Case.8 問いとは何か
ファシリテーターの重要な役割の1つに「問いを立てること」がある。
問いの立て方1つで、議論が進んだり停滞したり。
創造的な課題解決を生み出すこともあれば、同じところを堂々巡りしてしまうこともある。
問いの立て方やレベル感の設定は、進行に大きな影響を与えるものである。
問いは様々な分野で重要視されていて。立て方や課題設定については、いろんな書籍が出版されている。
では、そもそも「問い」とは何であるのか。
今回は「問い」そのものを問うてみたい。
ただ哲学的な思想にふけるのではなく、「問い」を構造的に捉えてみたいと思う。
「問い」が「問い」であるために
我々は様々なシチュエーションで問いを立てているが、なぜ問いは立つのであろうか。
文末が疑問符(?)で終わっていようが、投げかける文体に立っていようが、問いにならない問いは実在する。
「問い」は文体によって決められるものではない。
逆に言えば、別の要素によって問いとして成立するということだ。
その要素が「前提」と「仮説」である。
「問い」が「問い」として成立するためには、背景に「前提」と「仮説」が含まれていなければならない。
例えば、
「あなたは人間ですか?」
は問いになるが、
「人間はあなたですか?」
は問いにはならないので、答えに窮してしまう。
しかし、文法的に間違っているかと考えるとそうではない。
ここでの「前提」と「仮説」が何かと言うと、例えば、
前提:属類の1つである「人間」は個体である「あなた」を包括する
であるとか
仮説:「あなた」は人間かもしれない
「あなた」は人間でないかもしれない
のようなものが考えられる。
このような「前提」と「仮説」があるが故に、「問い」が「問い」として成立しうるのである。
「問い」の本質
であるとするならば、問いの意義とは、
「前提」や「仮説」を確認すること、「前提」や「仮説」の証明に他ならない。
だとすれば、「問いを立てる」とは自身の「前提や仮説を認知する行為」だと言えるのかもしれない。
そう考えると、そもそもの「問い」の捉え方が変わってこないだろうか。
「問い」とは事象との距離感を埋めるために、新たにつくり出すものではなく、自身の認知の狭間から探し出すものなのだ。
すなわち、自身の認知(レベル、範囲、理解等)の再認識をすることが「問い」になるのである。
「問い」は英語で[Question]
「探し回る、探求する」を表す[Quest]に「こと、もの」を表す接尾語[-ion]をつけてできた単語である。
そう「Quesution(問い)」とは「探し回るもの、探求するもの」ということである。
「問い」とは立てることよりも、自身の内面と向き合い、認知の境目を探し回る行為そのものが、本質であるのだ。
[Quest(クエスト)]という単語は、よくゲームや物語のタイトルなんかに使われる。
世界を旅し、冒険するイメージがある。
「問い」とはまさに(自分自身にとっての)真実を見つける冒険の旅なのかもしれない。
「問い」を使いこなす
逆に相手に対して問うということは、相手に対して「前提」と「仮説」について、直接的あるいは間接的に探究と理解を促すということである。
相手が背景に持っている「前提」は何なのか。
相手は「仮説」をどう捉えたのか。
相手の「認知」に触れることのできる瞬間がそこにある。
「認知」を介して、相手や場とつながることができるのだ。
ということは、「認知」という接点を多くすることは、相手や場における関係性構築の機会を醸成することと同義である。
関係性と「問い」は密接につながっている。
関係性に変化(構築や改変)をもたらすために、人は「問い」という方法を用いるのだ。
ワークショップの場づくりや相手との関係性構築において、「問い」を扱う場面は多いが、それは答えを導き出すことが重要なのではなくて、「問う」という行為そのものが、これから始まる関係性のダイナミズムなのである。
「問い」の精度を上げることは、導き出される答えの精度が上がるだけではなくて、関係性の質が深まったり、離れたりすることにつながるのである。
我々「場」というものに関わり、つくり出していく一翼を担うものとしては、その意味も踏まえて「問い」を導き出したいものである。
まとめ
今回は、問いそのものについて考察した。
まさに真実を見つける探求の旅である。
探求の旅を続けることで「問い」の背景にある真の問い「前提」と「仮説」について、識ることが可能になる。
その途方もない思考の旅は、エネルギーは使うが物事の本質を辿ることができる。
考え抜かれた1つの「問い」は、どんな明確な「答え」よりも鮮明に現状を炙り出すときがある。
答えだけでなく「問いの精度」で、場に変化をもたらしたいものである。
そのために普段から探求し続けることをオススメする。
Let's Quest! Let's Question!
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和△1金◻︎3◻︎3D30/4w5/INTP/秘密兵器。ワークデザイナー。高校時代に出会った料理人の影響で料理の道へ。「素材を活かす」料理の考え方は人材にも通ずると信じ、その人が持ち味を“思い出す”自己変容を描くセッションや研修を実施中。