~Bメロは優しく歌ってほしいけどサビでは強く歌ってほしい!という場合はベースをSoftmenにしておいてサビ部分ではSoftをゼロにしHardを高くする、といった使い方もできます。

Synthesizer V の各パラメータ(よく使うもの)


ピッチベンド

自動でつけられたピッチを書き直す時に使用します。
私はダイレクトピッチ編集モードの鉛筆で書いてしまうので実際にここを編集することはあまりないですが…

テンション

主に上げて使います。 サビなどで盛り上げたい時、発声を強めたい時に上げる。 デフォルト値より少しでも下げるといきなりくぐもった声になるのでそういう表現をしたい時以外は基本マイナスにはしないです。
上げすぎるとイコライザーで低音域削りまくって中〜高音域上げまくったみたいな声になるので、0.0〜1.0までの間で上下させるのがおすすめ。
なんか薄くて機械っぽい声だな…?と思ったら表示倍率が×2で操作してないか確認する(自戒)

トーンシフト

裏声が映える男声音源には大事なパラメータ。
専門用語はよくわからないですが声の声区を調節出来るようです。知らんけど
裏声を地声で歌わせたい時は下げるとそれっぽくなります(完全に地声になるとは限らない)
裏声を地声で歌ってもらいたい時って大体力強く歌ってほしい時なので、テンションパラメータやHardmenスタイルも併用すると良いかもしれません。

また裏声の調節のほか、この部分なんとなく高く・明るい感じにor低く・暗い感じにならないかな?って時に上げ下げするとその微妙なニュアンスを調節できます。

ブレス

声の息成分量を調節できます。
ウィスパー系ボイスを表現したい時に使用するイメージがあるかもしれませんが、デフォルト値よりさらに息成分を少なくしたりもできます。
また、グロウルにするほどではないけれど発声にインパクトが欲しい場合にノートの先頭に合わせて瞬間的に高くすると軽いがなりのような表現ができます。
後述する有声/無声と併用して語尾息の表現にも使えます。

有声/無声

最低まで下げると完全なささやき、コソコソ声になります。
歌唱中は歌い終わり部分をフェードアウトしたいときや、ブレスパラメータと併用したウィスパーボイス、語尾息の再現などに使います。
長めのノートの途中で部分的に下げると抑揚のある歌い方になったりもします。

ジェンダー

みんな大好き(?)ジェンダーパラメータ
上げるとより声が太く男声的に、下げると細く女声的になります。
ボカロエディタと逆なので同時に使ってると混乱する
フリモメンの場合、ほんの少し上下するだけでもかなり声のキャラが変わります。
ちょっと下げると声が軽くなって若い印象に、もっと下げて歌のキーを上げるとなんかちょっと艶やかな印象の女の子の声になります。
これがフリモたんか…

ラウドネス

声の音量です。
音量をそのまま下げる感じなので、いい感じに声をフェードアウトさせたいという場合は前述した有声/無声パラメータを使うほうがより人間らしい感じになるのではと思います。たぶん
私はロングトーンでもっと最後まで声量保って歌いきってほしいんだけどなって時に語尾にかけて右肩上がりになるように上げたりします。
力強く歌わせるぞ!と意気込んでピッチをゴリゴリ書いていると部分的に音割れしてしまうことがあるのでその時はそこだけ下げましょう
※Synthesizer V の設定でマスターゲインの音量を下げることが出来るので、それでも音割れは予防できます

他にもビブラートエンベロープというパラメータがありますが私は気になるピッチは手書きで直してしまうので全然使ってないです

ラップイントネーションのパラメータもありますが今回は割愛します。
一応使ったことありますが、なんとなくボイスピの調整に似てる感じです

調声の小技集

発音系

子音の長さを調節する

溜めのある歌い方にしたい、カ行タ行パ行等の発声前の無音部分を長くしたいなどの場合はノートを選択してノートプロパティで子音部分のアルファベットの「長さ」の数値を大きくするとよいです。
「だって」「かった」などの促音の表現にも使えます。
ナ行マ行の子音を長くすると「んな〜」「んま〜」、 「わ」を長くすると「ぅわ〜」といった感じの発音になります。 それでも物足りなければノートの前に小さい「ん」や「う」を付けてしまいます。 逆になだらかに発音してほしい場合は長さの値を小さくするのもありです。

