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今の日本で”インクルーシブ教育”なんて無理なんじゃないか説⑤

こんにちは。栗原白帆です。
久しぶりに日本のインクルーシブ教育に対する考察です。④の続きになりますので、お時間ありましたらご一読ください。

④で、現在の公教育における全体指導(全体主義)の現状と、インクルーシブ教育が相いれないという話をしました。

インクルーシブとは、特性のある子が、ただ同じ空間にいればいいというものではありません。
 その子の特性が個性として認められ、そのうえでみんなに受け入れられ、対等に扱われなければならない。
 多様性の尊重とは、そういうことではないでしょうか。

今の日本でインクルーシブ教育なんて無理なんじゃないか④より

私が思うインクルーシブ教育は上記のように「受け入れられ、対等に扱われる」というものです。ではどうすればそれが実現されるのでしょうか。

初めの一歩は情報共有

最近では少なからぬお子さんが就学前、入学前に診断をうけています。
少し前なら、ADHD、アスペルガー、自閉症、LD(学習障害)といった診断名を聞きましたし、最近ではASD(自閉症スペクトラム)という診断名を聞くことが多くなりました。

保護者の方から「診断を受けています」という申告をいただいたときの私の印象は、お子さんの成長や発達に対して意識が高く、お子さんに対して心を砕いてきた保護者だというものです。
おそらく多くの教員が同じ印象を持つことを私は保証します。

そのうえで知っておいていただきたいのは、学校にとって診断名はそれほど重要ではないということです。

もちろん大まかにいえばADHDの特性、アスペルガーの特性、自閉症の特性はそれぞれあると思いますが、私たちが知りたいのは、お子さんがADHDだとして、じゃあどうすればその子が落ち着いて学校生活を送ることができるのか、ということです。

その子が落ち着いた学校生活を送るために、教員が、クラスや学年の子どもたちが、他の保護者が、できることはなんなのか、それを教えてほしいのです。

情報や要望はできるだけ具体的なほうがいい。

「○○の場合にパニックを起こしやすいので、そういう場合は△△してほしい」
「紙媒体だと漢字が(アルファベットが、数字が)読みにくいので、タブレットを使わせてほしい(拡大印刷してほしい、決まったフォントを使ってほしい)」
「以前人間関係で○○なトラブルがあったので、クラスメイトと関わるときは△△してほしい」
「人と目を合わせられないので、クラスで情報共有し、そういう個性(特性)だと知らせてほしい」

もちろんすべての要望が通るわけではありませんが、その場合でも具体的に伝えてもらった方が、学校としても判断がしやすい。
「ここまではできます、ここからは難しいです。」
学校からも保護者に学校でできる範囲を伝え、そこからまた支援のあり方を一緒に考えていく、というのがインクルーシブ教育のスタート地点だと思います。

情報は”全員”で共有する

そしてさらに大事なのは、保護者と学校で合意形成ができたら、その内容を全員で共有するということです。

””全員”とは、学校のすべての職員、クラスメイト、クラスメイトの保護者、できれば学年の子どもたちと保護者まで共有できれば理想的だな、と思います。

その際には診断名は有効だと思います。

「○○という診断を受けています。■■といった特性がありますが、△△してくれれば、みんなと同じような生活ができます」

という感じです。
情報は詳しく、具体的であればあるほどいいと思います。保護者の方の気持ち、不安や心配も一緒に伝えていただければ、より協力は得やすいと思います。

診断を周知することはお互いにメリットが大きい

診断が出ていることは、絶対に周囲に知らせないでください、とおっしゃる保護者の方がいます。
他の子たちとちがうことがわかったら、いじめられるかもしれない、と不安に思われるようです。

診断の周知には確かに不安がつきまといます。
保護者の気持ちは想像できます。
でも、私は教育の現場に立つ人間として、日本の道徳教育は世界一であると自信を持って言うことができます。

子どもたちはハンディキャップのある人を故意に傷つけてはいけないことを知っています。
サポートしなければならないことも知っています。

診断が出ていることを理由にその子をからかうことは、間違ったことだと知っています。
そのうえでからかうのであれば、私たちは学校として絶対に許さないという姿勢をとります。

そこを信用してほしいと思います。

それらを前提にして、⑥で診断の周知には多くのメリットがあることをお伝えします。

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