230301-3

 小さな頃に、自分が死んだらどうなるか考えていた。想像したのは、肉体もなく、当然動くこともできず、音も聞こえず、真っ暗な闇に閉ざされている光景であった。孤独を感じ、恐ろしくてたまらなかったのを覚えている。
 しかし、死んでしまえば、肉体がなく、音が聞こえず、何も見えないことを意識している自分も、恐れることができる自分もないのでなければならない。そのことにあるとき気づいたが、そのような自分を消そうとしても、それを消そうとしている自分があってしまう。遂には、死を想像することはできなかった。
 

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