「強さ」の数値もありますが、変えてみたところでそこまで劇的な変化はない…?気がするので長さを主にいじっています。


近い発音の別の音素に置き換えてみる

よくあるのが「お」「を」を、「うぉ」に置き換えるなど。
前述した子音の長さにも共通しますがヤ行の発音前に短い「い」を置いたり、思い切って短い「い」+長い「あ」を並べて「や」にすることもあります。
「か」を「くぁ」にしたり、「り」を「る」+「い」にするなど。


英語音素に置き換えてみる

Synthesizer V ではノートごとにどの言語で歌唱するか設定できます。
そこで一癖加えたい部分を英語音素に置き換えて歌ってもらうこともできます。 任意のノートを選択してノートプロパティ→言語を英語にして、ノートに入力する歌詞はローマ字で大丈夫です。
元が「さ」であれば「sa」
筆者がほぼ日本語しか分からないので英語と書いてますが、分かる方はSynthesizer V に搭載されてる他言語でもやってみたら面白い歌い方になるんじゃないかと思います。


語尾に前のノートとは異なる母音のノートを入れる

「の〜〜ぅ」「で〜〜ぃ」といった感じです。
さらに語尾に合わせてピッチを急降下/急上昇させると味が出ます。


巻き舌

ラ行の発声前に小さい「る」のノートを2〜3個並べると巻き舌っぽくなります。 なんか違和感があるときはノートの大きさ子音母音の長さを試行錯誤してなんとかします

一つのノートに2文字以上の歌詞を入れる
※ここは後から追加したので動画にはないです

Synthesizer Vでは日本語でも1つのノートに歌詞を2文字以上いれることができます。すごいね。
これを利用して普通なら2つ以上のノートが必要な「~ない」、「~のように」といった歌詞を一つのノートにねじ込んで歌ってもらえます。

一つのノートに入れたものと、分割して一文字ずつ入れたものを並べてみました。
波形を見ても分かりますが一つのノートに入れた方のが僅かに「な」と「い」の繋がりが滑らかで、分割した方は「い」の発音がはっきりしています。


ピッチ系


いろんなしゃくり

人間は低いキーから高いキーに移る時は遅く、逆に高いキーから低いキーに移る時は早くピッチ変遷するそうです。知らんけど
オーソドックスに低い場所からピッチをスタートさせるしゃくり、
ちょっと上下に寄り道するしゃくり、
一気にノートの上まで突き抜けてからノートのキーに戻るしゃくりなどなど様々な形があります。


上からピッチを急降下させる形

しゃくりとは逆にピッチ線を上から持ってくるやり方もあります。
こういう歌い方も名前があるのかもしれませんが私はわからんです
これらは不安定/勢いよく/悲観/狂気的っぽい等などのような印象を与える気がします。ボカロっぽいボカロ曲にも合う。


語尾を下げる(フォール)

この歌い方をフォールと呼ぶことを最近知りました。
力強いロックによく似合う歌い方ですが、下げるタイミング、どれくらい下げるかを微調整するとバラードなどでも良い味を出します。


語尾を上げる

逆に語尾のピッチを上げる歌い方です。
アイドルがよくやる歌い方?だそうです。聞いた話。
これもポップでかわいいボカロ曲によく合う。
元気で軽やかに、また曲や歌詞の雰囲気によっては悲観的/狂気的な印象にもなる気がします。


