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圧倒的な映像美……ゆえに辛すぎた

 もう20年以上前。
 旦那と付き合いはじめて、最初に観に行った映画は岩井俊二監督の『四月物語』でした。

 松たか子さん主演で、北海道から大学進学で東京にやってきた卯月。内気な卯月が東京の大学を選んだのは……という青春映画です。
 松さんのピュアな表現と、至る所で映される映像美がとても魅力的。はじめての一人暮らしのぎこちなさ。異常な程(笑)降り続ける桜の花びら。北海道の美しい景色に自転車で走る武蔵野の街。
 武蔵野、いいなあ。
『武蔵野、武蔵野、武蔵野……』
 作中の卯月とは違う思いで、このセリフが思い浮かびます。
 春になると思い出してみたくなる、可愛らしい映画です。

 これがはじめて観た岩井作品。ですから、私の中では岩井監督は青春映画の方でした。

 そして、次に観た岩井作品。こちらが私にとって、とても忘れられない衝撃的な作品となりました。『リリイ・シュシュのすべて』。 

 キャッチコピーが『十四歳のリアル』。
 観終わった感想は「こんなリアルがあってたまるか!」でした。
 とにかく壮絶。苦しい。つらい。
 確かにこんな社会問題もあります。いじめもレイプも。そこをどこまでも容赦なく描いています。見ててつらくなる。全体的に雰囲気は暗い、重い。そんな中、映し出される田園風景の映像美。だからこそ、よけいにつらい。
 エンドロールが終わって、上映中にずっと身体がこわばっていた事に気付きました。
 観終わって、私は思いました。

「これが14歳のリアルだっていうなら私は将来、子供を産まない」

 そう思うくらい、つらい映画でした。
 実際には子供産みましたけどね。
 もう一回観たいか?と聞かれれば、観たいとは思いません。
 だけど20年以上経って、これだけ印象に残っているというのは、すごいと思います。
 ちなみに主演は市原隼人さん。イジメの首謀者は忍成修吾さん。女子生徒に蒼井優さん。なかなかすごいメンバーですね。
 忍成さんはこの役のイメージが強すぎて、我が家ではずっとこの役名の「星野くん」と呼んでいました。

 桜の季節です。
『四月物語』を観ようかな。

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