Epicross1. ノイズを拡張させるということ
物事には必ず本質がある。
その本質を認識しているかどうかが、できあがりの質や納得度、そしてその後の一貫性や整合性に関わってくる。なので、大小に関わらずプロダクトやプロジェクトなど何かを創造するときには、そのものの本質の理解が大切になってくる。
実際にできているできていないは別にして、ここまでは理解されている方は多いと思う。
では、どうやってその「本質」と言われるものを見つけていくのか。
本質に辿り着くために
本質を見つけるためには余計なものを削ぎ落とすことが必要である。
ノイズにあふれた現状から1つ1つ本当に必要なものかを吟味して、研ぎ澄ませて行った先に「本質」が残る。
実際プロフェッショナルとして仕事にしたことはないが、大学時代からデザインについて学び、考えてきた身としては、常々言われ続けていることである。
本質に辿り着くのは、極限まで研ぎ澄ますことであると。
僕もここまでそのことについて疑いもしなかったわけだが、「本質」に辿り着くためには別のアプローチもあるのではないかという思考に至った。
それは「ノイズを増やす」ということである。
ノイズを増やすということ
ノイズを「本質ではないもの」「本質とはかけ離れたもの」として捉えるとするならば、ノイズは本来、排除すべきものと考えられる。
ただ、昨今の社会変化や時代の流れを見ると、ノイズを排除しきることはなかなかに難しい。
では、ノイズが排除しきれず増え続けるとどうなるか。
増え続けたノイズがもう増えない状態や増えても意味がない状態(ノイズが増えすぎて認知されない)になると、そこで「ノイズが飽和する」という状態が起こる。
ノイズが飽和するとそのときに初めてノイズとは異質である本質が現れる。
物事がある一方向に進み続けたとき、それが限界点を迎えると、逆行する動きが現れる。それを本質として掴むということである。
例えば、車輪が早く回り続けると止まって見えるように。
物が増えすぎて「ある」ことが当たり前になってくると「ない」ことが浮き彫りになるように。
例:コミュニケーションの本質
携帯電話やスマートフォンももう誰もが持っている時代になった。(人口に対する普及率は通信端末で181.7%、携帯電話で133.8%[2018年 総務省])
こんな時代になると、リアルタイムで電話するのが当たり前。SNSで連絡を取り合うのが当たり前になってくる。コミュニケーションのほとんどが通信端末に頼った時代になっている。そうなった現在、もし携帯電話を持っていない人と連絡を取り合うことになったとしたらどうだろうか。
今、当たり前に行なっているコミュニケーションツールは使い物にならない。コミュニケーション手段も取れない。
そうしたときに、ノイズに隠れて見えないコミュニケーションの本質が見えてこないだろうか。
過剰なノイズはときに本質をあぶり出す。
ノイズのなくならない世の中だから
情報化社会と言われたのは、もう随分前の話になった。
情報に溢れる社会になった。
これから生きていくためには「情報を取得する」よりも「情報を選別する」ことの方が重要で難しくなる。
ノイズのない世界は少なくなってきた。
これからはノイズとどう向き合うかが大切になっていくように感じる。
ただ、あらゆる場面で発生し続け、排除しても仕切れないノイズはもしかしたらこれからの時代の本質を探る鍵になるかもしれない。
数あるノイズの1つとして、そんなことをお伝えしたい。
和△1金◻︎3◻︎3D30/4w5/INTP/秘密兵器。ワークデザイナー。高校時代に出会った料理人の影響で料理の道へ。「素材を活かす」料理の考え方は人材にも通ずると信じ、その人が持ち味を“思い出す”自己変容を描くセッションや研修を実施中。