こぶし

ノートの途中でピッチを跳ねor下げさせます。
私はあまり意識して使ってはいないですが、演歌系・和風曲によく合います。


キーが上下するタイミングで元のキーからアレンジしてみる

上のキーから下がる時にピッチを寄り道させるとか。
前述した、人の歌唱は上から下のキーに移る時はピッチが速く下がることを意識して一足先に下げてみるなど。
(例に挙げてる画像では逆に上げてますが)
場合によってはピッチベンドではなくノートを細かく分割してピッチの動きを再現する方がやりやすいかもしれません。

個人的体感ですが、ピッチの動きはインストと合わせると意外と埋もれるので、ちょっと大げさなくらいでちょうどいい気がします。
ここらへんはMIXの好みもあると思うので個人差ですね。



その他


息継ぎ

歌詞に「br」を入れると息継ぎをしてくれます。シンガーによっては「br1」「br2」など数字をつけると複数の息継ぎを切り替えられるみたいです…?
フリモメンは「br」の1種類のようです。増えてほしいなー!!!!!!!

息継ぎノートと繋げて歌唱ノートを置くと子音が潰れてしまうことがあるので、余裕がある場合は息継ぎと歌唱のノートに少し隙間を空けるのも手です。
ですがしっかり隙間を埋めて息継ぎと歌唱ノートを連続させると「人間が息を吸って歌っている」感がよくでるので使い分けるのが良さそうです。


語尾息っぽいの

UTAUユーザー御用達の語尾息ですが、Synthesizer Vには語尾息専用の音素というものはなさそうです。たぶん。
ノートの歌い終わりに「h」というノートをくっつけて、
語尾息にしたいノートの終わりにかけて有声/無声パラメータを下げ、
ブレスパラメータも同じ箇所で上げると語尾息になります。

後ろにくっつけた「h」ですが、そのままだと「hy」という発音をするのでノートプロパティの音素欄で「y」を消してしまうとよいです。

※記事用の動画を作った後にカバー音源を制作して気付きましたが、上記の方法で語尾息を作るとMIXでコンプやリミッター等を使用した際「h」音素がかなり強調されることがあります。
「h」を付けずに有声/無声とブレスだけでもいい感じにはなるので適宜使い分けるのが良いかもです。


エッジボイス

歌詞入力で母音の前に「'」を付けると喉に引っかかるような発声、エッジボイスを出してくれます。
歌いだしに深みを持たせたいほか、通常母音は滑らかにつながるところをあえて区切るような歌い方をさせたいときにも使えます。

フリモメンの場合、エッジボイスのひっかかり感が薄いと思う(私の好みの問題)ので歌いだしで強調させたい時にはさらにピッチをかなり低いところから持ち上げるようにします。


ボカロ風調声

ボカロ風歌唱にしたい箇所のノートを選択し、ノートプロパティからマニュアルモードにします。
するとAI自動生成されたピッチがピッチベンドに制御点として表示されるのでそれらを全選択し削除します。

そこからはボカロを調声するのと同じ要領で、
ノート分割してピッチ表現したりノートプロパティからビブラートを付けて調節したりその他パラメータをつけて…といった風にやればOKです。

しかし歌うキーによって発声の仕方が変わる?(裏声とか)のもSynthVの特徴でしょうか、それがあるだけでも大分人間っぽい感じになるのでこの手法でやっても「あれこれ人じゃね?」ってなったりします 難しい


あとがき

これらの調声小技はシンガーや曲によって合う/合わないが変わってくるので、一概に当記事の歌い方が正解とは言えません。おのれの最強の調声を見つけろ、って感じです。

またいじっていて発見があったら追記するかもしれません。

最後に宣伝と調声サンプルとしていくつかフリモメン歌唱の動画置いときます




3曲まとめてのやつ
千本桜→ちょいYoung、サビでHardをプラス
紅一葉→Soft+Gentle、ラストサビはGentleメインにBassとHardも少し
上弦の月→Gentle多め+Soft、サビではHardもプラス

かなり力強い調声したやつ


英語音素で日本語歌唱したやつ


ボカロ風調声に挑戦したやつ


英語曲


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